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■計測方法
  • 1行30字詰め原稿を、そのまま30字詰めで、10分間、読み取り入力する。
  • 入力総文字数から、誤字・誤変換・余字数を減ずる。
  • 改行、空白は文字数に含めない。

 というのは、たとえばテレビが見えないとか、それから、うつっ
てないとか、そういう声を出していただかないことには情報はやは
り保障されないと思います。ですから、発言者と運び手、それから
受け手の3者で、この場の情報を共有していこうという共通理解が
ないと、なかなか音声情報というのは、それを皆が共有することに
ならない。そういう考えを持ったものですから、このモニターです
ね。モニターで自分の発言がどのように聞こえているか、どのよう
に見られているか、確認できる。そういう意味があって、これを今
日は使っています。
 そこで今日お集まりの方にうかがいたいんですが、要約筆記の活
動をされている方は、何人ぐらいいらっしゃいますか。18人から
20人ぐらいですね。では手話通訳の活動をされている方。4、5
人。じゃあ、要約筆記という言葉をご存じない方、いらっゃいます
か。僕自身は東京で要約筆記活動をしていまして、それと同時にパ
ソコンを使った要約筆記活動をしています。今日、最初のお話にな
りますけれども、いま東京で実際に講習会を主催していまして、そ
こで話しているような内容のことをお話したいと思いす。
 パソコンをお持ちの方は、何人ぐらいですか。けっこう多いです
ね。ワープロも含めるとほとんど皆さん全員ですか。じゃあ、タッ
チタイピング、見ないで入力できる方。4、5人。すごいですね。
タッチタイピングといいますが、むかしはブラインドタッチってい
いましたけれど、見ないで打てる方、よろしかったらこちらで参加
してください。このシステムは、ワープロでも、通信ソフトがはい
っていればこのように映せます。キーボードはものによって違いま
すが、1台IBMが空いていますのでぜひ。ほかにパソコンをもっ
てきているかたはぜひ。あ、そうですか。あとでつないでみましょ
う。
 じゃパソコンをだして、うってみてくれます?(会場笑)電源コ
ードのあまりはありますか?(あります)コンバータをもってきて
ないので、とりえず立ち上げていただいて。じゃ自分でやって。テ
ーブルタップだけ。では接続しながら聞いてください。東京で要約
筆記の講習会というのが開かれていますけれど、それを卒業された
方が、こんなことを言っていまして、それは、要約筆記をしている
んだけれども、利用者がOHPを見ていないというんです。利用者
は手話をみていた。その新人の方は、利用者が見ていないんだった
ら、自分はOHPを使わなくても、いいんじゃないかというような
ことを言っていました。で、情報を保障する方法というのはいろい
ろありまして、OHPもありますし、もちろん、手話通訳もありま
す。それから、隣に座ってノートテイクという方法もあります。そ
れから、磁気ループという方法もあります。もちろん補聴器もあり
ます。つまり、情報を保障する手段が、たくさんあるということだ
と思うんです。
 そこで、難聴と一口にいっても、聞こえの程度は人によって違い
ますし、それから、どういう情報の保障手段がふさわしいかという
のは、やっぱり人によって違います。ところが、OHPを書いてい
て、自分の活動だけに頭が集中しますと、他の情報保障手段が、あ
る利用者にとっては便利なんだいうことを忘れがちになると思うん
です。ある方は高性能な補聴器を早く開発してほしいと考えている
と思いますし、ある方は手話通訳を養成してほしいと希望されてい
ると思います。たまたまOHPを見ていなかった状況というのは、
その利用者が情報を手話から得ていたわけです。そうしますと、O
HPを担当する人も、それから、手話通訳も自分の情報の保障の特
徴と言いますか、どういうところを利用者が活用しているか意識し
ないといけない。そんな時代になっているような気がするんです。
なかなか自分の方法を意識するというのは難しいことでして、僕も
今、OHPを使ったり、時にはノートテイクをしたり、それからパ
ソコンを入力したり、いろいろな活動をしています。
 パソコンを使って入力しますと比較的速く打てるもんですから、
音声を書くよりもたくさん表示できます。僕の場合で、書く場合、
いちばん速いスピードでも1分間に80字ぐらい。パソコンをうつ
ときには僕はローマ字入力ですけれど、1分間で150字ぐらいで
す。話すスピードというのはよく言われるのは、NHKのアナウン
サーを例にとりますけど、1分間で350字ぐらいだそうです。活
動してると、あまりこういうことは実際に計らないと分からないん
ですけど、自分の情報がどんなふうにつたわっているか、そこに限
界があれば、どういうふうに伝えるべきかというようなことも意識
せざるをえない。そんなふうに思います。
 で、僕は利用者の声というのが非常に大事だと思うんですが、初
めて、こうしたTV画面を見た方は非常に感動されます。それは、
まあ第一印象ですよね。ところが、2回、3回とこうした方法を使
ううちにこうしてほしい、という希望がでてきますね。そういう声
を情報を保障する担い手である僕等が拾い上げていかなけばならな
いと思います。いま東京のある大学で授業で情報の保障をしていま
すけれど、その方法というのは、ノートパソコンに入力して、隣に
利用者がすわって画面を見るという方法です。それがどういう意味
をもっているかということを利用者にアンケートなどを通じて、き
くようにしています。その声のなかには、たとえばですね、1時間
ぐらいで目が疲れるという声があります。それから、日常単語が多
ければ1時間ぐらいは大丈夫だ、と。専門用語がたくさん出てくる
と1時間でもつらい。という声がありました。
 考えてみますと、僕等でも、専門書を読むと疲れますよね。で、
たとえばシドニー・シェルダンという作家がいますが、あの本など
は、それこそ一晩で読んじゃう。つまり、書き言葉というのは書か
れた文字とか、書かれた内容で、かなり頭と目が疲れる場合がある
ということです。そういうことも利用者の声をきかないと僕なんか
はわかんなかったわけです。それから、手話通訳と文字通訳の役割
をどういうふうに分担してほしいですか、と聞きますと、たとえば
ですね。討論とかゼミとか、よりリアルタイムな臨場感を得たいと
きは、手話通訳が欲しいという声がありました。それから講演とか
講義など、情報が一つの方向から発信される、そういうときは文字
通訳がいい。そういう声があったわけですが、これも一つの意見で
す。利用者の必要性及びニーズというのは一人一人違いますので、
その都度、その利用者がどういう情報保障手段がふさわしいのかと
いうことを、担い手が意識しないと、どうしても、情報を保障して
いると言いながら、一方通行的な活動になってしまうんです。一方
通行になりますと、さっきお話ししたように、OHPを利用者が見
ていないから、OHPはいらないでしょうという発言になってしま
うわけです。ところが今、僕が大学の授業でパソコンを打ってます
が、つまり、先生の声を入力しているわけですね。カタカナの言葉
がでてきます。
 ところが、そのカタカナを指文字で表現しますと、理解するのが
難しいときがありますよね。とくに初めてきく名前は難しいです。
そうしたときに、たとえば手話通訳の方が指文字をしながらでね、
OHPを指し示す。そのときに、OHPに文字が書かていれば非常
にわかりやすいわけすね。ですから、手話通訳を見てるからOHP
はいらない、ということではなくて、手話通訳と文字通訳の連携が
必要になっているということです。ですから、意図と成果とは、と
きどき、離れることがありますよね。
 つまり、よいことをしている、でも、役立っていない。良い意図
が良い成果をもたらすとは、限らないわけです。でも、えてして、
良い意図をもっていると、成果も良いものだと思いがちだと、思い
ます。だから、せっかく良いことをしているのに、という意識は、
ときどき邪魔になりますね。つまり、ニーズという言葉があります
が、その利用者が何を必要としているかというニーズ、それは非常
にパーソナル、個別的なものでして、そうした個別的なものに応え
るサービスの視点、そういうものをもたないと、要約筆記も手話通
訳も、えてして、良い意図という影にかくれて、実は役立っていな
いということもあると思います。
 そこで、利用者の声を、どうやって拾っていくかということにな
るわけですが、最初から利用者がこうしてほしい、といってくれれ
ば、らくなんですが、レストランのメニューのように、このカレー
ライスがほしいと、いってくれればラクなんですが、初めてある方
法をみたときには、それを評価できないんですね。

太田晴康氏講演録より抜粋
copyright(C)太田晴康  掲載許諾済 

第1水準 742 (21%) 数字  26 (1%)
ひらがな 2245 (64%) 記号 282 (8%)
カタカナ 180 ( 5%) 空白 11 (1%)
英大文字 44 ( 1%) 合計 3530