12月16日のながさきニュース
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長崎新聞
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営農者ら沈痛「苦労が水の泡」 諫干上告断念
| 緊急会合でうつむいたまま上告断念の経過説明を聞く営農者=諫早市高城町、諫早商工会議所 |
菅直人首相が15日、上告を断念し、開門へとかじを切ったことを受け、諫早市の干拓農地の営農者や開門反対派団体に衝撃が走った。営農者は「これまでの苦労が水の泡になる」と天を仰ぎ、同日夕、市内で緊急会合を開いた開門反対派団体からは「何が政治主導だ」「国を提訴する」との怒りの声が相次いだ。
冷え込んだ同日早朝の中央干拓地。愛菜ファームの西原卓生常務(60)は、恒例となっている月2回の朝礼で従業員約60人にこう呼び掛けた。
「上告断念を翻意してもらえるよう訴えていく。安心して働いてください」
普段は従業員の前ではあまり諫干問題には触れない。が、この日はインターネットで見た上告断念の可能性を伝える記事に居ても立ってもいられなかった。
従業員は黙って聞いた。同ファームの川瀬大三諫早農場長(61)は水源確保の問題などを挙げながら「不安はあるだろう。農業を志して入ってくる若者もいる。将来がかかっているんだ」と従業員の気持ちを代弁した。
だが、その不安は午前11時前、菅首相の口からあっさりと現実になった。
営農者でつくる平成諫早湾干拓土地改良区の山開博俊理事長(63)は「判決通りに常時開門などしたら営農や背後地への被害は甚大。全く何を考えているのか」と憤り、「あの菅首相ならそのくらいやるとも思っていた。今の政権には不信感ばかりが募る」と吐き捨てた。
キャベツを収穫中だったアラキファームの荒木一幸さん(33)は「開いた口がふさがらない。現場にも来ず、東京の記者たちの前で『上告しない』と発表するなんてことがあるか」。吾妻旬菜の長谷川征七郎さん(67)は「営農にどういう手だてをするのか何の説明もないのに決めてしまうとは…」と戸惑いを語った。
開門反対派団体の幹部ら約30人が集まった緊急会合は張り詰めた空気が漂った。
諫早湾防災干拓事業推進連絡本部の栗林英雄本部長は顔を紅潮させながら「全くのパフォーマンス。これは政治でもなければ、哲学もない」と怒りをあらわ。奥村慎太郎雲仙市長も「関係者の意見も聞かず決めてしまった。これが政治主導か」と語気を強めた。
14日に上京し、この日は民主党などに開門反対の陳情中に上告断念を告げられたという宮本明雄諫早市長は「怒り、戸惑い、失望感としか表現できない」とまくしたてた。
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