2010年12月15日15時3分
日本銀行が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の景況感を表す「業況判断指数(DI)」が2009年3月調査以来7四半期ぶりに悪化した。エコカー補助金の打ち切りや米国景気の減速などで、リーマン・ショック後の景気回復の足取りにブレーキがかかり、「踊り場」に入っていることを裏づけた。
短観は四半期ごとの調査で、今回は11月11日〜12月14日に調べた。DIは景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値で、全体的な企業の景気認識を表す。
大企業・製造業のDIは前回の9月調査を3ポイント下回る「5」。なかでも、自動車は11ポイント悪化の「21」、電気機械は12ポイント悪化の「2」だった。
自動車は9月上旬に政府のエコカー補助金が終わり、生産が落ち込んだ。また、夏からの急速な円高で、自動車、電気機械とも輸出が伸び悩んだとみられる。
今回の調査では、10年度下期の想定為替レート(大企業・製造業)は1ドル=83円87銭。想定レートを調べ始めた1996年度以降では最も円高水準になっており、輸出の環境は悪くなっている。
大企業・非製造業は前回調査を1ポイント下回る「1」。前回は08年9月以来2年ぶりにプラスに転じたが、早くも改善の動きが鈍った。
なかでも、小売りが4ポイント悪化して「マイナス3」に落ち込んだ。夏に猛暑で飲料や衣料、家電などが売れた反動や、10月のたばこ増税による販売減など逆風が重なった。
景気の先行きへの認識はさらに厳しい。11年3月の見通しを聞いたDIは、大企業・製造業が「マイナス2」、同・非製造業が「マイナス1」。先行きに不安を感じる経営者が増えている。
ただ、今後の景気をうらなう意味で重要な設備投資には前向きな動きもある。大企業・全産業の10年度計画は前年度比2.9%増で、前回の同2.4%増から0.5ポイント増えた。中小企業でも製造業は同マイナス0.5%から同8.3%とプラスになった。経営者の投資意欲は大きくはそがれていないことが示された。
雇用面では新卒採用の厳しさが際だった。大企業・全産業の10年度の新卒採用計画は前年度比31.1%減で、94年度の同32%減に次ぐ過去2番目の落ち込みになった。ただ、「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断DIは全規模・全産業で前回より1ポイント減の「6」となり、過剰感がやや和らいだ。(上栗崇)