戦前戦後の京くっきり 地図291枚、府立資料館で発見
昭和初期から戦後にかけての京都市内の街並みを細かく記録した地図「京都市明細図」291枚が16日までに、京都府立総合資料館(左京区)で見つかった。錦市場の地図には「乾物」「タマゴ」「魚」など商店の取扱商品が記されており、当時の活気が伝わってくる。四条通東洞院東入ルにあった銀行支店が分割されて占領軍の図書館が置かれていたり、河原町御池に占領軍駐車場やテニスコートがあるなど、占領下の様子が浮かび上がる。
明細図は、1927(昭和2)年当時の建物の区画が記載されており、戦後に商店1軒ごとの取扱商品が加筆されている。同時期の市内の詳細な地図は他に確認されておらず、研究者は「京都の都市形成過程を知る貴重な資料」と注目している。
保険会社でつくる「大日本聯(れん)合火災保険協会」が火災保険の保険料率算定のために作成した。291枚のうち、表紙などを除く厚紙286枚は縦40センチ横55センチで、縮尺1200分の1で記録している。府庁の倉庫から90年に資料館に移管し、今年10月の蔵書整理で確認した。
戦前の作成時に建物1軒ごとの外枠と主要施設の名前を記し、戦後の51(昭和26)年ごろに手書きで建物の形状や用途を加筆し、数字で階数を示した。小さい商店でも「服地」「饅頭(まんじゅう)」などの取扱商品が分かる。用途別に店舗は赤色、公的施設は茶色など縁取りで色分けしている。区画整理で土地利用が大きく変わった郊外には、新しい地図を張り付けている。
京都市明細図のような「火災保険地図」は地理学の分野で注目されているが、現存は少ない。京都市内の図で近い時期で確認されているのは、中京区新京極付近を描いた54年作成図だけという。
資料館歴史資料課の福島幸宏主任は「詳しく調べることで新たな京都像が見えてくるだろう」と期待する。窓口で申請すれば閲覧できる。
□変遷、興味深い
京都府立大文学部の上杉和央准教授(歴史地理学)の話 まるで戦前から戦後直後の京都の街並みが浮かび上がってくるようだ。80年以上前からの変遷を家屋1軒ごとにたどることができ、興味深い。四条通の店舗の移り変わりや、いわゆる田の字地域の町家の変化も追うことができる。デジタル化すれば、江戸時代や現在の地図と重ね合わせて比較できるし、携帯端末で見ながら観光やまち歩きも楽しめる。
【 2010年12月16日 15時58分 】
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