米軍普天間飛行場の「県外移設」を掲げた仲井真弘多知事が再選された沖縄県知事選(11月28日投開票)から約3週間。17日に沖縄入りした菅直人首相を迎えたのは、同県名護市辺野古に移設する日米合意の見直しを求める知事の強硬姿勢と、「撤回せよ!」の紙を手に県庁前に集まった県民らの怒号だった。早期訪問で誠意を示し、事態打開の糸口を見いだそうとした首相だが、当面、移設問題の進展は望めない現実を突き付けられた。【井本義親、横田愛】
「首相になって『琉球処分』という本を読ませていただいた。どうすれば沖縄の皆さんの気持ちを理解し課題に取り組めるかという思いでやってきた」
首相は知事との会談で、1879年に明治政府が琉球王国を崩壊させた「琉球処分」に言及。米軍基地が沖縄県に集中する現状について「日本人として申し訳なく、政治家としても本当に慚愧(ざんき)に堪えない思いがしている」と訴えた。
首相は「県外・国外移設」の公約違反を陳謝し、県側が求める経済振興や駐留軍用地の跡地利用などにも積極的に取り組む方針も明言。「強引に物事を進めるつもりはない。誠意を持って話し合う中でご理解をいただければ」と低姿勢に徹した。しかし、沖縄側には、知事選や名護市長選で「ノー」を突きつけても辺野古移設を撤回しない政府の対応自体が「高慢」と映る。
知事は、首相の「ベターな選択」発言に反発。会談後、「何で(辺野古に)戻ったというのが、もう一つ分からない。これで県民あげて『なるほど分かりました』ということには、どうでしょうね」と不信感を隠さなかった。
「次の一手」が見当たらない中、今後も前原誠司外相や馬淵澄夫国土交通相が沖縄入りを計画。来春予定される首相訪米までの解決はすでに絶望的な状況で、沖縄だけでなく米側に対しても「誠意」をアピールする思惑もありそうだ。
毎日新聞 2010年12月18日 東京朝刊