2010年10月17日 11時22分 更新:10月17日 21時37分
【北京・成沢健一】中国各地で16日に起きた大規模な反日デモを受け、中国外務省の馬朝旭報道局長は17日未明、「合法的、理性的に愛国の熱情を表現すべきで、理性を欠いた違法な行為には賛成しない」として、冷静な対応を呼びかける談話を発表した。中国では17日にも一部都市で反日デモが起きたが、前日のような大規模デモは確認されておらず、当局は封じ込めを強化している模様だ。
談話では「中日は互いに重要な隣国。両国間には敏感で複雑な問題もあるが、我々は対話を通じて適切に解決し、戦略的互恵関係をともに維持するよう主張している」と強調した。一方で、「一部の群衆が日本側の誤った言動に怒りを表すのは理解できる」とも指摘。「愛国の熱情を自らの職務に反映させ、改革と発展、安定の大局を守ってくれると信じている」と訴えた。
17日の中国各紙は反日デモの詳細は伝えず、この談話を目立たない扱いで掲載しただけだった。北京の日本大使館周辺は17日、前日よりも多くの警察車両や警官が配置されており、中国当局は16日の反日デモが各地に飛び火することを警戒しているとみられる。
こうした中、四川省成都から北東に100キロ余り離れた綿陽市で17日午後に反日デモが起き、警官隊と一時衝突したと香港の公共ラジオなどが伝えた。参加者は日本料理店に投石したほか、日系メーカーの乗用車のガラスを割るなどしたといい、警官隊は「デモは非合法だ」と指摘して参加者に冷静になるように呼びかけた。
このほかにも複数の都市で17日に反日デモを行うとの呼び掛けがインターネット上で出ていたが、北京の日本大使館によると実際に行われたと確認されたものはないという。
17日付の中国系香港紙「文匯報(ぶんわいほう)」は、成都でのデモは各大学の学生会が1カ月前から準備を進めてきたと報じた。学生会は共産党や政府の指導下にある団体で、ネット上の呼び掛けで規模は膨らんだが、実態は官製デモだった可能性が高い。
16日の反日デモは、東京の中国大使館前で行われた中国への抗議デモに対抗したもので、中国指導部も日本の対中強硬論に不満を表明するために内陸部でのみ実施を容認したとの見方が強い。ただ、参加者の暴徒化や他都市への飛び火は想定していなかったとみられ、今月下旬にハノイでの開催が見込まれる日中首脳会談に向けて中国側も事態の沈静化を急いでいるようだ。