「本命は円より子」というお寒い事情

●村木厚子元局長の名前も

　東京都知事選まで、あと４カ月しかないのに、民主党の候補者が一向に決まらない。

「一時は蓮舫大臣の出馬が取り沙汰されましたが、彼女を目障りに思う連中が“人気者の蓮舫大臣なら勝てる”と持ち上げて、国政から追い出そうとしただけ。本人にソノ気はまったくありません」（民主党関係者）

　都議レベルでは、海江田経財相や長妻前厚労相を推す声もあったが、いつの間にか立ち消えに。最近では、郵便不正事件の無罪判決で一躍、お茶の間の有名人になった村木厚子氏の名前が急浮上しているという。

「検察と戦って無罪を勝ち取った村木さんなら、傍若無人な石原知事に立ち向かうジャンヌ・ダルクのような存在になり得る。もっとも、本人には上昇志向があまりなく、口説き落とすのは容易ではない」（民主党関係者＝前出）

　今は内閣府の「待機児童ゼロ特命チーム」の事務局長を任されて、意欲を燃やしているというし、現実味はなさそうだ。

　その結果、「本命は円より子前参院議員」という。

「円さんは民主党の東京都連会長を務めたこともありますが、今夏の参院選で落選。今は自由に動ける立場だし、菅首相と非常に距離が近い。津田塾大学で伸子夫人の後輩にあたることもあり、円さんの選挙では、都議や市議への挨拶まわりに伸子夫人が同行していたくらいです。東京は菅首相のお膝元ですから、都知事選の候補者は、最終的に円さんに落ち着くと思います」（民主党都連関係者）

　東京は無党派層が最も多い選挙区。都市部に強い民主党にとって、都知事選は絶対に負けられない戦いだ。ここを落とせば、一気に政権が弱体化するし、注目度でも有権者数でも、他の道府県知事選とは重みが違う。それなのに円より子とは、石原や東国原、舛添ら出馬がウワサされる面々の対抗馬としては、あまりに地味。本気で勝ちに行くつもりがあるとは思えないのだ。

　政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。

「迷走の背景には、都連の内輪モメがある。代表選のしこりで、都連は菅グループと小沢グループが対立。菅首相が強引な采配で都連会長に自派の加藤公一議員を就けたことで、ますます亀裂が深まってしまった。知事選の候補者を決めるどころじゃないのです。それに、菅首相のままで都知事選を戦えば、誰が立っても負け戦になるのは目に見えている。現職議員がバッジをはずしてまで出るわけがありません。本来なら知名度が高くて有力な候補を立て、統一地方選に勢いをつけなければならないのに、こんなに何も決まらない都知事選は初めてです」

　政権政党が首都の知事選で捨て駒探しとは……。貧すれば鈍するを地で行く話だ。

（日刊ゲンダイ2010年12月13日掲載）