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気鋭の警察ジャーナリストに何が…黒木昭雄さんの死から見えてくるもの (4/5ページ)
千葉県警の検視の結果、黒木さんの死因は一酸化炭素中毒と判明。車内からは市原市のホームセンターで練炭を買ったことを示すレシートが見つかり、黒木さんのカードが使われていたことも分かった。コンビニエンスストアでさきいかと日本酒を購入したこともすぐに裏付けられた。自宅の冷蔵庫からは、黒木さんが医師から処方された睡眠薬もなくなっていた。
ネット上などでは黒木さんの死について、「殺人なのでは」などという流言飛語が飛び交ったが、県警では自殺とみている。
黒木さんは自身2作目となるサスペンス小説を書いていた。そこに使われるトリックに、メールを実際とは時間差で遅く送るというものがあった。黒木さんはその「リモートメール」機能を使って長女にメールを送っていた。遺体発見日となった11月2日午前11時ごろ、長女が正子さんに「お父さんからメールがあった」と言ったのだ。そこには「お母さんを頼む」とあった。
「一瞬、夫は生きているのでは、と思いました」と、そのとき黒木さんを必死で探していた正子さんは振り返る。直後に「お父さんが見つかった」と昭成さんから泣き声で電話があった。
黒木さんの父の墓前には黒木さんがコンビニで買った「ワンカップ大関」が供えられていた。遺体発見前日の11月1日午後9時ごろ、埼玉県に住む義兄と黒木さんは電話で話をしている。
「埼玉のうまい酒が入ったんだ。今度一緒に飲もう」と言った義兄に黒木さんは「今、こっちも飲んでるんだ」と答えたという。死亡推定時刻は1日午後11時。黒木さんは墓前で父と酒を酌み交わした後、自ら死出の道に旅立ったのだろうか。
記者の私は産経新聞宇都宮支局に勤務していた12年ごろ、黒木さんと知り合った。それ以来、酒を飲んだり、時々会ったりして近況を話し合っていた。ただテレビによく出演していたのが、最近は減っていたのが気がかりだった。
「警察に批判的なことを言う主人を疎ましく思って、テレビ局に主人を使わないように警察から圧力がかかったとも聞きます。いろいろなことが重なっていやになってしまったんじゃないでしょうか」
妻の正子さんはこう話して続けた。
「岩手の事件で借金があったのは事実で、昨年は自宅を売ろうとしたこともありました。でもそれが原因とは考えていません。いざとなればアパート暮らしだってできますから。それよりも人に裏切られたことの方が辛かったんじゃないでしょうか」