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菅首相:小沢氏と会談へ 政倫審出席、岡田氏の説得不調

 民主党の小沢一郎元代表は17日、東京都内の個人事務所で岡田克也幹事長と会談し、衆院政治倫理審査会(政倫審)出席を拒否する考えを伝えた。会談決裂を受け20日にも、菅直人首相が小沢氏と会談する。首相は政倫審出席を促す意向を表明したが、小沢氏は改めて拒否するとみられ、執行部は招致議決に踏み切る構えだ。

 ◇小沢氏「裁判で潔白証明」

 会談は約20分。岡田氏は、強制起訴を控える小沢氏の「政治とカネ」問題が「統一地方選や国会運営の妨げの一つになっている」と指摘。「裁判に関わることは証言拒否できる」と出席を強く求めたが、小沢氏は「選挙や国会運営は幹事長が責任を持ってやることだ」と反論。「裁判で潔白を証明する」と拒否した。会談に先立ち岡田氏に提出した文書でも裁判を理由に「政倫審に出席しなければならない合理的な理由はない」と退けた。

 会談は平行線に終わり、岡田氏が「菅首相も含めて話をもう一度していただけないか」と要請、小沢氏も「会う用意はある」と応じた。菅首相は訪問先の沖縄県うるま市で記者団に対し「(拒否が)事実だとすれば残念だ。私としてもお会いした方がいいと思う」と語った。

 ただし、会談が決裂すれば、党内対立が激化するのは必至。今後の対応について岡田氏は記者団に会談の結果を踏まえて「判断する」と述べ、小沢氏が出席を拒否し続ければ議決に踏み切る考えを強調。「議院証言法(に基づく証人喚問)ではなく政倫審の段階になんとかとどめたい」と実現に意欲を示した。

 <分析>

 ◇互いに強気、打開困難

 「小沢氏は政倫審出席拒否の態度を変えない。菅首相もその前提で会わなければならない」。小沢氏に近い党幹部はこう語る。一方、岡田氏に近い党幹部も「首相が政倫審出席の要求をやめたら大変だ」と引かない。

 党ナンバー2の岡田氏が「一兵卒」の小沢氏を訪ねてようやく実現した会談は、小沢氏が出席要請を一蹴。「トップ会談」へと決着を持ち越した。内閣支持率が低迷し、地方選での連敗が続く首相。強制起訴を控え、求心力が低下する小沢氏。互いに強気の構えを崩せず、打開は困難との見方が党内には強い。

 菅政権は年明けとされる小沢氏の強制起訴を受け、来年1月からの通常国会を「脱小沢」で臨むかどうかが問われる。支持率低迷の中で「脱小沢」カードを政権浮揚に結びつけるため、「出席拒否なら処分」(党幹部)と離党勧告をちらつかせるが、小沢氏が出席しなくても政倫審の議決に強制力はなく、処分に慎重な意見もある。

 17日夜、岡田氏が会談したのは共産党の市田忠義書記局長。異例の顔合わせだが、小沢氏問題も話し合った。

 一方、小沢氏は表舞台には姿を見せず、岡田氏への回答文書は秘書が党本部に届けた。小沢氏に代わって弁護人の弘中惇一郎氏が記者会見。「小沢氏は被告に極めて近い立場。政倫審は好ましくない」と主張した。

 小沢氏支持の新人衆院議員らの「北辰会」、若手中堅議員の「一新会」は17日、相次いで集まり結束を確認。「首相・小沢会談が決裂すれば両院議員総会を求める署名が雪崩を打ち、首相交代の動きが強まる」と息巻く。

 「首相自らがきちんとやるべきだ」。連合の古賀伸明会長は前日に続いて事態収拾を求め、小沢氏に近い輿石東参院議員会長も「火が付いたら止められなくなる」と両院議員総会の署名活動を抑えようとしている。

 小沢氏に近い党幹部は「小沢氏は絶対に離党しない気持ちで頑張っている」と語る。招致議決に持ち込みさえすれば民主党としての「けじめ」となり、小沢氏が出席しなくても国民向けのアピールになるとの見方もある。

 「茶番だ」と野党は冷ややかだ。自民党の逢沢一郎、公明党の漆原良夫両国対委員長は証人喚問要求で一致。逢沢氏は記者団に「首相が説得して(小沢氏が)政倫審に自ら申し出るというのは想定しにくい」と語った。【影山哲也、葛西大博】

毎日新聞 2010年12月18日 東京朝刊

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