2010年12月19日
警視庁公安部外事3課の内部文書とみられる国際テロ関係の情報がインターネット上に流出した事件で、警視庁が米国を含む複数の国に、業者からの接続記録の提供などの協力を求めていることが捜査関係者への取材でわかった。文書はルクセンブルクのサーバーを経て流出していたが、警視庁は、ほかの国のサーバーも経由した可能性があるとみて、流出経路の解明を進めている。
流出文書は114点。捜査協力者や捜査対象者のイスラム教徒らの個人情報や、米連邦捜査局(FBI)からの捜査要請とみられる資料などが含まれている。
関係者によると、文書は10月28日午後10時ごろから数十分の間に、名前の異なる五つの圧縮ファイルの形で、ファイル交換ソフト・ウィニーのネットワーク上に公開された。ファイルの内容は同じで、いずれもルクセンブルクのレンタルサーバーを経由していたことがわかっている。
捜査関係者によると、警視庁はルクセンブルクの関係当局に協力を要請し、一部回答を得たという。それによると、このサーバーのほかに、別の国のサーバーも経由していた可能性もあるという。
五つのファイルが出たあと、ウィニー上では同じ文書のファイルの公開が続いた。警視庁はこのうち、早い段階の公開に使われたパソコンのIPアドレスを割り出し、国内や米国など海外のプロバイダー各社に契約者情報などの提出を要請。11社の12人分は令状で差し押さえた。ウィニー上でファイルを得た人による二次的公開が多いというが、同庁は流出経路の特定につながる記録がないか調べを進めている。
警視庁は、こうした記録を入手するため、関係国に国際捜査共助を依頼することも検討している。
また、五つのファイルが流れたのとほぼ同じころ、「ウィキリークスジャパン」という名前のブログで文書の一部が掲載され、ツイッターで文書の存在を宣伝するような書き込みもされていた。
一方、文書をだれがどう入手し、持ち出したかを調べるため、警視庁は文書が作成されたとみられる2004〜09年の外事3課在籍者や警察庁への出向者ら数百人から事情聴取。私物も含めパソコンや外部記憶媒体を調べている。
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警視庁は流出文書についていまも「調査中」として、内部文書と認めていない。インテリジェンス(情報活動)特有の事情も背景にあるとみられるが、個人情報をさらされたイスラム教徒らは「早く認めて謝罪すべきだ」と批判する。対応の遅さを指摘する声もあり、警視庁は判断を迫られている。
「不利益を受けている人がいるのは事実だが、インテリジェンスの情報の存在を公に認めると今後の活動自体に大きな支障が出る」。ある警察幹部は苦しい胸の内を明かす。機密情報を共有する各国情報機関との信頼関係などへの影響を考えざるを得ない、との立場だ。
警視庁は通信記録などを差し押さえる令状の容疑に、自らの業務が妨げられたとする偽計業務妨害を適用。イスラム教徒は「警察を被害者にするのは本末転倒」と憤る。流出文書を内部資料と認めていない状況では地方公務員法の守秘義務違反容疑での捜査は難しく、苦肉の策と言える。
イスラム教徒らの告発を受けた東京地検が、地方公務員法違反容疑で捜査する、ねじれた状態にもなっている。
民間の情報セキュリティー会社の調査では、流出文書は今月上旬の時点で27の国・地域の約1万4千人のパソコンに取り込まれ、拡散は続いている。
影響が広がる中、警視庁は、内部文書かどうかの判断とは切り離して、情報をさらされた人の保護の徹底を打ち出した。しかし、ある警察幹部が「対応は後手後手になっている」と認めるように、遅きに失した感は否めない。(渡辺丘)
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