ウトロ土地売却 破談危機 債権の配分案、宇治市が拒否

 在日朝鮮・韓国人が多く住む宇治市のウトロ地区で、韓国政府の支援金による土地売却計画が破談の危機を迎えている。計画は最終段階に入っていたが、土地を差し押さえている宇治市が、地権者の示した債権配分案を拒否した。韓国政府を巻き込んだウトロの土地問題の解決は大きく後退する恐れが出てきた。

■韓国支援の計画、最終段階も…

 ウトロの土地問題は2007年11月、韓国政府が30億ウオン(当時約3億8千万円)の土地購入支援金の支出を決定。民間資金と合わせた5億円で地区の東半分を住民側と韓国政府側の2財団が買い取ることで関係者が合意した。

 すでに住民側の財団が寄付などで集めた1億3千万円で東側土地の一部約2750平方メートルを購入。一方、韓国側財団は韓国政府の支援金が為替の変動で目減りしたため、当初予定の約半分の約3800平方メートルを1億8千万円で買い取る交渉を進めてきた。

 地権者の西日本殖産(大阪市北区)によると、土地は同社の固定資産税滞納で宇治市が差し押さえ、整理回収機構(RCC)も債権を持つ。西日本殖産は今年9月、支援金1億8千万円から諸経費を除いた全額を両者に分配する配分案を提示した。

 市は、RCCに優先して約3千万円を受ける権利があるが、同社は「RCCの配当を増やす代わりにウトロ全土地の抵当権を解除してもらえる」などとして約1300万円に減額。市はRCCが受諾した後の10月下旬に配分案を拒否した。

 宇治市の木下賢二税務室長は「全額(約3千万円)を回収しないと税の公正さに欠け住民訴訟になると判断した」と話す。一方、西日本殖産の大畑康一社長は「市は計画の最終段階になって突然反対した。会社に財産はなく、残された道は住民立ち退きの強制執行しかない」と話している。

 ウトロ町内会の役員は「問題解決を切望しているが、売買の直接の当事者ではないのでコメントできない」と話す。土地を購入する韓国側財団理事長のハイ薫弁護士は「韓国国会への報告が必要なので、一刻も早く問題を解決して」と願っている。

<ウトロ地区> 太平洋戦争中、京都飛行場の建設に従事した韓国・朝鮮人の宿舎が置かれ、戦後もとどまった在日1世と子孫ら約200人が住む。地権者による住民の強制立ち退きの恐れがあったが、韓国政府の土地購入支援で危機は回避。住環境整備などを検討する国、府、宇治市の協議会が設立された。

【 2010年12月14日 17時54分 】

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