ニュース:事件 RSS feed
気鋭の警察ジャーナリストに何が…黒木昭雄さんの死から見えてくるもの (5/5ページ)
ブログに記されたマスコミへの言葉
黒木さんの長男は3年前、海上保安庁に入庁し、今は茨城県の海上保安部で勤務している。NHKの「ふるさと一番」に最愛の長男が出演したときの写真を黒木さんは大切にファイルに入れ保管していた。黒木さんの長女は東京都内での勤務を千葉県内に替え、傷心の正子さんと同居を再開している。
「変節したな」−。私をしかった黒木さんの声が耳について離れない。岩手の事件とは別の要件で電話をもらった際、「今は国税担当で警察ではないから」という趣旨の返答をしたらこうしかられた。あのちょっと照れを含んだぶっきらぼうな声が聞かれないかと思うと切ない。岩手の事件に関しては全面的に首肯できないこともあったが、黒木さんの洞察力にはいつも驚かされた。まだ黒木さんにはやれることはたくさんあったはずだ。それが悔やまれる。
黒木さんが最後に警視庁で勤務した荏原署の上司だった人がこう言ったことがある。「彼はスーパー警察官だったよ。職務質問もうまくて優秀だった。刑事課に引くって話も相当あったんだけど、『あいつは危ないから』って声があってね。あぶない刑事(デカ)、そんな感じ。猪突(ちょとつ)猛進で、周囲が冷や冷やするタイプだったな」
警視庁という大組織を飛び出し、一匹狼のフリーランスの道を選んだ黒木さんの目からは、大手マスコミで禄をはむ私は歯がゆく見えたのかもしれない。
黒木さんは自身のツイッターに岩手県の殺人事件に関する警察庁作成の書類などを1日午後0時56分にアップした後、末尾にこう記している。
「最後にマスコミ諸君。この辺で警察の顔色をうかがうのはやめにしませんか。出版不況だの広告収入の激減だと言われていますが、このままだと報道の信頼も失うことになります。国民は信頼できるマスコミとそうでないマスコミを分けます。必ずそうした時代が来ます。生き残りをかけて戦う気があるなら私は情報提供書や取材メモをお見せすることもやぶさかではありません。もう一度考えて下さい。頑張って下さい。闘って下さい。よろしくお願いします。 黒木昭雄」