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特殊映像ラボラトリー 第22回 「2010年上半期・特殊映像総決算!!」

■ 日本映画/特撮 
「仮面ライダー」シリーズ、圧勝!!

 こと上半期の興行成績を見る限り、東映の「仮面ライダー」シリーズが圧倒的な強さを見せている。
 まず正月の「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド/MOVIE大戦2010」が、東映系292スクリーンで公開され、興収15.4億円と、昨年夏の「仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」の19億円には及ばなかったが、このところ芳しい成績を上げられなかった、東映の正月興行を久々に盛り上げたのは立派。
 また5月22日から、アルファ・チェーンにて3本の新作を2週間ずつ上映するといった、特殊な興行形態の「仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー/超・電王トリロジー」も、3番組トータルで13億円を見込む、上々の成果。
 ライダーの好敵手と言えばウルトラマン。配給が松竹からワーナーに代わった「大怪獣バトル/ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」は、2009年12月12日から135スクリーンで公開され、興収6.26億円をあげた。これは前作「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(2008年9月公開)の興収8.38億円を2億円以上下回るものだが、前作の場合キャスティングや平成ウルトラマンたちの登場など、新旧世代を狙ったにぎやかなイベント性があったものの、今回の「大怪獣バトル」は、新体制となった円谷プロの第一弾。いわばニューヒーロー・ウルトラマンゼロのお披露目がメイン。「ULTRAMAN」以来の正月興行で、このマーケット、この成績をあげたことは、ウルトラマンのネームバリューの根強さを証明したと言えるだろう。
 東映のもうひとつのヒット・シリーズ「侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG!!」は、1月30日から140スクリーンで公開され、興収4.7億円を計上した。これは前年1月に公開された「劇場版炎神戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー」の3.1億円を上回るもので、こちらも新しい鉱脈として今後が期待される。

 シネコンの拡充に伴うマーケット拡大を、自社作品のマーケティングに活かしているのが、最近の東映である。従来の邦画系にくわえて、子会社であるティ・ジョイのシネコンを中心に、様々なシネコンとコラボを行い、柔軟な興行網を編成。「仮面ライダー」「プリキュア」「戦隊」など、TVから派生し、中小規模予算で製作した作品を、これまた中小規模のマーケティングで展開し、手堅い成果を上げている。作品のサイズに見合った興行展開は、効率的で無駄がない。こうなると、邦画系では大作の類が中心にならざるを得ないのだが、5月に公開した「ゼブラーマン/ゼブラシティの逆襲」などは、興行的にまったくの不振。作品のサイズとは、イコール製作の規模ではなく、その作品の興行的可能性=観客の訴求度であるのだが…。
 
■ 外国映画/アニメ
 3Dという新しい付加価値は、活かされたか?

 外国映画のアニメ作品とは言うものの、上半期公開で該当するのは、いずれもディズニー作品ばかり。正月の「カールじいさんの空飛ぶ家」、春の「スパイアニマル・Gフォース」「プリンセスと魔法のキス」。それ以外では、ギャガ配給の「コララインとボタンの魔女」が2月に小規模で公開されたにとどまった。  
 結果から見ても、ディズニー=ピクサーの「カールじいさんの空飛ぶ家」が、興収50億円をものにし、圧倒的な強さを誇示している。「カールじいさん…」の興収における、3D比率は48.00%。これは同時期公開の「アバター」が3D装備の映画館を大挙獲得したためだが、配給のディズニー・スタジオが「3Dはプラス・アルファ」と位置づけ、3Dだけを強調する宣伝を行わなかった理由もある。この戦略に関しては、賛否両論あるところだが、ともあれピクサー作品としては「Mr.インクレディブル」以来となる50億円達成は評価すべきだろう。

 同じディズニー・アニメでも、ヒットメーカー、ジェリー・ブラッカイマーのファミリー・アニメ「スパイアニマル・Gフォース」は全米公開時同様、その訴求度が今ひとつで、興収6.4億円にとどまった。こちらは公開時、競合する3D作品がなく、3D興収比率は81.00%を占めている。
 ディズニーならではの、クラシカルな味わいのアニメ映画「プリンセスと魔法のキス」も、春休み公開とあって日本製アニメにファミリーを奪われ、これまた今ひとつの興収4.86億円に終始した。
 洋画アニメの場合、いかんせんキャラクターの認知度が我が国では乏しいことから、配給各社は宣伝活動に苦心するわけだが、3Dという新しい付加価値を、宣伝的にも興行的にも活かして欲しいところである。
 
■ 外国映画/特撮
「アバター」の興収154億円は、物足りない?

 2010年上半期における、外国映画の特撮・SF・ファンタジー・カテゴリー作品のうち興収10億円以上をあげたのは、次の6作品。

 ☆「アバター」(フォックス/正月)154.62億円
 ☆「アリス・イン・ワンダーランド」(WDS/4月) 118億円(調査時上映中)
 ☆「2012」(ソニー・ピクチャーズ/正月)38億円
 ☆「タイタンの戦い」(ワーナー/4月)15.73億円
 ☆「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」 (フォックス/2月)14.14億円 
 ☆「アイアンマン2」(パラマウント/6月)12億円(調査時上映中)

 堂々興収100億円超えの作品が、2本。「アバター」と「アリス・イン・ワンダーランド」だ。外国映画の興収100億円突破は、2007年の「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」(興収109億円)以来ゆえ、めでたいことではあるのだが、今回は「アバター」「アリス…」ともに3D映画を前面に出した売り方をした。いわば映画の持つイベント性をハード中心に最大限に誇示して見せたわけで、両作品の3D興収比率が「アバター」87.00%、「アリス…」84.96%であるところから、その試みは成功だったと言える。
 だが、じっくりと数字を吟味してみると、「アバター」の興行収入は、いささか物足りないきらいがある。同じジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」が1997年12月に公開され、興収実に262.1億円と、我が国公開の外国映画の興収記録を未だキープしているのだが、「アバター」の興収が「タイタニック」と比べて、100億円以上低いのが、いささか腑に落ちないのだ。
 「アバター」は世界中で上映されたが、海外マーケットのうち、興収1億ドル以上をあげた7カ国のうち、「タイタニック」の成績を下回ったのは、日本だけである。試しにデータをあげてみよう。

日本=「アバター」1億6392万3470ドル、
    「タイタニック」2億138万9568ドル
中国=「アバター」1億8223万8768ドル、
    「タイタニック」4392万8666ドル
フランス(アルジェリア、モナコ、モロッコ、チュニジアを含む)
   =「アバター」1億5826万1059ドル、
    「タイタニック」1億2912万7181ドル
ドイツ=「アバター」1億3766万5124ドル、
     「タイタニック」1億2997万4110ドル
☆ロシア=「アバター」1億1296万4113ドル、
     「タイタニック」508万4138ドル
韓国=「アバター」1億1026万5398ドル、
    「タイタニック」1728万7679ドル
イギリス(アイルランド、マルタ含む)=
    「アバター」1億3495万4305ドル、
    「タイタニック」1億1406万3718ドル
 (興収は、BOXOFFICE MOJOより)

 無論各国それぞれの国情、国民性はあるが、海外マーケット・トップのレギュラー・ポジションにある我が国の成績は、もっと伸びても良かったのではないだろうか。「タイタニック」が公開された1997年12月末での、我が国スクリーン数は1884。これが「アバター」公開時の2009年末には3396スクリーンへとマーケットが拡大。また入場料金も、3D映画のため特別料金を徴収しているから、これも「タイタニック」より高くなっているはずだ。にも関わらず、この差が出たのは、さていかなる要因か?
 「2012」は、その「アバター」が市場に出る前の11月21日から公開され、先行逃げ切りの形で、興収38億円をあげた。ローランド・エメリッヒ監督お得意の題材だが、正直、ここまでの高稼働になるとは思わなかった。不安な時代というわけか。

 「タイタンの戦い」は、「アリス・イン・ワンダーランド」と同時期に公開されたが、この時点では、1サイトに3D上映のための設備を1スクリーンしか配備していないシネコンが多く、3D化の決定が遅れた分だけ不利になった。興収のうち3D比率は50.00%。3D映画といっても、「アバター」のように撮影段階から3Dの機材を用いている例は稀で、「アリス…」は3D機材の扱いにくさをティム・バートン監督が敬遠したことから、“3D映像を意識した上での2D撮影”を行い、ポスプロ段階で3D化。「タイタン…」の場合は、クランクアップ後に3D化が決定し、3Dを意識した撮影は行っていない。また3D化を行った場合、通常の製作費が2割増になるというから、スタジオとしても、ここ一番の勝負作、大作に使うつもりらしいが、それにしても「タイタンの戦い」の3D映像には見るべき効果がなかった。
 「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」「アイアンマン2」。ともに大きなマーケットで公開されたが、この種の作品は我が国の観客から飽きられている感が、どうにも否めない。配給会社が替わった「アイアンマン2」が、前作の9.4億円を上回ったのは吉報か。
 興収10億円以下の作品では、ワーナー=ギャガ配給の、ハイ・クォリティな「第9地区」は8.21億円と、中規模マーケットで予想以上の成績を収めたが、大劇場に出た「ダレン・シャン」は興収7億円にとどまった。ジェリー・ブラッカイマー製作の「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」も6.8億円と往年の勢いが見られず、スパイク・ジョーンズ監督のファンタジー「かいじゅうたちのいるところ」も、全国537スクリーンという体制でスタートしたものの、興収5.71億円と伸び悩んだ。
 再び3D映画のことに触れれば、今年11月から来年いっぱいにかけて、25本の3D作品が待機しているという(日本公開が決定している作品のみ)。特殊映像たちを取り巻く環境も激変することだろう。
 
(クロックワークス配給作品は、共同配給作品も含めて、業界紙調べ/一部推定) 

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