ボクシングの行方

 過日、週刊ポスト側と接触した。

 実際にバンテージを巻いて検証したい、との事なので、トレーナー経験者の友人を連れて行き私の拳に正規の包帯とテーピングだけでバンテージを巻き、私が持っている証拠写真や週刊ポスト側の写真と照らし合わせて、亀田興毅がバンテージに凶器を仕込んだ事を納得してもらった。

 しかし、今回の裁判の争点は凶器を仕込んだかどうかではなく、週刊ポストの記事が名誉毀損に当たるかどうかだけであり、もし亀田側が勝訴となっても、それイコール凶器を仕込んでいなかった、という事にはならず、逆に週刊ポスト側が勝訴しても、凶器を仕込んでいた、ともならないのだ。

 釈然としないが、とにかくこの裁判に勝たなくてはならない。

 いつでも証言台に立つ事を約して二時間近くの検証を終えた。

 友人と二人で帰る道すがら、「こんな汚い事をした亀田とその亀田を守るボクシング界は許せない!」そう吐き捨てる私に、年下の友人が、「これは勝ち目の無い闘いですよ」とさとす様に言う。

 それはそうだ・・・・・。

 相手は金と力をバックに暴虐の限りを尽くす亀田一家と、それを擁護するボクシング界の支配層と、ボクシング界に蔓延する無知ゆえの無関心であり、対するこちらは一介の元ボクサーに過ぎない。

 だからこそ、メディアの力を借りて闘うしかないのだ。

 しかしそれでも私を信じ、快く協力してくれる友人に心の中で手を合わせた。 

 勝てない相手とは闘わない、と言うのであれば、私はタイで一体何を学び、何を得たと言うのだろうか。

 悪運強く生き残った私には、真剣勝負で命を落としたボクサー達の無念を晴らす義務があるのだ・・・・・・。
 

 「裁判が終わるまで詳細は書かないでくれ」との週刊ポスト側の要請に従い、当分の間は何も書かない。

 もっとも、拳に凶器を仕込んだ亀田興毅とそれを手助けした弟二人を私はボクサーとして決して認めないので、バンテージ疑惑以外では彼らの事を書くつもりも無いが・・・・・・。

 
 週刊ポストにはこの疑惑の真実をこれからも追求してもらうよう、働きかけて行きたい。 

 しかし、先日思わず「ふざけるな!」と怒鳴りたくなるような記事が目に飛び込んで来た。

 WBAのバンタム級王座を無理矢理空位にして、その座をただの一度もバンタム級で試合をした事のない、しかも二階級も下のフライ級王座をただの一度も防衛出来なかった亀田興毅と、これまた二階級も下のフライ級の元チャンピオンで、今はロートルボクサーと化したロレンソ・パーラーと王座決定戦を行う予定だと言うのである。

 こんなふざけたマッチメークが誰でも出来るのなら、日本の軽量級の国内ランカーのほとんどが「黄金のバンタム」の世界チャンピオンに成れる、と言う事だ。

 私が敬愛する村田英次郎会長や、高橋ナオト、辰吉丈一郎らが築き上げて来た悲壮で気高いバンタムの歴史を地に落とす暴挙でしかない。

 故グレート金山さんがその身を削り、命に代えて守り続けて来たクラスが「バンタム」なのだ。

 記事では現在交渉中と書いてあったが、試合が行われる事は決まっているからこそ、バンタム級の世界ランカーで最も弱いであろうこの二人が、ランキング最上位とその次に据え置かれたのだろう。

 と、ここまで書いていたところ、更に噴飯物のニュースが飛び込んで来た。

 WBAがパーラーの体重を量ったところ、バンタム級のリミットを5キロ以上オーバーしていた為、パーラーではなく代わりに5位にいるこれまた下のクラスのロートルボクサーで同じベネズエラ人のムニョスに決まったと言う。

 一ヶ月前に体重を量って5キロ以上オーバーしてたら試合を認めないと言うのなら、日本のボクサーのほとんど全てが世界戦は出来ない事になる。

 南国ベネズエラの日中カッパを着て30分ぐらいロープを跳び後は休んでいるだけで絞られていない体から1、2キロぐらい落とすのは簡単であり、パーラーのマネージャーが欲をかき過ぎたか何かして、従順なムニョスにお鉢が回って来たのだろう。

 WBAの王座決定戦で相手がベネズエラ人というのは、ライト・フライのランダエダとまったく同じパターンであり、結果もまったく同じになる事は間違いなく、よってあの亀田興毅が日本人初の三階級王者になるのだ・・・・・・。

 
 JBCもボクシング協会もWBAもWBCも、一体ボクシングをどこまで無残に食い物にすれば気が済むのか!

 もし、殴れるものなら、かつて放った事の無い程の威力と、熱と、怒りを伴った最高のパンチを、放てるはずだ・・・・・・。




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名古屋城、落城す。

●池田高雄(いけだたかお)
昭和44年宮崎生まれ。平成元年プロデビュー。リングネームは憧れのボクサー高橋ナオト氏にあやかり池田タカオ。B級、A級各トーナメントを制し95年にクリス・サギドの持つ東洋タイトルに挑むも判定負け。同年引退。3年半後にメキシコに渡り紆余曲折を経て妻を連れタイへ。タカオ・チュワタナの名で1年間に9戦し、2001年空位のPABA王座を後のWBAスーパーバンタム級王者のソムサックと争い7ラウンドTKO負けを喫し完全引退。元日本、東洋、タイ、ともに1位。

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