【萬物相】ジェスチャー

 イタリア人は会話の際、口だけを使うわけではない。さまざまな「ジェスチャー(身振り手振り)」を使って初めて意思疎通が成り立つ。すでに1832年の時点で、ナポリでは「ジェスチャー辞典」が出版されていたほどだ。片方のこぶしで反対の手のひらを強くたたくと「あ、思い出した」という意味になる。2本の人さし指を合わせて手の甲を見せ、へその辺りに持っていくと、「二人は分かり合った」という意味だ。手のひらを真っすぐ開いて胸の高さで振ると、「我慢できない」という意味になる。

 イタリアにはジェスチャーにまつわる面白い話が多い。「第2次世界大戦の際、イギリスの情報部がイタリアのスパイを逮捕した。ひどい拷問を加えたが、スパイは何も話さないまま死んでしまった。両手を縛られたまま拷問されたため、ジェスチャーを使えず、白状したくてもできなかったのだ」。イタリア人と携帯電話に関するジョークもある。「イタリア人はひもの付いた携帯電話を顔の高さにつるして、両手を使いながら通話する」

 ジェスチャーは国ごとに異なる。イギリスでは勝利のVサインをするとき、手のひらが見えなくてはいけない。手の甲を向けたVサインは侮辱に当たる。反対に、トルコやギリシャでは、手のひらを向けるVサインが侮辱になる。韓国では、小指を立てると「恋人」を意味するが、ネパールでは「トイレに行きたい」という意味だ。酒を飲もうと誘うとき、ドイツではビールジョッキを意味するこぶしを口の辺りに持っていくが、ウオツカを楽しむロシアでは、指で喉仏をはじく。

 米国のOKサインは、ほかの国では通訳が必要な場合がある。韓国と日本では、もともと金を意味する。フランスでは「特に用事がない」というジェスチャーになる。ドイツ、ブラジル、アラブ諸国では、非常に下品な意味になる。マルタ共和国では同性愛を意味するため、気を付けなくてはいけない。李在五(イ・ジェオ)特任長官が今月8日、国会予算案処理の過程で、朴智元(パク・チウォン)民主党院内代表に対し、あるジェスチャーをしたことで非難を受けた。李長官が親指で肩越しに後ろを指し、「出ていけ」と示したということだった。

 後に、李長官は「わたしの席の後ろの方で、ずっと暴言を吐いている人がいたため、やめさせてほしいという意味だった」と弁解した。李長官が2、3日前、民主党の孫鶴圭(ソン・ハッキュ)代表が立てこもっていたソウル広場を訪れた際、ある野党支持者が親指を下に向け、「消え失せろ」というジェスチャーをした。口を開きさえすれば「疎通」を叫んでいた与野党が、今や口を結んでジェスチャーだけを交わしている。「最高」を意味するはずの親指が違う意味で使われている。手もかじかむほどの寒さが訪れたら、与野党は目くばせして意思疎通をするつもりだろうか。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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