個人薬局から悲鳴 大手ストアで処方薬にポイント

2010.12.15


大手ドラッグストアで広がる処方薬のポイントサービス。消費者にはウケがいい【拡大】

 大手ドラッグストアがポイントの適用範囲を拡大させている。今秋あたりから、ドラッグストアの調剤薬局で医療機関から受けた処方薬を受ける際、患者負担分の代金に応じてポイントが得られるようになった。たまったポイントは各ストアの医薬品や日用品に代えられるため利用客からウケがいい。だが、個人や小規模薬局は「患者を奪われかねない」と猛烈に反発している。

 「ポイントカードをお持ちですか?」

 先日、千葉県内の女性会社員(30)が大学病院で治療を受けた際、ドラッグストアに処方箋を持参したところ、会計時にこう告げられた。処方薬でポイントがつくとは思わなかっただけにかなり得した気分になったという。

 処方薬でポイントを付ける薬局が急速に増えている。ドラッグ最大手のマツモトキヨシホールディングスでは主力店「マツモトキヨシ」のうち、調剤部門を持つ約80店などで処方薬のポイントサービスを始めた。ツルハホールディングスでも「ツルハドラッグ」など調剤部門を備える全国約200店で導入。グローウェルホールディングスでは傘下の「ウエルシア関東」をはじめ関西のグループなど約420店でスタートさせている。

 各ストアともに通常の商品と同様、購入金額の1〜3%分をポイントで還元する仕組み。たまった分は保険が適用される処方薬の購入以外なら使えるため「正直、利用者のウケはいい」(都内の大手ストア)。

 だが、黙っていないのが個人の調剤薬局。患者を奪われがちで死活問題に直面しているからだ。

 日本保険薬局協会は「健康保険法では治療代金を過不足なく支払うことが義務づけられている。ポイント制度は支払い時に減免していないとはいえ間接的に減免している」(担当者)。日本薬剤師会も「処方薬の公定価格制度は処方箋のサービスを均一に受けるためのもので、ポイントによる過剰な商業サービスは理念に反する」(広報)と指摘し、「結果的な値引き」に危機感を募らせる。

 監督する厚生労働省はこの事態をどうみているのか。ポイント範囲の拡大について「特に規制はない」との解釈を示唆しており、静観の構えのよう。業界内は紛糾するものの、ポイントに慣れた消費者からすれば当然の流れの側面も。もはや止められないか。

 

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