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[24959] 【ネタ】なのはウィッチ
Name: 羽根大化◆8adbc990 ID:1bc60784
Date: 2010/12/16 22:23
第0撃「忘れた頃にまた会える」

高町なのはの幼少時代は独りぼっちだった、家族が居なかった――訳じゃない。周りから見れば暖かで幸せな家族、父が居て母が居て兄が居て姉が居て自分。可愛がられていたし、なのはもそんな家族が好きだった。

それなのに今のなのはは独りぼっち、理由は簡単で不条理で悲しい事。お父さんがお仕事で大怪我をした、それからだ、それから家族がなのはに構わなくなった。それぞれの出来る事をしていた、兄は母の店の手伝い、姉は父の見舞いと家事、母は言うまでもなく軌道に乗り始めていた自営業喫茶店〈翠屋〉の経営、必然的になのはは独りになる。

未だ幼い手では何かを手伝おうにもうまく行かない、なのはは其の事をちゃんと理解していた。だから良い子でいようと笑顔で居た、家族が安心できるように自分は良い子で居るから大丈夫だと。“寂しくなんかないよ”と。

その笑顔は笑っていたけれど、瞳の奥には寂しさの光。それに家族は気付いていた、母の桃子はそんな作り笑顔をさせてしまった娘の状況に胸が痛む。何とか娘と交流しようとするが忙しく手が回らない、それにやっと取れた時間でなのはと過ごそうとしてもなのはは“お店は大丈夫?私の事なら心配しなくてもいいよ”と言うばかり。

桃子は何も言えなくなった、良い子になってしまったなのはの姿に。こうしてしまったのは自分達の責任、兄の恭也も姉の美由希も同じ見解。客観的に見れば誰も悪くない、それぞれが出来る事をしただけ。怪我をした父の士郎を支えるための切っ掛け、その切っ掛けが良い子のなのはを生み出してしまった。まだ幼い子だ我儘を言ってもいい年頃、なのにそれもない。

ただ時間だけが過ぎていく、そんなある日の事。

何時ものように良い子でいたなのはは海鳴公園で遊んでいた、一人ブランコを漕いだり砂場で砂山を作ったり。これがなのはの過ごし方、最初は寂しかったけど慣れれば楽しいと思えるようになってきた。

そんななのはに声を掛けたのは、長い金髪をリボンで纏めた人。男の人でも女の人でも通じそうな顔と声、優しそうな雰囲気。

「独りで遊ぶのは楽しいかな」

本当は寂しい、楽しくなんかない。家族の皆と遊びたい、だけどそれを見知らぬ人に言っても仕方ない。それに知らない人には注意しろと言われてる事もあって、なのはは砂場で作っていた砂山から一歩下がり何時でも逃げ出せるように答える。

「楽しいですよ?」

警戒するなのはの様子にその人は苦笑し、なのはの嘘を見破った。

「うん嘘だね、瞳の奥は寂しそうな光がある。何より……君の心は泣いている、そう感じるよ」

「ッ!!」

図星だった。桃子からも似たような事を言われていた、それを他人に言われるなんてそんなにも分かりやすいのだろうか。

「……貴方には関係ないの」

少し苛立ちの交じった声、なのは自身も戸惑っている。それを見たその人は頷き、なのはを安心させるように魔法の言葉を言った。

「大丈夫だよ、今は辛くても君はいつか掛け替えのない大切なものに出会える」

「え?」

「リリカルマジカルってね、魔法の言葉だ。揺るぎない不屈の心を持てる呪文だよ」

「にゃ?」

思わず猫のように首を傾げ答えるなのは、見知らぬ人から魔法とか本やゲームに出てくる単語が飛び出してきた事に疑問。なのはだって現実と非現実の区別はつく、この人は大人なのに大丈夫なんだろうか。

「いや大丈夫だよ、正気も本気だ」

「私の心が読めるの!?」

「顔に書いていた」

「うう、私そんなに分かりやすいのかな……」

何げに落ち込むなのは、不審者との会話。知らない人には気を付けなさいと言われてるけど、何故かこの人は安心できる。そんな気がした、その後も他愛無い話で打ち解ける二人。陽が落ちそろそろ帰る時間、金髪の人はなのはと手を繋いで家まで送り帰路についた。

その後ろ姿を見てなのはは声を掛ける、また会えるかと。それにその人は振り向いて答えた。

「そうだね、君が《忘れた頃にまた会える》よ」

忘れた頃にまた会える、その言葉だけは頭に響くように聞こえた。それになのはは驚く、その人に意味を問おうと見たらもう居ない。影も形も見えない、まるで消えてしまったようだった。

「ええぇぇぇっ!?」

目を離した隙はほんの一瞬、その場に残されたなのはは不思議な人だったなと思う。

これがなのはと不思議な人の出会い、あれからなのはは公園で遊んでいたりその人を待ったりしていたが結局二度と会うことはなかった。

忘れた頃にまた会える、その意味をなのはが知るのは数年後の事。




[24959] 第1撃
Name: 羽根大化◆8adbc990 ID:9e308ae0
Date: 2010/12/18 09:01
第1撃「高町なのはという友達は」

少し時間は戻る、前回で数年後の事と時間が跳ぶような描写があったが気にせずに。戻るといっても、なのはが不思議な人と別れた直後。これがSSならば全くもってその時間経過は正しい、不思議な人の正体が気になる人もいるだろういなくてもこの話で語る。

なのはが目を離した隙に消えたその人は“転移”して先程の公園に戻る、そう転移。文字どおりの意味、即ち魔法の力。誰かに見られる心配はない、陽が落ちているし結界も張ってある。

見ていたのはベンチに座ってその人を待っていた金髪の女性だけ、彼女もこちら側つまり魔法関係者。口を開く、僅かにその人に疑念を込めて言う。

「……本当にこれで良かったの?なのはをまた巻き込むなんて、今度こそ魔法に関わらないようにしようと言ったのは誰!?」

「僕だね、でもあれ嘘だから」

「っ!!」

金髪の女性は立ち上がり手にしたデバイスを起動させようとしたが、それよりも速く翡翠の鎖が女性を拘束した。設置型だ、その人は女性が激昂するのも計算に入れて術式を敷いたのだろう。普通なら優秀な魔導師でも其処までは出来ない、普通なら。その人は異様に計算高くあの職場を開拓した人だからこそ、この芸当が出来た。

「危ないなぁ、いきなりデバイスを起動させようとするなんて。僕に何をするつもりだったの?フェイト」

「ユーノッ!」

「そう怒らないでよ、これでもね僕はちゃんと考えてるんだから」

拘束されたフェイトはその言葉に動きを止める、語るユーノの姿にかつての狂喜科学者の姿が重なった。最もユーノと彼では共通点がない、状況が似ているだけである。ユーノの返答次第でホームランしようなどとフェイトは考えていない、相手が変わってしまった友達でも、無意識にバルディッシュを握り締めた。

「考えてる?それなら聞かせて」

まるでなのはのようにお話を聞かせてと言うフェイトに苦笑しながらユーノは答えた、彼の目的にフェイトの協力がいる。ここで手の内を明かさなければ彼女の協力は得られないと考えて。

「勿論。なのはを魔法に関わらせない、確かに僕も考えていた常に思っていた。僕の所為で巻き込んでしまった想いもあるから尚更に。
……でもねフェイト、なのはを魔法に関わらせない。そうなると……数年後に誰が僕を助けるの?誰が君を助けるの?誰がはやてと守護騎士達を助けるの?」

「それは……」

言葉に詰まるフェイト、かつての事件を思い出す。その中心には何時だってなのはがいた、彼女がいたからこそ事件は解決できたといえる。言うなればなのはこそが……

「物語の主人公だよ、本に例えるなら。あくまでも例えだし物語と違って現実はシビアだと解っているけどね」

「……」

ユーノに言われて沈黙するフェイト、本は本、物語は物語。現実はそこまで優しくはない、解っていても尚フェイトはなのはが主人公だということに否定できなかった。そう解っているのだ思考では、心では違うと否定したくても。

なのはがいない、そう考えたら自分はどうなっていたか。立ち直ることは出来なかっただろう、母に捨てられ絶望もしかしたら一緒に虚数空間に墜ちる未来さえあったのかもしれない。あの時、差し伸べてくれたなのはの手がなかったら。

「なのはがいなくても誰かが事件を解決するかもしれない、特にクロノとかリンディさん達とか。でも彼らだって出来る事出来ない事がある、なのはがいたからこそ幸福な結末まではいかなくても結末は迎えられた。クロノ達だと……結末は、フェイトの場合だったらあの海で傍観される。はやての場合だったらグレアムさんの策で行くしかない、火力不足いや想いが届かなくて」

反論したいのに、否定したいのに正論過ぎて何も言えないフェイト。正しい理論だ、冷静的に見れば。ユーノの独白は続く。

「今度の世界でもなのはは魔法に関わらせる、関わらせるだけだ。レイジングハートは渡させない、僕達が裏からサポートする」

「なっ!?」

それは予想外な案、確かに自分達がサポートすればなのはは魔法に関わるだけですむ。あの世界のようにはならない、だがユーノは前回リリカルマジカルって言わなかったか?それはなのはの呪文だったはずだ、これから彼女が口にする。

「フェイトが雷刃の襲撃者としてあの場面で言うんだよ、何の問題もない」

「何その名前!?」

「だってバルディッシュにはザンバー形態があるだろう?介入によっては襲撃者に見えなくもないし、フェイトは雷持ち。合わせて雷刃の襲撃者、ピッタリじゃないか」

「あの場面でそう言って介入したら私はただの痛い人だよ!?」

「大丈夫、水着に見えそうなバリアジャケットで狂喜科学者をぶっ飛ばした時点でうわぁと思われてるから」

「いやあああああっ!?」

清々しい程シリアスブレイク、シリアスになってないが。それに近い空気が展開されていた、悲鳴を上げながら修正を試みるフェイト。

「それでも私の友達なら、どんな時でも。
高町なのはという友達は不屈の心を手にするよ!」


そう叫ぶフェイトにユーノは何も語らない、彼らの思惑はともかく月日は巡る。

高町なのはが私立聖祥大附属小学校に入学して三度目の春までに。

魔法少女の物語が始まろうとしていた。



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