大手ゼネコン「鹿島」(本社・東京都港区)が建設したJR大阪駅近くの高層オフィスビル(大阪市北区、地上21階、地下1階)で、鉄骨1本が約7センチ横に傾いていたにもかかわらず、工事を続行し、完成させていたことが16日、鹿島への取材でわかった。鹿島は「安全性と耐震性は問題はない」としているが、工事中の検査では、データを改ざんして報告していたうえ、所有者や国や大阪市にも事実を報告していなかった。鹿島は今後、補強工事などを検討する。
鹿島によると、問題のビルは08年3月に着工。建設中の測量ミスで、垂直に立てるはずの地下1階~地上3階部分の鉄骨1本(長さ約14メートル)が水平方向に約7センチ傾いた。鹿島関西支店の現場事務所長はミスに気づいていたが、独断で4階以上の鉄骨を逆方向に約7センチ傾けて補正。民間検査機関に提出する資料では、垂直に立っているようにデータを改ざんしたという。
ビルは今年3月に完成。10月にインターネット上に施工ミスについての情報が流れたのをきっかけに社内調査して事実が発覚した。第三者の民間検査機関による調査では安全性に問題はなかったという。鹿島は大阪市や国土交通省に報告、大阪市は11月、建築基準法に基づき、鹿島に対してビルの安全面で問題がないかどうか、調査結果を報告するよう指導した。鹿島の調査に対し、現場事務所長は「工期が遅れるといけないので独断で補正した」と話したという。
鹿島関西支店は「隠蔽(いんぺい)は事実で弁解の余地はない。オーナーやテナントには誠に申し訳なく、担当者を処分するとともに社内の監督体制を強化したい」とコメントした。【酒井祥宏】
毎日新聞 2010年12月16日 11時22分(最終更新 12月16日 13時58分)