<低温やけど>損傷深部まで ゆたんぽでも長時間接触は危険 皮下組織が壊死、手術も
毎日新聞 12月17日(金)14時55分配信
心地よく感じる温かさでも長時間接触していると、低温やけどをすることがある。見た目は軽く見えても、皮膚の深い部分まで損傷することが多く、治りにくいうえ、重傷化すると手術も必要になる。暖房器具を使うことが多いこの時期、使い方には注意が必要だ。【下桐実雅子】
「ゆたんぽに長時間接触し、ふくらはぎにやけどした」「電気カーペットに寝ていたら、低温やけどを起こした」−−。
独立行政法人・製品評価技術基盤機構によると、低温やけどに関するこうした製品事故情報が、ここ数年増加傾向にある。06年度までは1けただったが、07年度は10件、08年度は30件、09年度は13件寄せられた。11〜3月に多発し、ゆたんぽや電気あんかなど暖房器具によるものが多い。
同機構によると、愛知県の20代男性は、ゆたんぽに湯を入れて、付属の袋や別に買った袋で二重に包んだ。足元に置いて就寝したところ、ふくらはぎに重傷の低温やけどを負った。就寝中に無意識に長時間接触し、やけどしたとみられる。
また、睡眠薬の服用時や泥酔時にも起こりやすい。
福岡県の40代女性は、就寝時に電気あんかを「強」に設定し、両足に触れないように置いていた。睡眠薬の服用で熟睡し、目覚めると両ふくらはぎの下に電気あんかがあり、重傷の低温やけどを起こした。
ゆたんぽや電気あんかは、タオルや専用カバーで包んでも、低温やけどする恐れがあり、同機構は「就寝前に布団に入れて温め、寝るときは布団から出したり、スイッチを切って」と呼び掛けている。
このほか、ノートパソコンや携帯電話の上に顔を載せて寝てしまったり、アダプターが足に接触して低温やけどした事例も、数は多くないが報告され、暖房器具ではない電気製品でも起こる可能性があるという。
□ □
低温やけどは、短時間の接触では問題にならない程度の温度でも、長時間同じ場所に接触することで起こるやけどを指す。医学的には「低温熱傷」と呼ばれる。
普通のやけどは、火や熱湯、油など高温のものが原因で、皮膚の表層で起こる。一方、低温やけどは、熱いという自覚がないまま長時間接触するため、皮膚の深部まで損傷することが多く、あまり痛みを伴わないことが多い。このため、軽傷と思いがちで早期に受診する人は少ないという。
しかし、皮膚や脂肪などの皮下組織で壊死(えし)した部分が次第にはっきりして、黒いかさぶたになったり、白っぽく変化する。筋肉や骨に達することもあるという。
一般的には、温かいと感じる44度で3〜4時間以上、46度で30分〜1時間程度触れていると低温やけどを起こすとされる。
伊藤正俊・東邦大名誉教授(皮膚科学)は「熱源との接触時間だけでなく、圧迫しているかどうかも関係する」と指摘する。通常は低温の熱源に触れても、皮膚の血流によって熱が放散される。しかし、圧迫されて接触部分の血流が悪くなると熱がこもり、蓄積された熱で低温やけどになるという。
伊藤さんが週1回診察するM&Mスキンケアクリニック(東京都千代田区)には、低温やけどで受診する患者が少なくない。20〜30代といった比較的若い世代のゆたんぽ使用によるものが目立つという。「この温度でやけどが起こるわけがないという思い込みがあるようだが、十分起こることを認識してほしい」と語る。
治療には塗り薬による処置と手術の二つの方法があるが、塗り薬だと周辺の皮膚が伸びて治るまでに1〜3カ月、中には半年かかる人もいるという。面積が小さければ、やけどした場所を縫い縮めた方が早く治りやすい。
また、東京女子医大東医療センターの井砂司准教授(形成外科)によると、やけどの範囲が広いと皮膚移植することもある。塗り薬で治すより傷跡も残りにくい。井砂さんは「糖尿病の末梢(まっしょう)神経障害や下肢の血行障害のある人は、健康な人より低温やけどをしやすいので、特に注意してほしい」と指摘している。
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同機構によると、愛知県の20代男性は、ゆたんぽに湯を入れて、付属の袋や別に買った袋で二重に包んだ。足元に置いて就寝したところ、ふくらはぎに重傷の低温やけどを負った。就寝中に無意識に長時間接触し、やけどしたとみられる。
また、睡眠薬の服用時や泥酔時にも起こりやすい。
福岡県の40代女性は、就寝時に電気あんかを「強」に設定し、両足に触れないように置いていた。睡眠薬の服用で熟睡し、目覚めると両ふくらはぎの下に電気あんかがあり、重傷の低温やけどを起こした。
ゆたんぽや電気あんかは、タオルや専用カバーで包んでも、低温やけどする恐れがあり、同機構は「就寝前に布団に入れて温め、寝るときは布団から出したり、スイッチを切って」と呼び掛けている。
このほか、ノートパソコンや携帯電話の上に顔を載せて寝てしまったり、アダプターが足に接触して低温やけどした事例も、数は多くないが報告され、暖房器具ではない電気製品でも起こる可能性があるという。
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低温やけどは、短時間の接触では問題にならない程度の温度でも、長時間同じ場所に接触することで起こるやけどを指す。医学的には「低温熱傷」と呼ばれる。
普通のやけどは、火や熱湯、油など高温のものが原因で、皮膚の表層で起こる。一方、低温やけどは、熱いという自覚がないまま長時間接触するため、皮膚の深部まで損傷することが多く、あまり痛みを伴わないことが多い。このため、軽傷と思いがちで早期に受診する人は少ないという。
しかし、皮膚や脂肪などの皮下組織で壊死(えし)した部分が次第にはっきりして、黒いかさぶたになったり、白っぽく変化する。筋肉や骨に達することもあるという。
一般的には、温かいと感じる44度で3〜4時間以上、46度で30分〜1時間程度触れていると低温やけどを起こすとされる。
伊藤正俊・東邦大名誉教授(皮膚科学)は「熱源との接触時間だけでなく、圧迫しているかどうかも関係する」と指摘する。通常は低温の熱源に触れても、皮膚の血流によって熱が放散される。しかし、圧迫されて接触部分の血流が悪くなると熱がこもり、蓄積された熱で低温やけどになるという。
伊藤さんが週1回診察するM&Mスキンケアクリニック(東京都千代田区)には、低温やけどで受診する患者が少なくない。20〜30代といった比較的若い世代のゆたんぽ使用によるものが目立つという。「この温度でやけどが起こるわけがないという思い込みがあるようだが、十分起こることを認識してほしい」と語る。
治療には塗り薬による処置と手術の二つの方法があるが、塗り薬だと周辺の皮膚が伸びて治るまでに1〜3カ月、中には半年かかる人もいるという。面積が小さければ、やけどした場所を縫い縮めた方が早く治りやすい。
また、東京女子医大東医療センターの井砂司准教授(形成外科)によると、やけどの範囲が広いと皮膚移植することもある。塗り薬で治すより傷跡も残りにくい。井砂さんは「糖尿病の末梢(まっしょう)神経障害や下肢の血行障害のある人は、健康な人より低温やけどをしやすいので、特に注意してほしい」と指摘している。
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最終更新:12月17日(金)17時52分
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