【コラム】ストーリー産業不毛地帯
しかし、この問題を考える上では「ストーリー産業」という視点から見つめなければならない。韓国は市場のほとんどを外国に奪われている。米経済専門誌のフォーブスはこの1年間、米国で最も多く稼いだ作家10人を調査し、先日発表した。1位は犯罪サスペンスの巨匠ジェームズ・パターソンで7000万ドル(約58億円)、次いでロマンス小説『トワイライト』シリーズの著者ステファニー・メイヤー、そしてホラー小説で有名なスティーブン・キングの名前が挙がった。このほか、法廷小説の大家ジョン・グリシャムや、J.K.ローリングも10位以内に入った。
ランキング入りした10人が稼いだ金額は約3000億ウォン(約220億円)に上る。ジェームズ・パターソンは、著作権収入などにより1000万ドル(約8億3000万円)を海外で稼いだ。イケメン・バンパイアが登場する『トワイライト』シリーズは、映画、ゲーム、DVD、映画ダウンロード、さらにはバンパイアのキャラクターをモチーフにしたジュエリーに至るまで、世界で8兆ウォン(約5880億円)近い「バンパイア産業」を生み出した。
米国の「ベストセラー小説家トップ10」は、純粋文学ではなく特定ジャンル文学の作家たちが占めている。パターソンは1カ月に1冊のペースで作品を手掛けているが、これは個人の能力を超える生産量だ。当然「小説工場」を作り、集団で創作した後、パターソンの名前で売り出しているということだ。専門ジャンルを決め、作家の名前をブランド化してシリーズで本を出し、小説の出版以外にもさまざまな収入源を開拓していくという点も目を引く。まさに「ストーリー産業」というわけだ。
ストーリー産業に対する公共機関レベルでの関心や支援にも注目すべきだ。米テキサス州は先月17日、上院議員室で使用する朗読会の対象小説に、ジャスティン・クローニンのベストセラーになったバンパイア小説『ザ・パッセージ』を選んだ。テキサスの町を人気小説に登場させ、PRしてくれたというのが、その理由だ。イギリスでは、本が貸し出されるたびに著者に一定額を支給する「公共貸与権(PLR)」という制度により、ベストセラー上位に入る小説家を支援している。イギリスの雑誌編集長たちを対象に先月実施された「イギリスで最も影響力のある女性」調査で、サッカーの人気スター、ベッカム選手の妻でデザイナーでもあるビクトリア・ベッカムや、エリザベス女王を抑えて、J.K.ローリングが1位になったのを見ても分かるとおり、大衆向けストーリー作家に対する評価は高い。
観光ガイドもストーリーを織り交ぜながら紹介すれば、次元が変わる。iPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)は、アップル社設立者の一人「スティーブ・ジョブズ」という人物のストーリーと結び付けることによって、その価値が高まった。ストーリー性がある商品とない商品では、すぐに値段の差がつく世の中だ。ストーリー産業の源泉としても文学を考えなければならない時代が来た。
金泰勲(キム・テフン)文化部次長待遇