CM搬入は古い順に16mmフィルム→1インチ→D-2(デジタルベーカム/ベーカムSP)→HDCAM/HDCAM-SR(HDD5)といった形で推移して来た。
現在SDはD-2のみ、HDはHDCAMとHDCAM-SRのみが全国共通となっているが地方によって固有のフォーマットを採用しているところもある。
なぜ新しいフォーマットが出てくるのではないかというとHDCAMがフルHDでないということがある。しかも今後オンラインによる送稿も視野に入れるとテープではないことが容易に想像できる。ではどのようなフォーマットが台頭してくるのか。フルHDということでは現状AVC-IntraとXDCAM HD422の2種類が有望だ。AVC-IntraはパナソニックのP2メモリーで100Mbpsになる。XDCAM HD422は現在ブルーレイディスクのみだが将来SxSメモリーでの記録も可能性がある。この2フォーマットを画質で比較するのは難しい。AVC-Intraはフレーム内圧縮で100Mbps、一方XDCAM HD422はLongGOPの50Mbpsである。圧縮形式が異なるので一長一短があるのだ。ここでもパナソニックvsソニーは健在だ。
ナショナルスポンサーにとってはメディアコストなどあまり気にならないかもしれないがこれもけっこうバカにならない。当方だけでも年間400本、金額にして60万円分のテープを一回使用後廃棄処分されているわけだ。HDCAMなどかどれだけ繰返し利用されているかはわからないがディスクやメモリーに比べるとテープはリサイクル率が低いように思う。また容量当たりの容積はテープが最も大きく輸送コスト、保管スペースの負担にもなっている。CM搬入では1つのメディアに一種類のタイトルしか入れてはならない決まりがある。なので長くても60秒くらいしか使う事はない。ただテープの場合カラーバーやクレジットのような本編以外の情報も映像として記録しなければならないので数分が必要だ。結局5〜6分のテープを使うことになる。D-2の6分が¥3,423、ベーカムSPの5分が¥1,470、HDCAMの6分が¥1,638となっている(システムファイブ調べ)。
ではXDCAMやP2はどうか。MXFファイルで扱われるのでテープのような要素は不要で本編だけあれば問題ないはずだ。P2/AVC-Intra100 は60秒で約1GB。32GBが約20万円なので単純計算で1GBが¥6,250ということになる。XDCAMは一層と二層しか選択肢はなく一層のディスクが¥3,801となっている。SxSにHD422を入れた場合60秒で約500MB、16GBが11万円なので単純に割ると¥3,437になる。
繰り返し利用する場合の耐久性はテープ<光ディスク<メモリーということになるので単価だけで比較するのも難しい。ではレコーダーのコストはどうだろうか。それぞれ最も安い価格のもので比較、HDCAM-SRのデッキは¥7,350,000、HDCAMは¥3,465,000、XDCAM HDは422ではないが¥1,860,000、P2のドライブは¥236,250、SxSのドライブはなんと¥31,500である。それぞれ接続する相手によって付随するソフトやインターフェースがまちまちなのでドライブだけで比較は出来ないが半導体メモリーはやはりコンピュータのパーツ扱いなので非常に安い。こうして比較してみるとXDCAM HD422をSxSで搬入するというのが有力ではないかと見えてくる。
さらに将来を見据えると我々ポストプロダクションが完パケにしたMXFファイルをITを使って広告代理店に送る(50Mbpsだと15秒CMがADSLのアップロードでも30分、光ファイバーだと1分以内で送れてしまう)。代理店はMXFファイルに入っているプロキシデータを汎用コンピュータで動画確認することができる。確認後10桁CMコードをファイル名にしてSxSメモリーにコピーし各放送局の窓口に納品する。放送局は支社と本社間に距離がある場合 SxSメモリーからデータを取り出しTIを使って本社に送る。こうすることで従来どおり「モノ」で搬入という形態を取りながら非常に合理的でスピーディーな局入れが出来る。素材はオンエアー終了後代理店に返却されるわけだから再利用ができるというわけだ。もっとも、オンライン入稿が出来れば固体メディアも不要なわけで全てが丸く収まる。CO2も激減である。
スポンサー、代理店、放送局、制作プロダクション、どこもメリットだらけである。機器メーカー、テープメーカーだけは多少影響はあるが環境のためだと諦めて欲しい。
段階的にこういったプロセスへの転換は図られていくものと思われ、テープデッキが不要になる時代は意外に近いと思える。なのでHDCAM VTRの導入はもう少し様子を見ようかと揺らいでいる。うちの場合HDCAM VTRを導入してもCM搬入用のテープ仕上げ以外の使い道がないのである。数年で400万円弱のシステムが不要になるのはイタイですよ。
前回>エコな選択?より続き
コメント (2)
CMだけではなく番組等の納品まで考えるとどうするか?
回線の品質を高めたインフラ整備をすべきでしょうね。
劇場の映画もルーカスなんかは世界に配信し上映まで含めてフイルムレスを実現している。
長尺でもできてますよね。
完パケテープと言う一つの安心な箱に入れておくと言う習慣が長く根付いているから結構難しい問題ではありますが・・・
回線で送られてきた映像を誰がチェックし責任をとるのか?何かそんな所で躓いているような気がするのですが・・
投稿者: datajiro | 2008年01月21日 12:52
日時: 2008年01月21日 12:52
データの方が品質管理、チェックは容易だと思います。
どうして普及しないのか…
あまりにも新しいフォーマットが次々出てきてこれで決まりというタイミングが掴めないのかも(笑)
ウチでもHDフォーマット、未だに決めかねてますから。
投稿者: fuji007 | 2008年01月21日 13:22
日時: 2008年01月21日 13:22