きょうの社説 2010年12月17日

◎税制改正大綱 ”バラマキ政策”の見直し必要
 政府が閣議決定した来年度の税制改正大綱は、減税による景気浮揚効果を期待し、企業 への恩恵を手厚くする一方、高額所得者を中心に負担増を求める内容になった。企業に優しく、個人に厳しい内容だが、デフレ脱却を目指し、景気を最優先させる方向性そのものは間違っていない。経済界はその期待に応えて、雇用創出に全力を挙げてほしい。

 ただ、法人実効税率の5%引き下げによる約1兆5千億円の税収不足を補うメドは立っ ておらず、見切り発車の印象がある。給与所得控除に年収1500万円で上限を設けるなど、高額所得者を狙い撃ちにした増税があれよあれよという間に決まったことも気掛かりだ。「取りやすく、批判の出にくいところから取る」という安易さが透けて見える。まずは“バラマキ政策”と批判の強いマニフェストを見直し、財源をねん出するのが先ではないか。

 大綱に盛り込まれた内容は、相続税増税や環境税導入など、税体系を大きく変える重大 な変更が多い。本来なら年度改正でお茶を濁すのではなく、抜本改革の一環として、時間をかけて議論すべきだった。先の参院選結果が示す通り、消費税増税が国民の支持を得られなかった以上、歳出削減にもっと力を注ぐ必要もあった。

 所得税増税などで得られた新たな税収は、子ども手当や農業の戸別所得補償の上積みな ど、民主党のマニフェスト実現のためにも使われる。政権を取る前は、予算の組み替えで財源をねん出すると豪語していたのだから、増税で賄うのはおかしな話だ。控除の縮小や相続税の増税などで高額所得者や富裕層の負担を増やせば、個人消費が落ち込む懸念がある一方、戸別所得補償や子ども手当などに予算を振り分けても景気浮揚の効果はほとんど期待できないだろう。

 「埋蔵金」の使い道にも疑問がある。政府は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の剰余 金から1兆円超の国庫返納を受け、基礎年金の国庫負担50%分の財源に充てようとしている。私たちはこれを整備新幹線の延伸などに活用するよう主張してきた。目的外の臨時財源に使うのは筋が通らない。

◎北陸の出先機関改革 迫られる「受け皿」づくり
 政府は地域主権戦略会議で、国の出先機関改革の工程などをまとめたアクションプラン 案を示した。出先機関の事務・権限をブロック単位の地方組織に移すため、その「受け皿」となる新たな広域行政制度をつくる法案を2012年の通常国会に提出し、14年度中の移管をめざすことが柱となっている。

 出先機関の受け皿として、先に大阪など7府県で組織された「関西広域連合」や九州地 方知事会がめざす「九州広域行政機構」などが想定されており、北陸も広域行政体制の具体化を迫られる。

 国の出先機関の管轄区域は機関ごとに異なる。例えば、国土交通省北陸地方整備局は新 潟、富山、石川、福井県のほか山形、長野、岐阜県なども管轄している。しかし、国土形成計画法に基づいて昨年策定された「北陸圏広域地方計画」は富山、石川、福井県を対象としており、北陸ブロックの分権の受け皿となれば、この3県でつくるのが自然である。

 政府は年内にも出先機関改革のアクションプランを閣議決定する方針であるが、今後の 課題は地方の広域組織づくりより、むしろ地方に移管する事務・権限の内容が不透明なことである。

 全国知事会は昨年独自に行った仕分けで、国の出先機関が担う約500の事務のうち約 7割の地方移管が可能とみている。が、省庁側が移管可能と回答したのは2割ほどにとどまっている。

 今回のアクションプラン案に具体的に記されたのは、国道と1級河川、ハローワーク関 係だけである。しかも、ハローワークについては、国と希望自治体でつくる運営協議会で3年ほど業務を行う中で移管を検討するとなっており、地方側の不満は強い。

 地域主権戦略会議の議長を務める菅直人首相が強い指導力を発揮しないと、地方の受け 皿は整っても、受ける事務・権限が少ないということにもなりかねない。

 また、出先機関改革は知事会も要望するとおり、まず「一つの都道府県内で完結する事 務・権限は当該都道府県に移管する」のが基本であろう。