羽田空港:新滑走路開始へ管制官ら最終準備…誘導複雑化

2010年10月19日 12時19分 更新:10月19日 12時53分

21日から使用が始まる羽田空港のD滑走路(手前)。奥右はC滑走路、奥左はA滑走路=2010年10月19日、本社ヘリから長谷川直亮撮影
21日から使用が始まる羽田空港のD滑走路(手前)。奥右はC滑走路、奥左はA滑走路=2010年10月19日、本社ヘリから長谷川直亮撮影
※悪天時を除く。数字は1時間当たりの最大の離着陸数
※悪天時を除く。数字は1時間当たりの最大の離着陸数

 東京・羽田空港の新滑走路(D滑走路、2500メートル)の運用が21日から始まる。発着枠は現在の約1.5倍まで順次拡大、国際定期便も就航するなど利便性向上への期待は大きい。一方、空中で離着陸機の経路が交錯するポイントが増加し、地上でも滑走路を横断して別の滑走路へ向かうケースが増えるなど、管制業務は従来とは段違いに複雑になる。管制官やパイロットらは運用開始に向け、最終準備に追われている。【本多健】

 「出発機のジェット噴射による乱気流がおさまる時間を計算し、着陸機を誘導するのも難しいが、滑走路を横断する機体の交通整理が一番難しいかもしれない」。国土交通省東京空港事務所の幹部管制官は説明する。

 これまでは3本の滑走路のうち、南風の悪天候時以外は原則として、A、C滑走路の2本だけを利用し、離着陸の経路は交錯しなかった。だが、D滑走路新設で、北風時は3本、南風時は4本を同時に運用する。1時間あたりの離着陸は30機程度から40機に増えるが、離陸機と着陸機の経路が交錯するなどのポイントも多く発生する。

 例えば、4本を同時に運用する場合、D滑走路に着陸する航空機は、A、C滑走路からの出発機と経路が交錯する。千葉県上空でも、南方からB滑走路に向かう便と北方からD滑走路に向かう便が最低300メートルの高度差で交錯するポイントもできる。

 空中だけではない。B滑走路の着陸機に対してはA滑走路離陸機のジェット噴射による乱気流の影響が懸念される。国際線と国内線のターミナルが離れて建設されたため、C、D滑走路に離着陸する国際便はA滑走路を横断しなければならない。滑走路への誤進入も懸念され、ターミナルと滑走路の間の交通整理も難しくなる。

 国交省は今年1月、別々だった羽田、成田両空港の離着陸機の管制業務をほぼ羽田へ一元化。交錯の危険のある航空機について管制官に自動的に注意喚起するシステムや、滑走路に誤進入しないよう警告表示を出す案内灯などの設備も拡充し、D滑走路運用開始へ向けて手順の確認や訓練を繰り返してきた。

 世界有数の高さ117メートルを誇る羽田の管制塔では、地上の交通整理専門の管制席を二つ増やして4席にした。離着陸の許可を出す3席の管制官と相互に連絡を取り合い、着陸機の合間に出発便に離陸許可を出すシビアな運用が展開される。

 航空各社も、変更点の確認を研修等で徹底させるなどミス防止に躍起。再国際化で羽田に不慣れな海外のパイロットが増えることから、「想定していない飛行をするケースが増えるのでは」と懸念する声も。ベテランパイロットは「千葉県上空で交差する際の乱気流の影響など、安心して乗っていただけるかという課題もある。あらゆるケースを想定し対応したい」と話す。

top

PR情報

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド