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新防衛大綱 危険過ぎる政策変更 12月18日(土)

 あまりにも危なっかしい。日本の安全保障政策が、猛スピードで大きくかじを切ろうとしている。

 菅直人政権が閣議決定した新たな「防衛計画の大綱」である。

 米国の軍事戦略とのさらなる一体化、国防政策の基本としてきた専守防衛の有名無実化、武器輸出の本格的な解禁…。

 大綱の中身に目を凝らすと、こんな方向が見えてくる。国民的な論議がなされたわけではないのに、ここまで踏み込むのか、と思った人も多いのではないか。

<憲法の精神ゆがめ>

 日本が「平和国家」であることを世界に胸を張って言えるかどうか、が問われる事態だ。なし崩しに防衛政策が変更されることに、警戒しなくてはならない。

 防衛計画の大綱は、政府が長期的な防衛力をどのように整備、運用していくか、という基本方針を示すものだ。今回は1976年、95年、2004年に続いて4代目で、民主党政権になってからは初めての決定となる。

 前回の大綱まで、その中核には「基盤的防衛力」という考え方があった。あらゆる脅威に対抗して防衛力を増強していけば、歯止めがなくなる恐れがあるため、独立国として必要最小限の防衛力を整備するというものだ。自衛隊を専守防衛の枠内にとどめる“たが”の役割も果たしてきた。

 初代の大綱を決めたのは東西冷戦期。2代目が冷戦終結後、3代目は01年の米中枢同時テロの後だった。時々の国際情勢がその内容に反映されてきた。前回は、テロなど新たな脅威への対応が必要との理由から「多機能、弾力的な防衛力」という考え方が登場してきたけれど、基盤的防衛力の基本的な考え方は残していた。

 ところが今回、それに代わる新概念が明記された。軍事活動を活発化させる中国などへの対応を念頭に置いた「動的防衛力」である。これまでの自衛隊の対処の仕方を見直し、活発な活動ができるようにすることを狙っている。

 「日本を米国のポチにする極めて危険な考え」−。元防衛庁幹部で、新潟県加茂市の小池清彦市長の言葉を思い出す。前回の大綱が基盤的防衛力の概念を弱め、自衛隊の海外活動を積極的に推し進めようとしていることを、こんな例えで批判していた。

 動的防衛力は、防衛政策の基本的な在り方を最終的に換骨奪胎する恐れがあるもの、と考えていい。「使える自衛隊」への脱皮を急いでいるようにみえる。

<対米傾斜さらに>

 政府がなぜ、動的防衛力という考え方への転換を急ぐのか。その理由は、米国版防衛大綱ともいえる米国防総省の「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」を読むと見えてくる。

 今年2月に最新版が出た。同盟国や友好国との関係強化を安保政策の中核に位置付けている。

 動的防衛力は、米国との軍事的な結び付きをより深める結果をもたらすのは明らかだ。海外に広く展開する米国の軍事戦略にどんな形で巻き込まれていくのか分からない。危険過ぎる。

 外国への武器輸出を原則禁止している「武器輸出三原則」の行方にも注意がいる。「平和国家」を世界に示す役割を担ってきた政策だ。米国が変更を強く求め、防衛省、防衛産業界なども見直しを働きかけていた。

 菅政権は今回、ねじれ国会対策から社民党に配慮し、大綱での輸出解禁への明確な表現を避けた。菅首相自身、三原則の理念は変えない、と明言している。

 大綱には、武器輸出に関し、国際共同開発・生産への参加について「検討する」と記した。性能や費用対効果から先進諸国で主流になっている、との理由が付いている。なるべく早く解禁したい、というのが本音だとしたら、国民を欺くことになる。首相の言葉の軽さや姿勢が問われる。

 民主党は、野党時代から安保政策に関し、党内で突っ込んだ論議をしてこなかった。基本政策が固まっていないため、一部の有識者や防衛官僚の考えなどに左右されやすい面がある。今回の大綱を決定するまでの過程を見てもそんな印象を受ける。

 昨年の衆院選、今夏の参院選でも、安保政策をここまで変えるとは言っていない。外交・安保面の公約の柱には「緊密で対等な日米関係の構築」を掲げていた。

 この公約を米国とも率直に話せる関係を目指す、と解釈した人は多かったはずだ。沖縄の米軍普天間飛行場移設問題への対応も含め、菅政権の姿勢は逆に対等な関係から離れ、米国への傾斜を強めるばかりである。

<国民に説明を>

 安保問題は最終的には国民の暮らしに重大な影響を及ぼすことを忘れてはならない。なぜ、大綱を大きく見直したのかも含め、菅首相は国民にきちんと説明しなくてはならない。これほど重要な問題をいとも簡単に決める政権を信用することはできない。

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