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[24765] 【習作】クローパイツァー 黒の不審者伝説  【グローランサー6 オリ主 変態成分を含みます】
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/06 17:42






前書き




この作品は息抜きに思いついたネタを書いてみた作品です。

グローランサー6の二次創作です。

下ネタを含みます。どうか、ご了承下さい。







[24765] 第一話 目覚め
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/06 17:43










「光を感じます。

 淡いながらも強く輝こうとする光を

 素養はあるようですがそれだけで判断するのは早計。」


一体何だ?

女の声が聞こえる。


「はじめまして、今、貴方の心に直接語りかけています。」


心に?


「はい。私は破滅に向うこの世界を救える人達を探しています。」


俺の目の前には声の主と思われる女性が居た。


特徴その1 美人

特徴その2 オッドアイ(瞳の色が左右違う。)

特徴その3 巨乳 ←これ重要!!

 
「もしかしたら、貴方がその戦士であるかもしれません。

 ですから、貴方が私の探している人物であるかどうか、これから少し見せて頂きたいのですがよろしいですか?」

「構いませんが、その前に貴方のパイオツを見せて貰えませんか?」

「・・・・えっ?」

「いえ、失礼しました。貴方のオッパイを見せて見せて貰えませんか?

 後、出来れば触らせて下さい。それが本物かどうか確認したいので・・・。」


「・・・・・・残念ながら貴方は私の求める戦士では無いです。

 このまま、永久に眠っていて下さい。」

「あ、ちょっと・・・・。」
















第一話 目覚め






何処だここは?

見慣れないポッドの様な物の中で目覚め、外に出てみたは良いが相変わらず見慣れない風景だった。

俺の入っていたポッド?は砂浜に打ち上げられており、近くではウミネコの鳴く声が聞こえている。

俺はポッドの中にあった双剣を意味も無く振り回しながら、周囲を調べる事にした。



結果、何も分からなかった。

そもそも、俺は誰だ?何か変な夢を見た気がするが・・・・それ以前の記憶が無い。

このポッドに入った記憶も無いし、名前も思い出せない。

唯一分かる事は、この両手に持っている双剣が俺の物だと云う事だけだ。

さっきから、妙に手に馴染んでいる。きっと記憶を失う前の俺は双剣使いだっのだろう。

それはそうと、何時までもこんな所に居ても仕方ない。

とりあえず、俺は誰か人が居ないか探してみる為にその場を移動する事にした。











人を見つけること自体は簡単だった。

ポッドのあった場所から少し歩くと街道があった。

その街道を道なりに歩いて行くとキャラバンに遭遇した。

最初は怪しまれたが、事情を説明すると商人達が同情してくれたらしく

次の町まで一緒に行かないかと誘われたので同行させて貰った。

途中、何度かモンスターに遭遇した。

戦い方は体が覚えていたので何とかなった・・・・・訳でも無かった。


やられそうになった所を、他の護衛に助けて貰ったりしながら何とか戦っていたのが真実だった。

何度か戦っている内に、勘が戻ってきたのかどうかは知らないが

他の護衛達に迷惑を掛けない様にはなった。

その後、町までたどり着いた俺は商人達から金銭を受け取ると彼らと別れた。

一応護衛をしてくれたので、その報酬との事だった。






その後、俺は町をブラブラと歩き回っていた。

ポッドの中に独りと云う事態よりは、好転しているものの現状は不安だらけだ。

この町に着くまでの間に、商人や護衛達から色々な話を聞いたのだが

何一つとしてピンと来る話が無かった。

そんな、心の中でため息をつきつつ、町を散歩しながら人生という名の道に迷っている俺に声を掛けて来た人達が居た。


「その頬の印、もしかして守護勇士(ブレイブ・ガード)様では?」

「・・ブレイブ・ガード?」


なんじゃそりゃ?


「申し訳ありませんが、記憶が無いので私がブレイブ・ガードかどうかは判りません。

 もし、宜しければ詳しい話を聞かせてくれませんか?」


「記憶が無い?」

「・・・そういえば、イリステレサ様が『私の守護勇士は記憶を失っている』と、以前話して居られた様な。」

「確かに。」

「やはり、本物だ。」


何だコイツら、コソコソと。


「申し訳ありませんが、私にも分かるように説明して貰えませんか?」

「失礼しました。貴方は本物の守護勇士です。巫女様が貴方を待っています。

 我々と一緒に『大地の里』まで来て頂けませんか?事情は道中説明します。」

「・・・分かりました。」


自分の事についての手掛かりを掴んだ俺は、コイツ等を怪しいと思いながらも同行する事にした。











「つまり、貴方達の里(大地の里)に居る『大地の巫女』を守護するの役目を持っているのが

 守護勇士(ブレイブ・ガード)と云う事ですか?」

「はい、そして貴方の頬にある印が守護勇士の証です。役目が迫った時に大地の巫女はポッドの中から目覚めます。

 そして、守護勇士も巫女を守るべくポッドの中から一人目覚めるのです。」

「・・・確かに、ポッドから目覚めた。それで、私は大地の巫女とやらが役目を果たす手伝いをすれば良いのですか?」

「実は今回の大地の巫女の役目は既に果たしているのです。」

「果たした?」

「はい。その役目を果たした帰りに、貴方と離れ離れになって仕舞った様なのです。」

「帰り道でねぇ。それはついてない。」

「はい、里に戻ってきたイリステレサ様の落ち込み様は酷いものでした。」


イリステレサ様ってのは、大地の巫女の名前らしい。

話を聞いている内に、少しづつ違和感を覚えてきた。

何だ、この感じは?














そして、大地の里に到着した俺は碌な心構えも出来ないままに大地の巫女さんに会う事になった。


「イリステレサ様は、奥の広場にいらっしゃいます。早く会って、安心させてあげて下さい。」


里の案内を買って出てくれた若者に促されて、俺は重い足取りで巫女さんの居る広場に向った。

なんて話しかければ良いんだ?

久しぶり?

始めまして?

下らない事を考えても足は動く。

気付くと目の前の広場には、数名の子供達とこっちに背を向けて座っている女性が居た。

あの女性が巫女か。

さて、何と声を掛けたもんか。














                  イリステレサside


(インフィニトーは死に、私の巫女としての使命は生まれる前に解消された。

 平和なはずの世界。なのに、私の心は・・・。)


子供達と相手をしつつ物思いに耽っていた私は、不意に背後に視線を感じて振り返った。

そこには困った表情を浮かべたあの人が立っていた。

私は咄嗟に立ち上がり、気付くとあの人の元へと駆け寄っていた。

モノポリス社に捕まった私を、自らの命を犠牲にして助け出してくれたあの人。私の守護勇士。

その後、インフィニトーとの戦いで私を守ってくれた守護勇士が新たに目覚めた守護勇士では無く

モノポリス社に捕まり人体実験をされ、記憶を無くしていた私の守護勇士だと気付き

私はあの人と共に生きて行こうと決心した。


でも、あの人はインフィニトーとの最終決戦の為に向った2000年前の過去に置き去りになってしまった。

もう会えない。

でも、もしかしたら会えるかも知れない。

そう思って、今日まで生きて来た。


感情が、涙が溢れる。

私はあの人に駆け寄ると、感情に任せて平手打ちをしてしまった。















                  主人公side





何て声を掛けたら良いか悩んでいた俺だったが

俺に気付くと巫女さんの方が先に行動を起した。

涙を流しながら俺に駆け寄ってくる巫女さん。

美人の巫女さんだ。そして、巨乳。

駆け寄ってくる巫女さんの、自己主張が激しい実った果実に目を奪われていると


       バチーン!!


巫女さんは、俺に盛大な平手打ちを喰らわせて来た。

オッパイを凝視していたのがばれたのか?唖然とする俺に巫女さんは言葉を掛けてきた。


「私の気持ちが判りますか?世界が変わって、巫女の使命からも開放されて、なのにその喜びを分かち合える人が隣に居ないなんて。

 酷いです、遅いじゃないですか。私にこんな寂しい思いをさせて、酷い人です。ずっと、ずっと待ちました。

 でも、もう待つのは嫌です。約束して下さい。もう、私の隣から離れないと・・・愛しています。」


かなり、予想外だ。



その1 駆け寄る

その2 平手打ち

その3 抱き付いて来る

その4 プロポーズ



俺は若干混乱しつつ、抱き付いて来た巫女さんを抱きしめて

丁度、目の前にある巫女さんの髪の匂いを嗅ぎつつ、果実の感触を体で感じながら

これからの対応について考えた。


選択肢1  巫女さんの恋人の振りをして結婚する。都合の悪い事は記憶喪失で誤魔化す。

選択肢2  「俺の事は忘れろ」と、巫女さんを冷たく突き放して旅に出る。

選択肢3  巫女さんに、本当に俺が恋人で間違い無いか良く確認する。

選択肢4  クールな俺は、現状を打破する為の名案を思いつく。



















選択肢3で行くか。

選択肢1は論外だ、戻ってきた本物の恋人に刺し殺されるのがオチだ。

選択肢2も不味い。ヤンデレ化した巫女さんに刺し殺される気がする。

選択肢4は在り得ない。何故なら今の俺は巫女さんの所為で一部がホットになっているからな。





「すみません、私は記憶を無くしています。本当に貴方の恋人なんでしょうか?」

「えっ!?」


驚愕に染まる巫女さんの顔。


「そんな・・・。私の事が判らないのですか?」

「はい。人違いでは無いですか?」

「・・・胸。」

「胸?」


俺は巫女さんの『胸』と言う呟きに反応し、至近距離から巫女さんのオッパイを凝視した。

ナイス・オッパイ。


「貴方の胸にはキズがあったハズです。それが証拠になります。」

「胸にキズ?」

「ちょっと見せてください!!」

「なっ!!」


そう言うやいなや、巫女さんは俺の服を引っぺがし、胸元を露出させた。

そこにキズは、無かった。


「そんな・・。貴方は誰です!!」

「分かりません。ここの里の人達には『ブレイブ・ガード』だと言われましたが。」

「貴方は私の守護勇士(ブレイブ・ガード)ではありません!!」

「すみません。」

「返して!!私の涙と純情を返して!!」


バキッ!!


そして、巫女の右ストレートが顔面に炸裂するのと同時に俺は意識を手放した。













[24765] 第二話 誕生
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/08 02:05












かつて、遠き星よりやって来た侵略者『インフィニトー』との戦いがあった。

インフィニトーの野望はやがてこの星を滅亡させる。

そして、この星を滅亡から救う為に多くの者が立ち上がってインフィニトーと戦った。

大地の巫女はその抵抗者達の中心であった。

その大地の巫女が生まれ育った里が、『大地の里』である。

インフィニトーが大地の巫女によって封じられ、世界に平和が戻りつつあった。

そんな時、大地の里の族長の前に、数人の男達によって拘束されている頬に印のある青年が連行されてきた。


「大地の巫女達は無事か?」

「はい、全員無事に保護しました。」

「そうか。」

「この男の拘束にも成功しました。」

「・・・・。」


拘束されている青年は終始無言だ。

そんな青年を一別した族長はただ短く

「連れて行け。」

と、命令しただけであった。

そんな族長に側近が声を掛ける。


「此度の事態、如何なる対応を為さるのですか?」

「・・・あの者の過去の功績は大きい。インフィニトーの封印、その後の里の復興にも大きく貢献している。

 だが、此度の行いは見逃す事は出来ない。処罰はおって知らせる。」

「はい。」




















第二話 誕生



巫女のストレートを喰らってから三日たった。

俺は今、大地の里の族長の家にお世話になっている。


「てな、訳で何かこう・・、メチャクチャ美男子変身出来る薬とか、透明になれるマジックアイテムとか無いんですか?」

「藪から棒に何じゃ。」

「実は、巫女さんが俺と顔を会わせる度に泣きそうになるんです。」

「ふむ。」

「どうやら、待ち続けている恋人に瓜二つだそうで・・・。」

「それで、顔を変えようと?」

「はい。」

「残念じゃが、家には『仮面付きのゴッツイ鎧』はあっても、顔を変えられる様な物は無い。」

「『仮面付きのゴッツイ鎧』って、そこに飾ってあるヤツですか?」

「うむ、何でも遥か昔から我が家に伝わる由緒正しい鎧らしい。

 そもそもは、侵略者『インフィニトー』を・・」


爺さんの長話が始まった。

それにしても、仮面か。

俺は爺さんの話を聞き流しながら鎧を弄くり、軽い気持ちで取り外した仮面を被ってみた。

ふむ、意外とピッタリだ。まるで顔に吸い付くようだ。


「おお、そうじゃった、そうじゃった。大事な事を言い忘れておったわ。

 その仮面は呪われておっての、一度付けたら外れないのじゃ。

 ワシの爺さんも若い頃に、うっかり着けてしまっての。死ぬまで仮面をつけて生活しておったわ。」

「・・・・おい、爺さん。そういう大事な事は先に言え。後、そんな危険な物を居間に飾っておくな。」



その日、大地の里に仮面の男が一人誕生した。





「爺さん、コイツを外す方法は無いのか?」

「死ねば外れるぞ。おぬし、死んで見るか?」

























族長の家にお世話になっているのだが、一応只で飯を喰らうのは抵抗があった。

その為、俺は日中には里の仕事を手伝っている。

畑の世話、色々なもの補修、子守、モンスター討伐等だ。

その日は、畑の手伝いをする為に鍬を担いで、タオルを首にかけ畑まで歩いていた。

途中で、巫女さんに遭遇し軽く挨拶をした。


「巫女さん、おはよう。」(仮面を着けている)

「おはよう御座いま!!・・誰です!!貴方は、目的はなんです!!」


巫女さんは俺を二度視した挙句、戦闘態勢をとった。


「いや、俺ですよ。先日、右ストレートを貰った。」(仮面を着けている)

「右ストレート?・・・ああ、思い出しました。それで、その仮面は一体何の真似です!?」

「族長の家にあったんです、被ったら外せなくなりました。」(仮面を着けている)

「・・・そうですか、それはなんて言って良いかは分かりませんが・・・頑張って下さい。」

「はい。」(仮面を着けている)


その日以降、巫女さんに泣かれそうになる事は無くなったが

代わりに俺を見かけた子供達が泣く様になった。

子供達が俺に慣れるまで何度も巫女さんに『子供を泣かすな!!』叱られたが

それはまた別の話だ。




















俺がこの里に来てから、半年が経った。

子供達も俺を見て泣く事は無くなり、里の人達にも馴染んできた。

ただ、巫女さんは意図的に俺を避けている雰囲気だ。

三日に一度顔を合わせる位だ。

きっと、恋人の幻影が俺とダブってしまうのだろう。

絶対そうだ。仮面の所為では無い。

今日は草むしりの仕事を頼まれた。

首からタオルをかけ、しゃがんで草を毟っていると背後に人の気配を感じた。


「あっ、勇者様。あそこに居る人に聞いてみましょう。」


女の子の声?

あそこの人って俺の事か?


「すみませーーん、ちょっと宜しいですか?」

「はい、何でしょう。」(仮面を被っている)


そこに居たのは、妖精を連れた青年だった。

声の主はこの妖精か?


「・・・・・。」

「如何かしましたか?」(仮面を被っている)


何だ?妖精と青年が固まっているが・・・。


「はっ!!失礼しました。実は少々、聞きたい事があるのですが

 この里は大地の里ですか?」

「はい、大地の里です。」(仮面を被っている)

「仮面の里ではないのですね?」

「仮面の里?」(仮面を被っている)

「いえっ!!何でもありません。この里にイリスさんはいらっしゃいますか?」

「イリスさん?ひょっとして、巫女さんの事ですか?」(仮面を被っている)

「はい、大地の巫女さまです。」

「この時間帯だったら、広場に居ると思います。案内しますよ。」(仮面を被っている)

「よろしくお願いします。」


妖精と話したのは初めてだ。

それにしても、一緒に居る青年は無口だな。

巫女さんに用事?

ひょっとしてコイツが巫女さんの恋人か?

そういえば、顔に変な印があるし着ている服も俺が最初に着ていた服と瓜二つだ。


「あの・・・如何して仮面を着けていらっしゃるのですか?」

「ああ、コレですか?着けたら外れなくなりました。

 何でも、2000年前にインフィニトーが直々に作成した自分用アーマーの成れの果てだそうで。」(仮面を被っている)

「インフィニトーがですか!?」

「はい、装備している者が死ねば外れるらしいのですが・・・。

 恐らく、インフィニトーは人から人に憑依していたらしいので、その様な機能をこの仮面に付けたのでしょう。」(仮面を被っている)

「なるほど、確かにインフィニトーにとっては効率的ですね。」


俺は主に妖精と会話しながら広場への道を先導して行った。

この青年、名前はメークリッヒと云うらしい。本当に無口だな。

代わりに妖精さんが色々と話してくれる。


「あそこに居ますね。・・・ごゆっくり。」(仮面を被っている)


広場の入り口まで案内した俺は、青年から少し距離を取り様子を伺った。

青年が巫女さんに近づいて行く。

巫女さんの方も青年に気付き、青年に近づく。

そして、互いに一言二言交わした後で抱き合った。

完全に二人の世界をかもし出している。


置いてけぼりを食らって頭に?マークを浮かべている子供達が俺のそばに寄って来て次々と俺に質問をぶつけて来る。


「ねーねー、あの人誰?」

「あの人は巫女さんがずっと待っていた恋人だ。」(仮面を被っている)

「恋人?じゃあ、結婚するの?」

「ああ。」(仮面を被っている)

「ずっと待ってたの?何処に行ってたの?」

「それは、恋人さんに聞いて見ないと分からないな。」(仮面を被っている)

「何でどっか行ってたの?」

「きっと、甲斐性無しだったのさ。」(仮面を被っている)

「勇者様は甲斐性無しじゃありません。沢山の女の人と仲良しです!!」


俺が適当に子供たちの相手をしていると妖精さんもこっちにやって来た。

そりゃあ、二人の世界を作られてちゃ妖精さんも居心地が悪いな。


「わぁ、妖精さんだ。」

「初めて見た。」

「何処から来たの?」


子供達の関心は一気にバカップルから妖精さんに移り、妖精さんを質問攻めにしていた。


「私は妖精のユリィと申します。ゴートランドと呼ばれている大陸からやってまいりました。」

「ゴートランド?外の大陸の事か?」(仮面を被っている)

「えっ?ああ(そうでした、インフィニトーを倒したから歴史が変わってクイーンが・・・。)ブツブツ」

「何か拙い事を言ったか?」(仮面を被っている)

「いえ、そう云う訳ではありません。」

「そうか、ちょっと記憶を無くしていて時々可笑しな事を言うけど気にしないでくれ。」(仮面を被っている)

「記憶を無くされたのですか?」

「ああ、半年前に頭に強い衝撃を受けてな。」(仮面を被っている)

「それは、何と仰ればいいか・・・。」

「気にするな、俺は気にしてない。」(仮面を被っている)

「その半年前の事が切っ掛けなのですか?」

「そうだ。半年前の『あの恐ろしい事件』が・・・。」(仮面を被っている)

「恐ろしい事件。」


妖精さん、子供たちが息を飲んで俺の次の言葉を待っている。


「そう、あれは丁度この場所で起こった事件だった。俺は里の入り口から歩いて来た所だった。

 すると、突然!!広場の真ん中にうずくまっていた髪のながーーい女が飛び掛って来た!!」(仮面を被っている)


妖精だんと子供たちは俺の身振り手振りを交えた話にすっかりと引き込まれていた。


「そして、その女は俺に飛び掛ると『ズットマッテタノ、モウハナレナイ。』そう言いながら俺の顔を殴りだした。

 俺はそこで気を失った。そして、俺が目を覚ますと・・・・・・。」(仮面を被っている)


ここで一旦間を取る。


「この仮面を着けられていたんだぁあああ!!!!!」(仮面を被っている)

「「「きゃーーーーー!!!!」」」


俺の話で妖精さんと子供たちは悲鳴をあげる。

完全にシテヤッタリだ。


「通称、妖怪『仮面女』だ。男に棄てられて自暴自棄の挙句に酒とギャンブルにのめり込み

 人生回廊を遭難した女の情念が妖怪になったものだ。」


だが、この時の俺は自分の背後に恐ろしいモノが居る事を知らなかった。


「誰が妖怪ですって?」


恐る恐る振り返ってみるとそこには『夜叉』が居た。


「人生回廊を遭難した女?男に棄てられた?」

「違うんですよ、巫女さん。あなたの事じゃ無いですって、・・・何ですか?その手に持ってるのは?

 それはクワですよ?主に土を耕す道具ですよ?」

「あら?そうなのですか?でも、こう云う使い方もたまには良いと思いますよ?」


ブンッ!!


ゴシャ!!


その日、俺はクワも凶器に成りえる事を知った。













その後、しばらくの間、里のあちこちで子供たちに怖がられたり泣かれたりする巫女さんの姿が目撃された。
















[24765] 第三話 旅立ち
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/10 01:06














大地の里の族長がある決定を下そうとしていた。


「お主のやった事は決して許される事では無い。」

「おいおい、大地の巫女はあんた等の玩具じゃ無いんだぜ。」

「だがお主の玩具でも無い。」

「・・・・確かに、正論だねぇ。」


拘束されている青年は、まるで自分の立場を分かって無い様な不敵な態度を崩さない。


「本来なら死罪だ。だが、お主のこれまでの功績に免じて追放に留める。」

「随分とお優しい事で、ついでに大地の巫女を何人か着けてくれたら最高だ。」

「只の追放ではない。お主の記憶を消去してから追放する。真人間になってやり直して来い。」

「ちっ。」

「コマンダーS5をポッドに収容し記憶を消せ。記憶の消去が完了したらポッドを海に投棄せよ。」

「おいおい、棄てるなよ。それじゃ、死刑同然だろ?」

「大丈夫だ、ポッドには生命維持装置も付いている。最高で5000年は機能する優れものだ。

 それに、死ぬとしても寝ている間だ、苦しむ事は無い。」

「易しい御心使い感謝しますよ、ついでに同じポッドに大地の巫女を二、三人詰めて置いてくれると更に嬉しいんだけどね。」


族長は青年の軽口に返答せず。ただ、連れて行かれる青年の背中を見送るだけだった。
















第三話 旅立ち



巫女さんに斬新的なクワの使い方を教えてもらってから一月たった。

巫女さんが俺を殴るのに使ったのは、畑を耕す方の反対側だった。まあ、みね打ちだった訳だ。

そこに、そこはかとなく巫女さんの優しさを感じる。





「と、言う訳で里から出て行こうと思います。」

「相変わらず藪から棒じゃな。」

「つきましては、何かこう・・・凄い物を餞別に貰えませんか?」

「悪いが、家には『ゴッツイ鎧』は在っても、お主にあげる様な物は無いんじゃよ。」


そんな訳でゴッツイ鎧を貰いました。

早速、試しに着てみた。

まるで、全身に吸い付いてくる感じだ。

重さもまるで感じない。


「ごめんくださーーい。」


この声は、妖精のユリィか。


「ユリィ、どうかしたのか?」

「わっ!!ビックリしました。」

「ああ、この鎧か?族長に貰ったんでちょっと着てみた。それより、何か用か?」

「はい、実は妖精の里に一旦帰ろうと思うのです。今日は、お別れの挨拶に来ました。」

「それは、また急だな。妖精の里は外の大陸にあるのか?」

「はい。」

「やっぱり、勇者さんと一緒に?」

「いえ、今回は私一人で帰ろうと思います。勇者さまとイリスさんの二人っきりの生活を邪魔するのも悪いと思いましたので。」

「へぇ、良くあの勇者さんが許してくれたな。」

「・・・・いえ、実は黙って出て来ました。一応、書置きはして来たのですが。」

「それじゃ、このままの足で出て行く気か?」

「はい。」

「そうか・・・、ちょっと待ってて。」


俺は急いで自室に戻ると用意してあった荷物と双剣を持って

ユリィの所に戻った。


「よし、行くか。」

「えっ?」

「旅は道連れ、世は情けだ。一緒に行こう。」

「そんな、悪いです。」

「気にするな、どうせ近いうちに出て行こうと思ってた所だ。荷物も纏めてあった訳だし。

 ってな、訳だ。よろしくなユリィ。」

「・・・はい、よろしくお願い致します。仮面さん。」


・・・・仮面さんって誰?俺の事?


「ユリィ、その仮面さんって俺の事か?」

「はい・・・・あっ、すみませんでした。見た感じが仮面さんだったので、ずっと仮面さんだと思いこんでいました。」


見た感じって・・・それじゃ、メークリッヒ(ユリィの勇者)は『白コート』で巫女さんは『オッパイ美人』になっちまうだろ?


「・・・そういえば、まだ名乗っていなかったな。俺は・・・・・誰でしょうか?」

「ダレ・デ・ショウカさん?」

「いや、名前が無い。思い出せない。」

「そんな・・・それじゃ、皆さんは今まで貴方の事をなんと呼んでいたのですか?」

「『仮面さん』『仮面の兄ちゃん』『怪しいやつ』『よそ者』『偽物』」

「それは、お気の毒です。」

「そうだ!!ユリィ、俺に名前を付けてくれ。」

「ええぇ?私がですか?」

「そうだ、旅立ちの儀式だ。」

「ええっと、何分初めての事ですので、とても緊張致します。」

「気軽に・・こう見た感じで良い。」

「見た感じ・・・『仮「仮面以外で」』」

「・・・・シュヴァルツ、シュヴァルツさんで如何でしょう?」

「シュヴァルツか。良し、今日から俺は『シュヴァルツ』だ。よろしく頼む、ユリィ。」

「はい。よろしくお願い致します。『シュヴァルツ・デ・ショウカ』さん。」


・・・・そっちも、使うのか?

しかも『デ・ショウカ』って、何で自分の名前に自分で疑問を持たないといけないんだ?

自己紹介の度に、シュヴァルツ・デ・ショウカって言わなくちゃならないのか?

こんな自己紹介したら相手から『いや、知らねーよ。』って返されるぞ。

俺が相手だったらそう返すぞ?



俺はユリィに訂正を求めようとしたのだが

上機嫌で俺の周りを飛び回るユリィの姿を見ると、『まあこんな名前でも良いか』と勝手に納得し訂正を求めるのを止めた。



「ユリィ、シュヴァルツって『黒』って事か?」

「はい、全身が黒いですのでシュヴァルツです。とっても、お似合いの名前です♪」


それじゃ、俺がこの鎧を脱いだらシュバルツじゃ無くなっちまうんじゃないのか?















俺とユリィは現在、世界的大企業『モノポリス社』がある都市『マキナス』に向っている。

ユリィのお家がある大陸に向う為の定期船がマキナスから出ているらしい。

最初はトランスゲートと云うワープ装置を使うはずだったのだが、トランスゲートを使う為には特殊なマジックアイテムが必要で

俺はそれを持って無いから仕方が無い。

勇者さんは持っているらしいが、今更里に戻って黙って借りて来る訳にも行かず

俺達はモンスター退治や商隊の護衛でコツコツとお金を貯めながら旅をしていた。


「おい!!そこの『怪しいヤツ』動くな。武器を棄てろ!!」


で、マキナスに着いた途端に警備兵らしき連中に囲まれました。


「ユリィ、何だあいつ等は?」

「モノポリス社の警備兵です。」


まあ、旅をしていると良くある事だ。

今までもいろんな国で警備兵に囲まれて、詰め所に連れて行かれた事があった。

とりあえず、俺は武器を棄てて両手を上げアピールをした。


「大丈夫だよ。全然怪しく無いよ?」

「「「どっから如何見ても、怪しいわ(です)!!!!」」」


俺の精一杯のアピールに対し、その場に居た全ての者が突っ込みをいれた。ちなみに、ユリィもその一人だった。












警備兵によって詰め所に連れて来られた俺はその日の内に釈放された。

少なくとも二、三日は取り調べられるもんだと思ってたのだが、・・・・今までの経験上は。


「シュヴァルツさん、大丈夫でしたか?」


自由を噛み締めている俺の所に、心配そうなユリィが飛んできた。

そう云えば、いつもは拘束された時にユリィは俺の横で必死に俺が危険人物じゃ無い事を警備兵に訴えているのだが(怪しいと云う事の否定はしてくれないが)

今回は俺が拘束されると同時にどっかに飛んで行ったな。

何でだ?











選択肢1 怪しいヤツを見捨てた。

選択肢2 怪しいヤツに愛想が尽きた。

選択肢3 新しいパートナーを見つけに行った。


























ここは、選択肢4だ。

この町に知り合いが居て、その人に俺の無実を訴えに行った。

正解が4番であってくれ。


「総帥より貴方をお連れする様にとの指示を受けています。付いてきて下さい。」


ユリィと一緒にやって来た若干偉そうな警備兵に、後に付いて来る様に促されて俺は付いていく事にした。

それにしても、この偉そうな警備兵は一体なんだ?色違いの制服を着ているし、警備兵の亜種か?


「シュヴァルツさん、遅れて申し訳ありません。実はモノポリス社に知り合いがおりまして、その方にシュヴァルツさんの釈放を頼みに行って来たのです。」

「知り合い?」

「はい、モノポリス社の総帥をしております。」

「総帥?一番偉いの人か?」

「はい。」


ユリィの人脈は俺の思っていた以上に広いらしい。

流石、勇者と一緒に旅をしていただけはある。


「これが・・・モノポリス本社?」

「はい。」

「デカイな。」

「私も初めて見た時は驚きました。」

「此方です。」


俺は初めて見たモノポリス本社の大きさに驚きながら先導している警備兵の後を付いて行った。

本社内部に入り、エレベーターで総帥室まで案内された。

途中でユリィに


「この箱はエレベーターと云って、上下に移動する乗り物なのですよ。」


と、エレベーターの説明をされた。

それくらいは、知っていたのだがユリィの気分を壊すのもアレなので素直に驚いておいた。

そして、エレベーターは総帥室に到着した。

そこで、俺が目撃したモノは俺の今までの常識を破壊する危険なモノでだった。


「初めまして。モノポリス社の総帥を務めているアニータです。」


アニータさん、貴女のその胸に付いている物体は何ですか?

オッパイなのですか?デカ過ぎでしょう。

俺は今まで、巫女さんのオッパイをデカイと思っていた。まるでそびえ立つ山の様にデカイと。

だが、貴女のソレに比べたら巫女さんのオッパイは山では無く、せいぜい丘だ。

アニータさん、貴女のソレってサイズは一体いくつ何ですか?

俺の測定器では100が限界だ。貴女のソレは俺の測定器では測定不能。

少なくとも110以上としか分からない。


「・・・あの?如何かしましたか?」

「はっ、いえその、何でもありません。私はシュヴァルツと申します。」

「シュヴァルツさんですか、この度は弊社の警備の者が迷惑を掛けた様で申し訳ありませんでした。」

「いえ、警備の者からすれば当然の対応です。誉められこそすれ、非難される謂われは無いと思います。」



俺は一瞬で、アニータさんの前に移動すると彼女の手を取りながら言葉を続けた。


「!!そっ・・・そう言って頂けると幸いです。何か困っている事がありましたら何でも仰って下さい。」

「それでは、早速一つお聞きしたいのですが。」

「はい、何でしょう?」

「アニータさんの胸のサイズは幾つなのでしょうか?少なくとも110以上としか分からないので・・・・。」


俺は至近距離から、アニータさんのオッパイ凝視しながら質問した。

俺の問いに対し、アニータさんは固まって仕舞う。

仕方が無いので、至近距離から測定器を発動する。


「111、112、113、・・・114、馬鹿な!!まだ上がるだと!!?」


次の瞬間


「妹から離れろ!!変質者め!!」


ビュン!!


ザシュッ!!



俺の側を赤い風が通り抜け俺は意識を手放した。















その日、俺はモノポリス社の精鋭部隊『赤狼隊』隊長の実力を身を持って体験する事になった。



















[24765] 第四話 弱点
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/10 01:08














ポッドに連行されている俺の前にソイツが現れた。

恐らく俺が連れ出そうとした大地の巫女の一人だろう。

俺に判るのはそこまでだ。どの巫女かの判断までは出来なかった。


「貴方は最低です。」


バチン!!


そう言うとソイツは、俺に平手打ちを喰らわせて来た。


「最低なのは理解しているさ。それより、一発だけで良いのか?俺はこれから生きたまま棺おけに埋葬されるんでね。

 もう会う機会ないさ。それに、お互いに頭の中のクリーニングをされる予定だ。もし、奇跡的に再会してもお互いに分から無いぜ。」

「・・・。」

「第一、俺はあんたがどの巫女なのかも分からない。」


バチン!!


俺の言った事に反応し、巫女はもう一発俺に平手打ちを喰らわせて来た。


「貴方は・・・最低です。」

「最低でも何でも良いさ、出来れば俺を覚えていてくれ。」

「・・・。」

「そして、出来れば俺もアンタを忘れない様に・・・いや、何でも無い。」


そこで、会話が途切れた。俺は周りの者に促され、棺おけに向って歩き出した。


「剣を!!剣を持ってきます。貴方の剣です!!」


俺の背中に向って、巫女は泣き声交じりの叫び声を上げた。

その声で、俺はソイツが誰なのか理解した。


「おい!!アソコに埋めたアレはアンタにやる。俺の形見だ、大事にしろ。」


俺は背後を振り返らずに、巫女に声を掛け、棺おけに向って歩き出した。










第四話 弱点





赤い辻斬りに襲われてから二週間たった。

現在俺はモノポリス社の医療施設に入院している。

一時は意識不明の重態になって、三日間ほど生死の境を彷徨ったらしい。

お陰で、巫女さんに罵倒されながらビンタされる夢を見た。俺の隠れた願望か?



現在は特にする事も無く、日がな一日ダラダラと過ごしている。


俺を斬ったヤツもここまで酷い傷になるとは思っていなかったらしく

現場は大混乱に陥ったらしい。

もしも、俺が死ねば大スキャンダルになりかねない為

俺はこうやって最先端の医療を無償で受ける事が出来ている。


ちなみに、現場では最悪の場合(俺が死んだら)俺を本社の中庭に埋めて証拠を消す準備もしていたらしい。




「で、君の着ていた鎧を調べたのだが・・・アレは普通の鎧では無いな。」

「まあ、確かにアレをみて普通の鎧と思うヤツは居ないな。」

「そういう意味では無いのだが・・・まず、あの鎧だが自己修復機能が付いていた。」

「自己修復?」

「先日、シュヴァイツァー様がつけた鎧の傷が自動的に修復された。」


シュヴァイツァーってのは、先日俺を斬り付けたヤツで

赤狼隊の隊長で、アニータのお兄さんでもある。


「後、鎧の材質なのだが『スクリーパー』の皮膚によく似ている。」

「スクリーパーの皮膚だと?」


スクリーパーってのは、2000年前にインフィニトーが人類を絶滅させる為に生み出した生物兵器だ。

見た目はナメクジだ。強い種類だとエイの様な姿らしい。

俺は旅の途中に何度かナメクジのスクリーパーに遭遇した。

その時は一緒に居た商人の護衛や警備兵達と協力し、たこ殴りにして何とか倒したのだが・・・。


「スクリーパーが特殊な皮膚をしているのは知っているね。」

「いや、知らない。・・・それで、剣が通り難かったのか。」

「そんな事も知らずにスクリーパーと戦ったのかね?まるで、自殺行為だぞ。

 まあいい、今回はその事がアダになった様だがね。」

「どういう事だ?」

「シュヴァイツァー様は、対スクリーパー用の特殊な装備を持っているのだ。」

「つまり、その装備の前では俺の鎧は紙切れ同然って事か?」

「そこまで酷くは無い。せいぜい、布切れ同然だ。」


たいした違いは無いと思うが。


「そういえば、スクリーパーと戦った時なんだが、攻撃を受けなかったな。」

「攻撃を?」

「ああ、俺は至近距離から斬りつけまくっていたんだが・・・一度も攻撃を受けなかった。」

「ふぅむ、もしかして鎧の効力なのかも知れないね。もう少し、詳しく調べてみる。」

「じゃあ、お願いします。」


専門的な事は専門家に任せます。




入院は暇だ。基本的にはユリィが話し相手になってくれるのだが

ユリィも一日中俺の側に居る訳にはいかず

時々、フワフワと飛んでいってしまう。

だが、今日はアニータさんがお見舞いに来てくれた。

ユリィでは無く、俺の心がフワフワと飛んで行ってしまいそうだ。


「お加減は如何でしょうか?」

「ええ、大分良くなりました。」

「所で、一つ聞いても宜しいでしょうか?」

「はい。」

「その仮面は何故外さないのですか?」

「これは外れないのです。これから話すのは極秘事項です。秘密にして貰えますか?」

「・・・はい。」

「実は私が住んでいた大地の里は・・・今は大地の里では無いのです。」

「大地の里では無い?」

「はい、今は数多の妖怪が徘徊する妖怪の里なのです。」

「この仮面は妖怪『仮面女』にやられたのです。その仮面女の呪いでこの仮面は外す事が出来ないのです。」

「・・・・そんな。」


あっ、信じてるぞ。この子。


「それだけでは無いのです。」

「新たな妖怪『クワ女』が出現したのです。」

「クワ女?」

「クワを引き摺りながら里中を徘徊し、見つけた男をそのクワで思いっきり・・・・。」

「かく云う、私も一度酷い目に遭いました。」

「なんて事を・・・。」

「今現在はユリィの勇者さんが、そのクワ女を里内に繋ぎ止めているので被害は留まっているのですが。」

「それで、メークリッヒさんはユリィさんと一緒じゃないのですね。」


アニータさん。本気で信じてる。

そこにユリィが戻ってきた。


「ただ今戻りました。あれ、アニータさん。来ていらしたのですか?」

「ユリィ、お帰り。実はアニータさんにこの仮面の事を話してたんだ。」

「仮面?じゃあ、あの仮面女の話を?」

「仮面女!!やっぱり、存在するのですね。」


ああ、ユリィの所為でアニータさんが変な誤解をしている。


「後、その後のクワを持った女性の話も・・・。」

「シュヴァルツさんがクワで殴り倒された事ですか?」

「やっぱり、本当だったんですね?」

「はい、私が見てました。」

「そのクワの女性は今どうなっていますか?」

「今は勇者様と一緒にいます。ですので、私はシュヴァルツさんと二人で旅をしているのです。」


ユリィの言っている事は間違っては居ない。

ただ、お互いの認識にズレがあるだけで・・・・まあ、面白いから良いか?

その後、アニータさんは「近い内に部隊を編成して」とか、ブツブツ良いながら帰って行った。


「アニータさん、どうかなさったのでしょうか?」

「勇者さんの事が心配なんだろ。」


俺も早く退院したい。








結局、俺に退院の許可が出たのは事件から一月ほど経ってからだった。

で、本日退院だ。

それにしても、総帥直々のお迎えとは恐れ入ってしまう。


「この度は、兄が大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

「いえ、悪いのはシュヴァイツァーです。アニータさんやモノポリス社に責任がある訳ではありませんので謝罪は無用です。」

「・・・・。」


平謝りなアニータさんに対し、主犯の男はだんまりを決め込んでいる。


「今回の事で、わが社は出来る限りの事をさせていただくつもりです。何でも仰って下さい。」

「何でもですか?」

「おい、弱みに付け込んでアニータに何かしようとしたら・・・分かっているな?」

「兄さん!!」


なにコイツ?謝るどころか脅迫してきやがった。

仕方が無い。矛先を代えるか。


「では、シュヴァイツァーさんをお兄さんと呼ばせて貰っていいですか?」

「・・・貴様。」

「兄さん、止めて下さい。」


シュヴァイツァーが剣を構えたので、俺は素早くアニータさんの背後に隠れ、シュヴァイツァー口撃を加える。


「大体、名前が被ってんだよ。それに、シュヴァイツァーの癖に何で赤い服着てんだよ。黒にしろよ。

 俺は黒いの着てるぞ。赤いのが好きならロートにしろよ。」

「・・・・表に出ろ。少し稽古を付けてやる。」


シュヴァイツァーの挑発にしたがって、剣を持って外に出ようとすると

アニータさんとユリィに止められた。


「シュヴァルツさん、お止めになって下さい。まだ、病み上がりではありませんか。」

「そうです。兄には私の方から言って聞かせます。」

「大丈夫だ、軽い準備運動だ。」


だが、そんな二人に軽く返事をして俺はシュヴァイツァーの所に行く。


「逃げずに良く来たな。」

「なぁに、軽い準備運動さ。」

「言って置くが、アニータの婿の条件は俺を倒せる事だ。」

「つまり、アンタに勝てば結婚して良いって事か。」

「勝手に決めないで下さい!!」

「まあ、最終的な条件はアニータがプロポーズを了承するかどうかだがな。」

「アンタは壁だ。」



ギィッン!!



その一言が合図になり、お互いに剣を抜き相手に斬りかかった。





















「決着だな。」


約三十分後、全身に切り傷を負って片膝を地面につき、肩で息をしている俺と

ほぼ無傷で軽く汗をかいた状態で俺に剣を突きつけているシュヴァイツァーが居た。


「こっちは病み上がりだ。勝てるわけ無いだろ?」

「軽い準備運動じゃ無かったのか?」


不敵な笑みを浮かべて俺を見下ろすシュヴァイツァーに対し俺はささやかな反撃を返した。


「ああ、そうだ。軽い準備運動にはなっただろ?」

「なるほど、確かにシュヴァイツァーさんの準備運動にはなりましたね。」


一番最初に俺の言った事の意味を理解したのはユリィか。

その後、シュヴァイツァーも意味を理解した様だ。


「フン。」


クルリと俺に背を向けると質問をして来た。


「おい、貴様。アニータと結婚したいのなら俺に勝手からにしろ。」

「わかってる。」

「最後に聞いておく。アニータの何処を気に入ったのだ。」


愚問だな。

この世でもっとも愚かな質問の一つだ。

もちろん、答えは一つだ。


「愚問だ。俺が気に入ったのはオッパイだ!!」


ふと後ろに気配を感じ振り返ると満面の笑みを浮かべたアニータさんが居た。


「アニータさん?その手に持っているのはイスですか?イスは座る為の物ですよ?持ち上げて使う物じゃありませんよ?」

「シュヴァルツさん、既製の装備に頼る事は良くないと思うんです。

 必要な物が無ければ代用できる物を見つける様な広い視野が総帥として必要な条件だと私は思うんです♪」

「そ・・そうですね。」

「クワが無ければ・・・・イスで殴れば良いじゃない♪」



ブンッ!!


ゴシャ!!












その日、俺は膠着した固定観念は恐ろしいが発想の転換も結構恐ろしい事を知った。
















「ユリィさん、シュヴァルツさんっていつもあの様な感じなのですか?」

「普段はとても優しい方なのです。子供達と遊んであげたり、お年寄りに親切にしたり・・・とても優しい方です。

 ・・・・ただ、女性の大きな胸が大好きなんです。後、ハンサムな男性が嫌いらしいです。」











[24765] 第五話 油断
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/11 01:53














「隊長、本日の戦闘はコチラの敗北。指揮官だったコマンダー13も戻りませんでした。」

「・・・アイツがねぇ、イーリスは戻って来たのか?」

「はい、無事帰還いたしました。」

「ふぅん、今頃は枕を濡らしてるな。コマンダー13・・・優秀だったが、死んだか。それとも・・・。

 おい、今回の敗因は何だと思う?」

「敗因でしょうか?恐らく、大地の巫女の強さが予想以上だった事では無いでしょうか?」

「それもあるか。相手の戦力を過小評価し、コッチの戦力を過大評価した。こんな所か?

 そして、俺の部隊に声を掛けなかったのも原因だ。まあいい。俺達は奴等を過小評価しない、絶対にだ。」

「はい。」

「星は違えど、大して違いは無いんだ。その証拠に俺達と奴等の間には子供も作れる。生物学的には同じといっても良い。

 奴等は俺達と同じだ、手強い。油断はするなよ。」

「はい。」


(それにしても、あの甲斐性無しは本当に死んだのか?もし、生きて戻ってきたらその時は・・・・コッチも動けるようにして置くか。

 インフィニトーの対応で全てが決まる。余命幾ばくか。死ぬのは俺か、それとも・・・・。)




















第五話 油断





アニータさんのアグレッシブルな行動によって俺の入院は一日延長したが

次の日には無事に退院できた。

モノポリス社の研究所から帰って来た黒い鎧を久しぶりに着て、ユリィと一緒に外の大陸行きの定期船に乗り込む事になった。

見送りに来たシュヴァイツァーが俺に対スクリーパー用の装備をくれた。

アイツは案外良いヤツなのかも知れない。

アニータさんも見送りに来てくれた。

昨日の非礼を謝って来たのだが、俺はソレを快く許すと妖怪イス女の話を外の大陸でも広める事を約束したが

アニータさんが泣きそうな顔になったので止めました。

オッパイの大きい女性を泣かすのは、この世で最も許されない罪の一つだ。





「それで、何処に向うんだ?」

「はい、先ずはヤージェン村を経由してトトゥア村に向いましょう。」

「ヤージェン村だな。」


この大陸・・・ユリィはゴートランドと呼んでいたが

ゴートランドの事を俺は良く知らないので道案内等は全てユリィに任せた。

途中、例によって何度も警備兵に囲まれたのだがユリィのお陰で何とかなった。

こっちの大陸でユリィは、かなりの有名人だった。

何でもユリィは『クイーン・オブ・ピクシー』と呼ばれる称号を持っているらしい。

文字通り、妖精コンテストで何度も優勝している一番凄い妖精って事だ。


ちなみに、俺に対する彼らの認識はユリィの勇者・・・・・では無く

悪さをしない様にユリィが見張っている危険人物って感じだ。






「ここがヤージェン村か。」

「はい。」

「とりあえず、今日はもう遅いから宿に向うか?」

「そうですね、出発は明日にした方が宜しいでしょう。あっ、宿は此方です。」


俺はユリィの案内で宿に向った。

扉を開け、宿に入った俺達に


「あっ、ユリィ?久しぶり。」


女の子?の様な声が掛けられた。


「ノーラ!!お久しぶりです。」


声のした方を見ると、妖精が居た。

ユリィ以外の妖精は初めて見たな。

で、その妖精さんは俺を見た後、固まったが・・・直ぐに再起動した。


「ユリィ・・・・此方の方は?」

「初めまして、ユリィと一緒に旅をしてる『シュヴァルツ・デ・ショウカ』です。」

「シュヴァルツさんで宜しいんですか?」

「はい、シュヴァルツです。」

「ええっと、私はノーラです。」

「ノーラさん。」

「ノーラで良いです。」


この妖精さんはノーラと云うのか。

ユリィとは雰囲気が大分違うな。


「ノーラは物に宿った強い思いを読み取る事が出来るのです。

 宜しかったらシュヴァルツさんも、何か持っている物を読んで貰っては如何でしょうか?

 記憶が戻る切っ掛けになるかも知れません。」

「思いの宿った物?そんな事言ったって・・・俺が最初から持ってた物は

 この剣位しか無いが・・・。」

「じゃあ、それをちょっと貸して。」


そう言うや否や、俺の返答を聞かずにノーラは俺の双剣から思いを読み取り始めた。

ノーラの読み取ったイメージが俺の頭の中に流れ込んでくる。


これは・・・巫女さんだ。

巫女さんが俺の剣を抱き締めながら泣いている?

どういう事だ?


「これは、イリスさんでしょうか?」

「ユリィも見たのか?」

「はい。イリスさんが泣いていました。・・・シュヴァルツさんは、以前イリスさんを泣かせた事があるのですか?」

「・・・もっとこう、全身で感情をぶつけて来る様な泣き方をされた事はあったが、こんな風に泣かせた事は無いはずだ。」


結局、俺に判らない事が一つ増えただけだった。




















ヤージェン村を発ち、しばらく陸路を行った後で船に乗る

更に洞窟を抜けたら雪国だった。


「それで、あれがトトゥア村か?」

「はい。あそこには、あの愛くるしい生き物が居るのです☆」

「愛くるしい?」

「はい、ふとん犬です♪」


ふとん犬?

それよりもユリィさん?

さっきからテンションが可笑しく無いですか?






村に入った途端、ユリィは猛スピードでふとん犬?の居る方へ飛んで行った。

俺も必死に後を追うと、そこには見た事も無いような生き物がいた。


「ワフッ!!」


これが、ふとん犬?

そこには、掛け布団を背中に掛けた犬が居た。

近くに居たふとん犬の頭を撫でつつ良く観察してみる。

これは毛皮なのか?

ふとん犬を抱き上げ、お腹を見ると・・・ふとん部分と犬の部分が結合している。

つまり、このふとんは犬の毛皮であり、犬の一部だった。


「シュヴァルツさん!!何をなさってるのですか!?モモちゃんを苛めないで下さい!!」


ユリィさん、ちょっと怖いです。落ち着いて下さい。


「モモちゃん?このふとん犬の事?・・・・いや、苛めて無いですよ。余りにも可愛かったから抱っこしただけだって。」

「可愛い?シュヴァルツさんにもモモちゃんの可愛さが分かりますか?

 モモちゃんは私が一生懸命育てたチャンピオン犬なのです。」

「チャンピオン?ふとん犬のコンテストとかがあるのか?」

「それについては私が説明しよう。」

「ハゼゴロウさん!!お久しぶりです。」

「やあ、クイーン・オブ・ブリーダーのユリィ君。久しぶりだね。」


ユリィに変な称号が追加された。


「所で、君はふとん犬を見るのは初めてかね?」

「はい。」

「では良い機会だ。私とこのユリィ君で、ふとん犬の生態と魅力について説明しよう。」


俺はそれから日が暮れるまで、この二人組みにふとん犬についての話をされる事になった。

それにしても、俺の仮面はスルーなのか?このおっさん。





ふとん犬の講義に付き合わされ、日も暮れたので今日はこの村に泊まる事になった。

そういえば、宿屋に妖精さんが居た。

名前はミランダと言うらしい。

簡単な自己紹介は済ませたが、特に話す事は無かったのと講義の疲れもあった為、俺は早々に部屋に閉じこもって休んだ。



















「ミランダ、少し宜しいでしょうか?」

「一緒にいたシュヴァルツと云う人間の事か?」

「はい、時の流れを読む事に長けているミランダならば分かると思うのですが

 シュヴァルツさんから時の歪みを感じるのです。大地の里に居た時から、多少の歪みはあったのですが・・・・。

 この大陸に来る直前からその歪みは大きくなり始めたのです。」

「確かに歪みは感じたが、そこまで大きくないと思うのだが・・・・。」

「ゴートランドについてからは、少しづつ歪みが収まってきました。私にはこれ以上詳しくは分からないのです。

 そこで、ミランダに一度詳しく見て貰いたいのです。」

「わかった、明日調べさせて貰う。ただ、本人にも一度説明して置いた方が良いだろう。」

「分かりました。では、明日よろしくお願いします。」
















「シュヴァルツさーーん、起きて下さい。」


朝っぱらからハイテンションなユリィに起された俺は、朝食を食べる間も無く

何やら難しい話を聞かされた上に、昨日知り合った妖精のミランダに色々と体中を調べられる事になった。

何でも俺の体から時の歪み?が発生しているらしい。


「ふむ、終わったぞ。ユリィ。」

「それで原因は分かりましたか?」

「いや、原因は分からなかったが・・・どうして、一度拡大した歪みが収縮したのかは分かった。

 その黒い鎧が歪み収縮の原因だ。」


いつの間にか、スクリーパーモドキ鎧に何か新しい能力が加わった。


「ミランダさん、その歪みなんだが・・」

「ミランダで良い。」

「ミランダ、時の歪みが大きくなるとどうなるんだ?」

「最悪の場合、お前は消滅する。」

「消滅?」

「そうだ、時の歪みをこれ以上広げたく無ければ、なるべくその鎧を着ていた方が良いだろう。

 他にも強い衝撃等を受けるのも不味い。」

「衝撃?頭にか?」

「いや、肉体にでは無い。心・・・魂に対する衝撃だ。」

「心に衝撃。つまり、俺がユリィに告白をしてフラれると死ぬって事か?」

「シュヴァルツさん!!」

「お前がユリィに心の底から惚れていて、フラれる位なら死んだ方がマシだと思える様だったら・・・・消滅する可能性もある。

 まあ、そういった事よりも自分の存在対する精神的な衝撃に注意しろ。酷く絶望したり、心の底から自分の存在を疑ったりしたら消える事になる。」

「つまりは平穏無事な日常を享受しろって事か。」

「ああ、それが最も良い解決方法だ。」

「・・・努力してみる。」


今日は朝っぱらから重い話を聞かされてしまった。




















陳腐な言い方だが、居なくなってから初めてその人の有り難味が分かると云う事がある。

今の俺の状態は正にそれだ。

トトゥア村を出立した俺達は途中でポトラドの里に寄り、そこでトランスゲートを使用する為のマジックアイテムを分けて貰った。

ただ、トランスゲート自体は現在調整中の為、使用は出来ないそうだ。


そして、この大陸に幾つか存在する妖精の集落でユリィの生まれ故郷がポトラドの里の近くにあるらしく

俺は一旦ポトラドの里でユリィと分かれる事になった。

最初の内は大人しくポトラドの里でユリィを待っている積りだったのだが

段々と暇を持て余した結果、ポトラドの里に近いシリルティア王国の王都フェルメンティアまで観光に出かける事にした。


一応、貰った魔法の地図を見ながら進んでいるので迷う事は無いはずなのだが

見知らぬ地に一人で居るだけで段々と心細くなって来る。

そんなこんなで、トボトボと歩いていると行き成り戦闘に出くわした。

戦っているのはシリルティア王国の兵隊と思われる一団とスクリーパーの集団だ。

兵士の一団を率いているのは巨大な鉄扇を使って戦っている女性だった。しかも、かなりの美人でオッパイも大きい。


「シェリス様!!このままでは突破されます。増援を・・・。」

「駄目だ、他の所も現状で手一杯だ。他の部隊から増援を呼べばそこを突破される。何とか現有戦力で死守するのだ!!」


戦況は兵士達が不利だ。見慣れたナメクジ型スクリーパーが数体と初めて見るタイプのスクリーパー(エイの様なヤツ)が1体。


「助太刀する!!」


俺はそう言うと近くに居たナメクジ型スクリーパーに斬りかかる。


「助太刀感謝する。」


美人の隊長さんに声を掛けられた。テンションが更に上がって来た。

俺の鎧はスクリーパーに対してステルス機能を発揮する。だから、スクリーパーからの攻撃を気にしなくて済むし

シュヴァイツァーから貰った対スクリーパー用装備。透徹のジェム(アクセサリーの様な物)を持っている。

この透徹のジェムを使うことでスクリーパーの特殊な皮膚を、まるで紙切れの様に切り裂く事が出来る。

今の俺は正に、対スクリーパー用の兵器と言っても過言では無い。


「何だ、あの怪しいヤツ。メチャクチャ強いぞ。」

「怪しいが強い。何者だ?」

「新たなスレイヤーか?」


俺の活躍によって戦況は少しづつ此方が有利になりつつある。

が、まだ一番強いと思われるエイ型スクリーパーが1体とナメクジ型も1体残っている。

美人の隊長さんは仲間に援護を受けながらエイ型のヤツと戦っているのだがハッキリ言って分が悪い。

だからと言って、美人の隊長さんが弱いと言う訳では無い。

スクリーパーは2000年前にインフィニトーが人類抹殺の為に生み出した生物兵器。

つまりは、人類の天敵とも言える生き物だ。そんなヤツを相手に特殊な装備も持たずに戦えるだけで充分強い。


俺は残ったナメクジを片付けてから、美人の隊長さんを援護する為にナメクジに斬りかかったのだが


ドガッ!!


横から大きな衝撃を受け、吹き飛ばされた。














戦場に観客席は無い。だが、俺は油断をしていた。

今日、俺は戦場での油断は死を招く事を学んだ。

















[24765] 第六話 評価
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/12/18 00:57












「で、コマンダー13は生きていたのか?」

「はい、現在インフィニトー様と一緒に船の内部に侵入して来た大地の巫女を迎撃しています。」

「・・・・そうか、こっちの行動は予定通りに行うぞ。俺達が生き残るにはインフィニトーを何とかするしかねぇ。」

「はい。」

「ヤツが裏切っていれば俺としては随分と楽になるんだが・・・こればっかりは賭けだねぇ。

 まあ、精々大地の巫女が上手くヤツをたらし込んでくれている事を期待するか。」



















第六話 評価





「シュバルツさんは居ないんですか?」

「ああ、仮面の彼なら先日王都の観光に行って来ると言って出て行ったよ。」

「そんな・・・子供じゃ無いのですから、少しは落ち着いて待っていて下されば良いのに。」


そう言うと、ユリィはポトラドの里を飛び出し王都フィルメンティアに向って飛んで行った。













不意打ちを受けた俺は一瞬意識が飛んだが、直ぐに意識を覚醒させる事には成功した。

だが、体のダメージは深刻だ。ハッキリ言って戦闘続行は不可能だ。

立つ事も間々ならない状態だ。


「大丈夫か!!今、助けるぞ。」


やられた俺を助ける為に、美人の隊長さんがスクリーパーを牽制しながら俺の側へ駆けつけて来る。

うん、近くで見ても美人だ。

俺はこの美人さんを救う為、例のジェムを装備から外すと駆け寄って来た美人さんに渡した。


「これを使ってくれ。」

「これは?」


俺は手短にジェムの説明をしようと思ったのだが、エイ型のスクリーパーがこっちを狙っているのが目に入った。

正確には俺では無く、この美人さんを狙っているはずだ。

このままでは美人さんがやられてしまう。

良いのか?それで良いのか?

いや、良くない。美人でオッパイの大きい女性がやられそうになっているのをみすみす見逃したとあっては俺の沽券に関わる。


「危ない!!美人さん。」

「きゃっ!!」


ぽにょっん♪


ドガッ!!


俺は美人さんを突き飛ばすと同時に、スクリーパーの攻撃を受けて吹っ飛んだ。

美人さんを突き飛ばした時に、偶然触ってしまった彼女のオッパイの感触の余韻を手の平に感じながら

俺は意識を手放した。






















・・・・あれ?何処だ此処は?


「あっ、気が付いたか。ここはシリルティア王国の王都フェルメンティアだ。」

「・・・美人さん。よかった、無事だったんですか。」

「びっ・・美人さん?そういえば、自己紹介がまだだったな。私はシリルティア王国の近衛騎士団長シェリス。後、一応この国の王女でもある。」

「おっ・・王女様!!そうとは知らずに数々のご無礼、平にご容赦を!!」


ヤバイ、王女様だったとは!!

如何しよう、無礼なことを言ったら死刑だ。

いや、先ずは土下座を!!

俺は悲鳴を上げる体にムチをいれ土下座を強行した。


「いや、まだ寝ていなくては駄目だ!!それに、謝られる様な事をされた覚えは無い。

 むしろ、謝らなければならないのはこっちの方だ。貴方の渡してくれたこのジェムのお陰でスクリーパーを撃退する事に成功した。

 それに・・・貴方には二度も助けられた。良ければ貴方の名前を聞かせて欲しい。」


「失礼しました、私はシュヴァルツ・デ・ショウカと申します。」

「シュヴァルツさん。本当に有難う御座いました。」

「さん付けは止めて下さい。どうかシュヴァルツと呼んで下さい。」

「・・・では、そうさせてもらいます。」


シェリスさんの話しでは此処は王都フェルメンティアの療養所。

戦闘中に負傷した俺をシェリスさんはずっと看病していてくれたらしい。

シェリスさんは二度も助けられたって言っていたのだが、なにやら少し勘違いをしているっぽい。

二度目に俺が受けた攻撃は確かにシェリスさんを庇ったが

最初に俺が受けた攻撃はこっちの不注意が原因だ。

つまり、シェリスさんを狙っていたスクリーパーの攻撃射線上に俺が入り込み

結果、シェリスさんの代わりに攻撃を受ける事になったって事が正しいと思う。


「それで、これは借りていたジェムだ。」


そう言って、シェリスさんが俺に渡して来たのは例のジェムだった。


「そのジェムのお陰で、スクリーパーを撃退する事が出来た。失礼だがシュヴァルツはこの大陸の者では無いな?」

「はい。最近、別の大陸から来ました。」

「やはり、そうか。その様なスクリーパーに有効なジェムは初めて見たので、もしやと思ったのだが・・・。

 あちらの大陸ではその様なジェムが一般的に普及しているのか?」

「いえ、そういう訳でもないです。あっちでもこのジェムは貴重な物です。」

「そうなのか・・・。もし、このジェムが大量にあればスクリーパーの被害をもっと減らす事が出来るのだが。」

「・・・すみません、このジェムは貰い物なので差し上げる事は出来ませんが・・・あっちに戻った時に同じ物を探して見ます。

 もし、手に入ったらそれを差し上げます。」

「・・・重ね重ね申し訳ない。」


こっちとしては、物のついで程度で約束したのだが王女様にとても恐縮されてしまった。

流石に、王女様に無礼を働く訳には行かず・・・俺の方も紳士的な対応をせざるを得なかった。











スクリーパーにやられた俺の怪我だが、元々軽傷だったのか鎧のお陰なのか

それともシェリスさんの献身的な介護のお陰なのかは知らないが三日後には歩けるようになった。

若干体に違和感がある為、戦闘は無理だが街中を歩き回る位なら問題ない。

そんな訳で俺は今、シェリスさんに案内されながら街を歩き回っている。



「あの仮面の男が新しいスレイヤーか。」

「なんでも、一人で何体もスクリーパーを倒したらしいぞ。」

「シェリス様を庇って怪我をしたらしい。」

「見た目は怪しいのに中々の人物だ。」

「是非、我が軍に仕官して欲しいものだ。」



何かメチャクチャ噂されてる。


「凄い噂になっていますね。」

「あの時のシュヴァルツの活躍を見れば当然の事だ。」

「所で、さっきから皆が言ってるスレイヤーって何ですか?」

「スクリーパーを一対一で倒した者に与えられる称号の事だ。私も『ルーク・スレイヤー』の称号を持っている。」


スクリーパーには幾つかの種類がいる。一番小さいナメクジタイプの『ポーン・スクリーパー』

ポーン・スクリーパーより一回り大きいナメクジタイプの『ルーク・スクリーパー』

ナメクジタイプより強い、エイの様な姿の『ナイト・スクリーパー』

そして、ナイト・スクリーパーより一回り大きいエイタイプの『ビショップ・スクリーパー』


ちなみに、先日俺を吹っ飛ばしたヤツはナイト・スクリーパーだ。

俺達は周りの好奇の目に晒されながら街を練り歩いていると

子供たちがワラワラと寄って来た。

まあ、アレだな。王女様だけでも子供たちにとっては興味の対象なのに、一緒に仮面の男が歩いていれば子供たちの好奇心を刺激する事請け合いだ。

当然、王女様との関係や何故仮面を着けているのかとか色々と聞かれたので

例によって妖怪『仮面女』の話と妖怪『クワ女』の話をして置いた。

子供たちだけで無く、シェリスさんも悲鳴をあげて怖がっていた。

俺は行く先々の町や村で子供たちに怪談話を聞かせて回っていた所為か

話し方も随分と板についてきたと思う。



「所で、先ほどの話なんだが・・・・何処まで本当の事なんだ?」


シェリスさん、意外と怖がりなんですね。


「多少のスパイスは入っていますが、九割方は本当の事ですよ。」

「じゃあ、その仮面が外れないと云うのは?」

「本当です、試しにひっぱてみますか?」

「・・・じゃあ、少し。」


そう言うとシェリスさんは俺の仮面を掴み・・・全力でそれを引っぱる!!

顔が!!

千切れる!!千切れるって!!


「シェリスさん!!頭が、顔が千切れます!!」

「ああ、済まない。・・・本当に外れないんだな。シュヴァルツ。」

「はい、何でしょう?」

「動くなよ、今外してやる。」

「はうぃ?あの、シェリスさん?何を為さっているのでしょうか?そんな、鉄扇なんか振り上げて・・・。」

「大丈夫だ、仮面が外せないなら・・・・壊せば良いだけだ!!」





ブゥン!!


メキョ!!




その日、俺はシェリスさんが意外とお茶目☆な所がある事を知った。








「本当に済まなかった。どうしてもその仮面を外してやろうと思ってつい・・・、申し訳ない。」

「いえ、良くある事です。それに仮面を着けて良かった事もあります。」

「良かった事?」

「はい、実は私の素顔はとてもハンサムなんです。」

「ほお、そんなにハンサムなのか?」

「はい。一度、初対面の女性に抱きつかれた上にプロポーズをされた事がありました。」

「それは、一度素顔を見てみたいな。」






















先日、スクリーパーに受けた怪我は二、三日大人しくしていたら大分良くなった。

そろそろ、フィルメンティアからお暇しようと思う。



「そろそろ、旅の方を再開したいと思います。」

「そうか、残念だな。出来れば我が軍に仕官してくれればと思っていたのだが・・・。それで、これから何処に向うのだ?」

「そうですね、平和維持軍とやらを見学に行こうと思ってます。」


そんな訳で偶然に街中で見かけたシェリスさんにお別れを告げると旅を再開した。

・・・・それにしても、何かを忘れている様な気がするのだが・・・何だっけ?




















「そこの怪しいヤツ!!動くな、大人しく武装を解除して此方の言う事に従え!!」


何か久しぶりに聞いた台詞だ。

国境を抜けてしばらく経った頃、俺は平和維持軍の兵士らしき一団に取り囲まれた。

まあ、例によって武装を解除した後、彼らに平和維持軍の本部へと連行された。


「怪しいヤツが出たと聞いたのだが?」

「はっ、拘束し連行してきました。」


平和維持軍の基地らしきモノに連行された俺の前に、何か若いが偉そうな連中がやって来た。

先頭にいるのは妖精を連れた青年、その他にも大柄な青年が一人、若い女性二人がやって来た。


「なに?この怪しいヤツは!!絶対悪いヤツだよ!!」

「コリン、外見で判断するな。」


俺の姿を見た妖精が真っ先に口を開き、それを妖精を連れた青年が諌める。


「でも、絶対怪しいよ。」

「まあ、確かに怪しいな。」

「そうです、怪しいです。」

「怪しいヤツだ。」

「・・・皆。」


妖精が再度、俺に怪しいと発言しその発言に対して妖精のパートナーと思われる青年以外の面々が続いた。

その時、俺の中の何かが発動する。


「おい、お前ら。先ほどから聞いていれば人の事を怪しい怪しい言いやがって!!

 そんなに言うなら、怪しいって事で良いよ!!本当は怪しくないけどね!!怪しいって事にしといてやるよ。

 全然怪しく無いけどね!!」


「見るからに怪しいよ!!」


妖精が俺に真っ向から反論する。


「じゃあ、ソイツは如何なんだ!?そこのでっかいヤツ、何で海賊なんだ?何で海賊の格好なの?

 何?世界中の海を荒らしまわる予定ですか?俺よりその海賊を捕まえた方が世の中の為じゃ無いんですか?」

「なっ!!」

「それから、そこの黒い格好の女の子!!」

「ふぇ!!私ですか?」

「そう、君だ。何だその黒い悪魔っぽい格好は?俺に被ってるぞ!!」

「被ってないです!!」

「最後に貴女。」

「私か?」

「何ですか?その格好、その羽!!何で頭から羽が生えているんですか!?可笑しくないですか?

 何それ、飛ぶの?その羽で飛ぶんですか?崖から滑空して飛ぶんですか!?それとも、助走をつけて飛ぶんですか!?

 回転して飛ぶんですか!?身長は何センチですか?翼を広げると2.5メートルですか!?

 中型犬くらいなら攫って行くんですか?巣に持って帰るんですか?食べるんですか?

 逃げて!!ふとん犬達、平和維持軍の鷲が来たぞ!!食べられるぞ!!」

「・・・・・その口に用がある!!」

「何ですか、その鎌は?振りかぶったりして?鎌は草を刈るのが正しい使い方ですよ?」

「安心しろ、この鎌は草では無く・・・・命を刈り取る鎌だ!!」








ブンッ!!


ボグォ!!









俺はその日、人にやられて嫌な事を人に対してやるのはいけない事だと再認識した。




















「あれ?ユリィじゃないか、如何したんだ?」

「あ、ニナ。それにシェリスさんも。お久しぶりです。」


シリルティア王国の王都フェルメンティアに到着したユリィに声を掛けた人物がいた。

声の主は二名。シリルティア王国国王の妹で近衛騎士団長を務めるシェリスとシェリスのパートナー妖精ニナ。


「久しぶりだな、ユリィ。今日は一人なのか?」

「いえ、実は人を探しているのです。」

「人?もしかして、ユリィの勇者様の事?」

「違います、私の勇者様の事ではありません。今、私は勇者様とは別の方と旅をしていたのですが

 ちょっと目を離した隙に迷子になってしまって。」

「ユリィ、勇者様の事は放って置いて浮気?」

「違います!!ニナ、いい加減にして下さい。」

「おー怖い怖い。」

「ニナ、いい加減にしないか。」

「はぁーい。」

「それで、何か探し人の特徴とかは無いのか?」


二ナの所為で話しが進まない様子を見たシェリスがニナに注意をすると

とりあえずニナは黙り、シェリスはユリィに話を続けるよう促した。


「特徴ですか。えーっと、まず仮面を被っています。」

「「仮面。」」

「それから、黒い鎧を着ています。」

「「黒い鎧。」」


この時点でシェリスにはユリィの探し人が誰なのか検討が付いていた。

だが、次のユリィの一言でその考えを一気に白紙に戻さざるを得なかった。


「最後にオッパイです!!」

「「おっ、おっぱい?」」

「はい、オッパイです。オッパイが大好きなのです。」

「・・・・ユリィが壊れた。」

「可笑しいのは私ではありません。きっと、シェリスさんのオッパイを見てガーー!!と抱き付いて来て

 谷間に顔を埋めて、両手で揉みしだくはずです。」

「「・・・・。」」

「シェリスさん、その様な方に心当たりはありませんか?あっ、その人の名前はシュヴァルツさんです。」

「そんな変態に心当たりは無いが、黒い鎧を着ていたシュヴァルツと云う男には心当たりはある。」

「そうですか、きっとシェリスさんの前では猫を被っていたのですね。」

「猫を被っていたかは知らないが、仮面は被っていた。」

「それでシュヴァルツさんは何処に居ますか?」

「平和維持軍の方へ行くと言っていたな。」

「平和維持軍ですね?有難う御座いました。」

「ちょっと待ってくれ。今から向ったのでは行き違いになるかもしれない。

 何処か集合場所を決めてそこで落ち合ったらどうだ?私の方から平和維持軍へ知らせて置けば彼にも伝わると思うのだが?」

「・・・確かに、そうですね。それでは『トトゥア村で待っている』と伝言をお願い致します。」

「ユリィが壊れたユリィが壊れたユリィが壊れたユリィが壊れた。」

「・・・・・ニナ、戻って来い。」




























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