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凶器取り上げたのは67歳元プロボクサーのタクシー運転手…取手通り魔事件

スポーツ報知 12月18日(土)8時0分配信

 17日午前7時40分ごろ、茨城県取手市のJR取手駅西口で、男が停車中の路線バス2台に次々と乗り込み、乗客の中・高校生らを切りつける事件が起きた。茨城県警は、住所不定・無職の斎藤勇太容疑者(27)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。乗客14人が負傷したこの事件で、斎藤容疑者から刃物を奪い取ったのはタクシー運転手の松本岩夫さん(67)。元プロボクサーで、昭和30年代には世界王者のスパーリングパートナーを務めたこともある猛者だった。

 朝の通勤・通学者でにぎわう駅前のバスロータリー。30メートルほど離れたところで客待ちをしていた北相タクシーの運転手、松本さんはすぐに「キャー!」という叫び声で異変に気がついた。窓ガラス越しにバスの中で刃物を振り回す男の姿。「通り魔だ」。靴も履かず、靴下のままバスに飛び乗った。

 バス降り口に殺到していた乗客4、5人を外に引っ張り出し、バス中央へ。斎藤容疑者はすでに20代の男性2人に取り押さえられ、横たわっていた。松本さんは、斎藤容疑者が床に落とした長さ25センチの刃物を奪い取り、背広の内ポケットに収めた。「これさえ奪えば、という思いで必死だったよ。(容疑者は)浅黒くて、最初は東南アジア系の男かなと思った。ひ弱そうな男に見えたなあ。オレが犯人と思われても困るから、刃物はすぐに警官に渡したよ」と修羅場を振り返った。

 松本さんは、昭和30年代には金平ジム(現協栄ジム)所属のフェザー級のプロボクサーだった。小柄だがパンチ力があり、デビュー戦から4連続KO勝利。1964年(昭和39年)には、世界戦のために来日したWBA、WBC元世界フェザー級王者、シュガー・ラモス(キューバ)のスパーリングパートナーに抜てきされた経験を持つ。

 ラモスは、試合のダメージで2人の選手を死に至らしめた文字通りの“殺人パンチャー”として恐れられていた。来日時には後に畑山隆則(元WBA世界ライト級王者)らを育てた横浜光ジム会長の関光徳氏(故人)の挑戦を受け、難なく6回TKO勝ちしている。

 練習とはいえ、世界王者と拳を合わせたことがある松本さん。「オレはこんなジジイだし。どうなってもいいから未来のある高校生を助けなきゃ、と。本当にそんな思いだったよ」。プロは11戦で引退したが、40年以上たって思わぬところでヒーローとなった。

 

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最終更新:12月18日(土)8時0分

スポーツ報知

 

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