スティール・パートナーズが08年に日本株を大量売却
[東京 16日 ロイター] 米系投資ファンドのスティール・パートナーズが保有する日本株の売却を続けている。大量保有報告書によると、2008年はじめから2009年にかけて、スティールが保有する株式の投資金額の総額は1400億円を超える減少となった。
特に、投資ファンドが決算期を迎える12月の売却が加速しており、スティールと契約している投資家の解約が昨年末にかけて出たため、戦線縮小に追い込まれたとの見方が出ている。一方で、TOB(株式公開買い付け)を提案するなど攻防を続けている銘柄の保有は継続しており、経営改善を働きかけるターゲットを集中させる戦略に転換する動きとみる声もある。
スティールが5%超を保有する日本株の投資総額は、2008年はじめに約3900億円にのぼったが、昨年1年間の保有株の売却が相次いだことで、今年1月5日の時点では約2400億円に減った。保有株を数百億円の単位で大量に売却したのは、日清食品ホールディングス(2897.T: 株価, ニュース, レポート)、シチズンホールディングス(7762.T: 株価, ニュース, レポート)、ブラザー工業(6448.T: 株価, ニュース, レポート)、江崎グリコ(2206.T: 株価, ニュース, レポート)などがあった。
日清については、昨年4月2日の時点での保有比率が19.1%に達し、投資金額が860億円を超える筆頭株主として、同社に提言書を送って経営改革を促していたが夏ごろから売却に転じた。8月から12月末までの5カ月間で400億円前後を売却したとみられ、年末の保有比率は10%程度にまで減少している。
シチズンに対しては昨年3月末の保有比率が12%を超えて筆頭株主だったが、昨年7月末から8月末までの1カ月間で市場内外で250億円近くを一挙に売却し、保有比率を5%弱まで下げた。ブラザー工業も、昨年はじめの保有比率が約11%の筆頭株主だったが10月以降に売却を加速。12月末までの3カ月で200億円以上を処分して年末の比率が4%を割り込んだ。スティールは、シチズン、ブラザーともに、筆頭株主の座から転落したとみられる。
また12月に入ってスティールは、江崎グリコとユシロ化学工業(5013.T: 株価, ニュース, レポート) が実施した自社株に応じて、いずれも全株を売却した。さらに5月までに中北製作所(6496.OS: 株価, ニュース, レポート)も全株を売却し、2月末に最後の大量保有報告書が出たキッコーマンについても、3月末までに全株を売却したことが明らかになっている。
さらに12月中の株式売却は、日清、ブラザー、江崎グリコ、ユシロのほか、ハウス食品、因幡電機などが連なり、年末に売却を加速させたのが目立っている。さらに年をまたいだ1月5日までの間にも、三精輸送機(6357.OS: 株価, ニュース, レポート)、丸一鋼管(5463.T: 株価, ニュース, レポート)、電気興業(6706.T: 株価, ニュース, レポート)ハウス食品(2810.T: 株価, ニュース, レポート)などを売却したことが分かっている。
市場関係者からは「下期以降の金融危機の本格化でスポンサーが資金を引き揚げる動きがあったのではないか」として、投資ファンドが決算を迎える12月にかけて一部の顧客の解約が出て、スティールが現金化のために保有株の売却を迫られた可能性があるとの指摘が出ていた。
一方で、野村証券金融経済研究所の西山賢吾ストラテジストは「投資先のひとつひとつに経営改善を働きかけるスティールの戦術からみて、保有銘柄が広がりすぎていた。金融危機によるスポンサーの解約で戦線縮小に追い込まれた面もあったかもしれないが、ターゲットを集中させている動きにも見える」と指摘していた。役員を送り込んでいるアデランスホールディングス(8170.T: 株価, ニュース, レポート)のほか、TOB(株式公開)買い付けを提案したサッポロホールディングス(2501.T: 株価, ニュース, レポート)、ノーリツ(5943.T: 株価, ニュース, レポート)の保有は継続している。
(ロイター日本語ニュース 村井 令二記者)
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