鹿児島市で09年、高齢夫婦を殺害したとして強盗殺人罪などに問われた白浜政広被告(71)に対する鹿児島地裁の裁判員裁判で「指紋の偽造は可能」と主張する被告の弁護人が16日、指紋偽造を報じたNHKのニュース映像を無断で証拠申請し採用された。NHKは被告弁護側と裁判所に厳重に抗議するという。
採用された映像は、シリコーンで指紋を偽造し、不法入国を手助けした男が韓国で逮捕されたことを報じたもの。弁護側は公判で「指紋の偽造は簡単」と主張しており、それを裏付けるため証拠申請した。
NHK鹿児島放送局の森田泰孝副局長は「弁護側から事前連絡はなかった。ニュースの証拠申請・採用は、憲法で保障された国民の知る権利を侵害することにつながり極めて遺憾」とコメント。被告の主任弁護人は「立証趣旨を明らかにするため提出した。NHKから抗議は来ていないのでコメントすることはない」と話した。
この日午後の被告人質問では、現場で採取された指紋や細胞片のDNA型が被告と一致した点について検察側がただし、白浜被告は「逮捕後に採取した指紋、掌紋を警察官が転写した」と話した。
起訴状によると、白浜被告は09年6月18日午後4時半~19日午前6時ごろまでの間、金品を奪う目的で蔵ノ下忠さん(当時91歳)方に侵入し、忠さんと妻ハツエさん(同87歳)の頭や顔を多数回殴り、殺害したとされる。17日に論告求刑と最終弁論があり結審する。判決予定は12月10日。【川島紘一、村尾哲、黒澤敬太郎】
毎日新聞 2010年11月17日 西部朝刊