駅の自動券売機、暗証番号入力端末、コンビニATM、コピー機など、
この頃急速に電話式キー配列のテンキーがあちこちで目につきますが、
その関連新聞記事を東京新聞社の許諾を頂きましたので転載いたします。
なお、この新聞で紹介された長谷川貞夫テレサポートNET代表のこれまでの取り組みは、
下記のURLで公開しておりますので興味のある方はあわせてどうぞお読みください。


・バリアフリー・リポート:◆視覚障害者の公共情報端末
http://www5d.biglobe.ne.jp/~sptnet/78486594/


■東京新聞 2004年12月4日 土曜日 
朝刊 28面 11版から転載 (左の写真)


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◆逆さまの数字配列
 ATM・券売機・パソコン・・・視覚障害者は標準化を希望  


<東京なぜ なぜ なぜ ???>

電話式 上から1、2…
計算機式 下から1、2…


・東京都港区で保険代理店を経営する小川時彦さん(62)にとって、電話と電卓は仕事の必需品だ。
 ブラインドタッチでテンキーをたたいて数十年になるが、いまだにキーを間違えるとこがある。
 「電話と電卓で数字の配列が違うんですよ。
なぜ違うのか、長年の疑問をぜひ解明してください」

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 電話や電卓は記者でも仕事でよく使うが、そういえば気付かなかった。

 電話は卓上でも携帯でも、種類に関係なく左上から1、2、…と始まり、右下の9で終わる。
 さらに下の列には左からアスタリスク(*)、0、シャープ(#)が並ぶ。

 一方、電卓は左下から1、2…と始まり、右上の9で終わる。
 0は1か2の下にあることが多く、機種によってまちまちだ。
 0のほかに00や000が並ぶ電卓もある。

 なぜ仕様が異なるのか。
 ここはやはり、歴史をさかのぼるしかない。

 国内で初めてプッシュホンが登場したのは1969年。
 世界初のテンキー式電卓は、64年のキャノン製「キヤノーラ130」だ。
 だが、同社に聞くと「このキー配列は当社が最初ではない」という。

 電卓ではなく、机と一体になった世界初の純電気計算機は、57年のカシオ計算機製「14−A」。
 14−Aもテンキーだが、同社も「これ以前にも、機械式計算機でテンキーは採用されていた」と説明する。

 キャノンなどによると、テンンキーの機械式計算機は14年に米国で発売されており、電卓のキー配列は「これが源流という説がある」らしい。
 この配列になった理由ははっきりしないが、「よく使う0や1のキーが手前で隣接している方が使いやすい」と話す業界関係者は多い。

 14年といえば、国内ではまだダイヤル式の電話さえ世に出ていない。
 後発のプッシュ式電話はなぜ、電卓と異なるキー配列になったのか。

 NTT東日本によると「電話のキー配列は、ITU−T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)の勧告に従っている。
 勧告では、(配列の理由について)上から1、2…と並ぶ方が自然だとされているようだ」という。
 一方で、事務機器やデータ処理機器の数字キーは、国際標準化機構(ISO)が電卓式を国際標準に採用している。
 標準化機関の違いがそのままキー配列の違いとなった背景もありそうだ。

 情報通信機器の発達で、数字キーは日常生活のあらゆる領域で使われている。
 銀行の現金自動預払機(ATM)、パソコンのキーボード、テレビやビデオなどのリモコン、駅の券売機…。
 キー配列に統一性がない現状は、「使う側が慣れればいい」というだけでは済ませられない問題をはらんでいる。
  

      ■   ■

 「私たちにとっては、とても大きな問題です」と話すのは、日本点字図書館(新宿区)の評議員で目が不自由な長谷川貞夫さん(70)=練馬区。
 長谷川さんらはこれまで、JR東日本の券売機やデビットカードの端末を電話式のテンキーで統一してほしい、と活動してきた。

 「JR東日本が95年にタッチパネルの券売機を設置すると発表したとき、私たちの間で『(ボタンの)手がかりがなくなって困る』と問題になりました。
 そこで『電話式のテンキーを設置して』と要望しました」と振り返る。

 電話式を推した理由については「合理性でいえば、よく使うキーが
手前にある電卓式なんですが、当時はすでにプッシュホンがかなり普及していて、万人共通なのは電話式だと考えました」と説明する。

 JR東日本は電話式を採用。
 長谷川さんらの取り組みや携帯電話の普及もあり、現在はほかの私鉄や銀行のATMなどにも電話式が広がりつつある。
 長谷川さんは「コンビニのATMにも電話式のテンキーと音声案内の設置をお願いしている。
 だれにとっても分かりやすいものであってほしい」と訴える。

 電卓式のキー配列は劣勢のようだ。
 便利さから今後も使われ続けるだろうが、少なくとも目の不自由な人が「あっ、これは電卓式だ」とすぐ分かる出っ張りを付けるなどの標準化は必要かもしれない。   
           
文・森川清志/写真・安江実/紙面構成・斉藤明彦

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無断転載、複製、改変、加工などはできません。(文責・古川愛子)



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