被告本人が全面否認し、動機などについて検察側の立証活動が不十分だったため、初めて裁判に関与した裁判員にとっては有罪という判断ができなかったのでは。だがこれだけの指紋やDNA鑑定結果など動かしがたい客観的証拠が複数存在する中、判決が「偶然の一致」と判断した点には疑問が残る。控訴審で真相を明らかにすべきだ。
逃走経路や計画性の有無など犯人像があいまいである以上、間接証明は普段以上に慎重でなければならないのに、立証が不十分だという三段論法だ。検察は被告に有利な証拠でも開示すべきだと踏み込み、証拠開示の在り方にも一石を投じた。また「70歳の被告がスコップを100回以上振り回せるか疑問」といった指摘は分かりやすく、裁判員の感覚が反映されたのではないか。
毎日新聞 2010年12月11日 東京朝刊