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不惑の原発銀座

(5)最終処分見えぬ道筋

2010年12月18日

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 ●核のごみ

 「121世紀からのメッセージ」。こんな題名のアニメが、富岡町にある福島第二原発の広報施設で流れている。

 1万年後の日本に住む子どもが、原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分について自由研究で報告するという筋書き。地下300メートルより深い地中に数千年も埋める地層処分を、約5分間で解説する。映像の流れる画面横には、東京タワーの高さより深い場所に埋める様子の模型が並ぶ。

 原子力関係者の間で、いま最も頭の痛い問題が原発から出るごみの処分場だ。原発は「トイレなきマンション」と呼ばれる。ただ、「マンション」の建て替えが議論になり始めた今になっても、「トイレ」の位置が決まらない。

 高レベル廃棄物の最終処分場は、原子力発電環境整備機構(NUMO)が国の支援のもとで全国から公募中だ。2002年末から募集を始め、当初は「平成10年代後半を目途」に候補地選定の第1段階に入れると想定していた。

 しかし、候補地に名乗りをあげている市町村は一つもない。高知県東洋町でいったん応募の動きが出たものの反対運動が起き、撤回された。経済産業省は「応募に関心を持つ自治体はある」と説明するが、手詰まり状態が続く。

 「原発立地地域以外が候補地になるのは難しいのでは」との焦りが、原子力関係者の間で次第に広がっている。立地地域以外だと原発への反対論が噴出するが、立地地域には一定の理解があるためだ。

 11月に東京都で開かれた全国原子力発電所立地議会サミット。原発立地自治体の議員らが集まり、地域の課題や悩みを話しあう場で、処分場問題もテーマの一つになった。

 「原発を誘致したから、最後まで協力しなくてはとの考え方もある。どう考えるか」。ある議員が問いかけた。

 「立地地域のどこかで引き受けなくてはいけない」「おしつけになる、と心配している」など様々な声が出た。ごみ処理の道筋がつかないと、発電所内で使用済み燃料がたまり続ける。議員からは「(満杯に近づく状態を)町民にどう説明すればよいのか」との悩みも出た。福島第一、第二原発でも使用済み燃料は増え続け、貯蔵容量の約6割に達している=グラフ。

 内閣府が昨年まとめた世論調査は、ごみ問題の解決の難しさを浮き彫りにした。回答者の8割が、最終処分地を現世代が責任を持って決めるべきだと答えた一方、自らの近隣市町村に計画が出た場合は反対、と答えた人も全体の8割にのぼった。

 処分場問題の解決の糸口を探るシンポジウムが17日、東京都内であった。国会議員や県知事の果たす役割が大切になる、との声が目立った。

 原発銀座の新潟県柏崎市から西川正純・前市長も出席。「この問題は八方ふさがり状態だ」としてこう語った。「(地域にとって)やっかいな問題というのでなく、将来に大切なことという方向付けができないだろうか」。悩みは深く、光は見えていない。

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 「地域はいま」シリーズは終わります。田村隆と中川透が担当しました。

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