ソフトバンクが一人暴走した「光の道」論争

なぜこれほど光ファイバーに執着するのか

2010.12.15(Wed)  池田 信夫

日本経済の幻想と真実

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 そこでソフトバンクは10月になって、アクセス回線会社に国が40%出資し、NTTとKDDIとソフトバンクが20%ずつ出資するという新提案を出し、「これを政府もNTTも飲まなければ、当社だけでもやる」と主張した。

 しかし、総務省にもNTTにも、この案に賛成する意見は皆無だった。追い詰められたソフトバンクは「光の道はAかBか」という全面広告を新聞に出し、ネット上でアンケートを取った。このA案はNTTの発表した移行計画、B案はソフトバンクの案だ。

 その結果「B案を支持する意見が圧倒的だった」という集計結果を、孫社長が総務省に持参した。しかしこのアンケートは1人で何回でも押せるもので、統計的な意味はない。それも相手にされなかったため、テレビCMまで打ったわけだ。

 最初から実現可能性ゼロの案に、全面広告やテレビCMなど巨額のコストをかける孫社長の執念は、不可解と言うしかない。

 企業戦略としても、モバイル事業に重点を移しているソフトバンクが、NTTも加入世帯数を増やせない光ファイバーに「4.6兆円投資してもいい」という孫氏の話は、投資家の支持を得られないだろう。

 この背景には、最近、ソフトバンクに「つながらない」という苦情が殺到していることがあると思われる。ソフトバンクモバイルの基地局は約4万局で、NTTドコモの半分しかない。多くのパケットを消費する「iPhone」が増えて、ネットワークが負荷に耐えられなくなっているのだ。

 この負荷を電話回線に逃がすため、ソフトバンクは無線LANのモデムを「iPad」に同梱したり、「フェムトセル」と呼ばれる小型の無線局を無料で配ったりしているが、焼け石に水だ。今後5年で40倍になるとも言われる無線通信データ量を支えるには、基地局を100万局以上に増やさなければならず、採算が合わない。

 このため室内の通信を無線LANなどに逃がし、家庭に引き込まれている光ファイバーをインフラに流用して基地局の負荷を減らそうというのがソフトバンクの狙いだ。

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