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ビジネス書と賃上げ

2010年12月18日0時17分

 書店はビジネス書であふれている。誰もが1億円プレーヤーになれるかのような自己啓発やスキルアップの本。あるいは傾いた会社が飛躍的に発展するかのような経営指南の本が多い。

 自己責任の時代には、「勉強」がなにより必要ということか。しかしそれにしても、なんと似たようなタイトルが多いのだろう。たしかに書名は売れ行きのカギだが、結果、同工異曲となっている。「…しなさい」という命令形と「3分で…」という短時間型が圧倒的だ。

 売れるからこそ出版されるのだろうが、類似の内容で3冊、4冊と発行する著者もいる。生産性が高そうだが、「いいかげんにしなさい」といわれないのだろうか。それとも古典落語と同じで、読者は同じ話を聞きたいのだろうか。

 労働組合による賃上げという、生活改善方法が遠くなったことが、個人による自己啓発の努力を促している一因だ。が、勤労者はもっと怒ってもよいのだ。関西で「生コンのストライキ」がおき、ビル建築が立ち往生したのは夏のことだったが、仲間をつくり集団で争うことも、時にはビジネス書を読むより健全だ。本紙・火曜日の「働く」欄を読んでいると、人間の尊厳を傷つける職場の多さに胸が痛む。

 日本の勤労者が、賃下げという「デフレ」を、受け入れるようになって久しい。賃下げが消費意欲の減退を招き、それが物価の下落を促し、そのことがまた賃下げへとつながる負の循環が断ち切られるのはいつだろう。

 2006年、07年ほどではないにしても、仕事の忙しさは戻っている。不透明な先行きを考えて、企業の慎重姿勢は変わらないが、大切なのは働く者の意欲である。(遠雷)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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