鹿児島夫婦強殺、被告「事件当時は車で仮眠」

　鹿児島市の高齢夫婦殺害事件で、強盗殺人罪などに問われた同市三和町、無職白浜政広被告（７１）の裁判員裁判は１６日、鹿児島地裁で被告人質問が行われ、白浜被告は、事件当時の行動について「自分の車の中で仮眠していた」などと、事件への関与を改めて否定した。弁護側が捜査資料の大部分を証拠とすることに同意せず、裁判員裁判で過去最多となる２７人の証人が出廷した異例の裁判は、１７日の第１０回公判で結審する。

　起訴状では、白浜被告は昨年６月１８日夕から１９日朝の間に、夫婦宅に強盗目的で侵入、夫婦をスコップで殴り殺害した、としている。

　この日の被告人質問で、白浜被告は、弁護側から事件当時の行動を問われると、同１５日に受け取った年金を１７日までにパチンコで使い果たしたと説明した上で、「同居する姉と会うのが嫌で、夜まで車で仮眠してから家に戻った」と供述した。

　また、「現場にあった被告の指紋などは捏造(ねつぞう)」との主張について、検察側から捏造する人物の心当たりを尋ねられると、「警察です」と答えた。

　ニュースの映像無断で証拠提出、ＮＨＫが抗議へ

　白浜被告の弁護側は１６日の公判で、偽造指紋に関するＮＨＫのニュース映像を無断で証拠として鹿児島地裁に提出、採用された。映像は法廷で数分間上映され、ＮＨＫは弁護側と地裁に抗議する方針。

　映像は、シリコンで偽造指紋を作成し、日本への密入国を斡旋(あっせん)した韓国人らのグループが逮捕された、という内容で、今年５月に放映された。

　弁護側は公判で、事件現場で採取された被告の指紋について、「偽造が可能であることを証明する」と説明した。

　ＮＨＫ鹿児島放送局の森田泰孝・副局長は「極めて遺憾。弁護側と裁判所に厳重に抗議する」とコメント。弁護側は読売新聞の取材に「まだ抗議を受けておらずコメントのしようがない」としている。