ここから本文エリア 不惑の原発銀座
(4)巨額資金 制御できず2010年12月17日 ●財政難 「二度と町民が困るようなことはしてならない」「次の世代に安心して町をもたせるには蓄えかなと思っている」 16日の双葉町議会で、井戸川克隆町長はときに高ぶる感情を抑えるようにしつつ、財政難に関する議員の質問に答えた。町は2008年度決算で、財政悪化のイエローカードを示す早期健全化団体に転落。県内唯一、原発のある自治体として全国唯一だった。 町内の健康福祉施設「ヘルスケアーふたば」など、原発マネーをあてにした巨額投資が重荷となった。町長自ら給料の実質手取りを一時ゼロとし、町民の敬老祝い金を減額するなど影響は多岐に及ぶ。 財政難を招いた反省から、12月議会に提案した11年度からの総合計画案には、「行財政の健全に運営されているまち」と町の戦略が記された。井戸川町長は「これからは自らの責任で総合的な行政運営をする時代」と決意を示す。 双葉町ほど危機的ではないが、楢葉、富岡の両町も財政悪化が進む。富岡町は、プール、温泉、宿泊棟などが集まった健康福祉施設「リフレ富岡」の運営に苦しんできた。 約65億円の町の年間予算のうち、運営に約1億7千万円が投じられる。利用料収入も入るが、それを除いても年間1億円近い税金を費やしてきた。遠藤勝也町長は2006年9月の町議会で、「膨大な経費をかけて、豪華なものをつくり過ぎてしまった。まさに、行政のバブルです」と悩みの深さを表現した。 巨額投資を可能にしたのが電源三法交付金。その原資は電気の消費者が使用量に応じて払っている。1カ月に300キロワット時使う家庭だと、100円程度になる計算だ。 この交付金が原子力、火力、水力などの発電所がある地域に入る。県内全体だと、08年度に約140億円。うち県の事業に50億円が投じられ、原発のある浜通りの4町には56億円が入った。原発の影響力の大きさがわかる。 財政再建のため、双葉町は町内での第一原発7、8号機増設を待ち望む。東京電力も9月13日に公表した中期経営計画で増設について記した。しかし、県は慎重姿勢だ。翌日の定例会見で、佐藤雄平知事は記者から増設について問われ、「私は全く聞いてもおりませんし、全く考えておりません。以上」とだけ述べ、ぶぜんとした表情をみせた。 そんな知事の姿をよそに、増設の期待は着々と高まる。原発は1基建てると5千億円規模の投資となり、雇用や税収面での恩恵が計り知れないためだ。自民党県連幹事長の斎藤健治県議は1日の県議会で、増設を求める声をあげた。約1千億円の県の公共工事予算額と比べてその効果の大きさを示し、「やせ我慢をしないで、(増設要請を)勇断を持って決意すべきでないか」と知事に迫った。 財政難を生むのも解消するのも、原発マネー。町の規模と比べてあまりに巨額なカネが入り続け、地域はそれを制御しきれていない。
マイタウン福島
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