度々の失言にスキャンダル。危険水域まで下がった内閣支持率。進む高齢化。財政危機。そして与党の分裂と政治の大混迷。
あまりにもそっくりでびっくりのイタリアと日本。でも、向こうは大物政治家が仲間たちと与党をすでに離脱。こっちは、そういうのもあるかも、の段階だから、向こうが先を行っていると言えなくもない。
さらに、その大物政治家が内閣不信任案を野党といっしょに国会へ提出。結局、否決され首相の首はつながったけれど、その差はたったの3票。解散、総選挙はいつ? 政権をとるのは? ざわざわしている。
だけど、いくら何でもイタリアと比べられるのはねえ、って?
ミラノにあるボッコーニ大学のボエリ教授が、イタリアの現状とやるべきことについて、こんなふうに書いていた。
「世界の主要20カ国中、金融危機後の経済がイタリアより悪いのは日本くらい。これほど低迷し、財政が悪化した元凶は、成長力の弱さにあるけれど、政権は求められている構造改革に手をつけることなく30カ月も無駄にした。景気が悪い時に改革を行うのは確かに難しい。それでも欧州では多くの国が実行した。改革のためにはまず、国民に現実がどれだけ危機的かをありのまま説明し、わかってもらわないと。野党にも、責任ある行動を求める必要がある」
思い当たるふし、ありすぎ。で、先を行っている感じのイタリアが今、直面している状況はといえば、「ギリシャ、アイルランドに続く財政破綻候補」として市場に目をつけられ、国債が売られ始めている。
「不信任案に賛成して私を辞めさせたら、この国はいよいよ売りたたかれギリシャのようになる」。ほとんど脅し文句で支持を迫った向こうの首相。そんな場面、こっちではないようにしないとね。(論説室)
毎日新聞 2010年12月17日 東京朝刊
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