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[24855] 疾風迅雷な彼女【StS再構成・オリキャラ有り】
Name: MacTec◆8f28006f ID:0e220d18
Date: 2010/12/11 13:54

フェイトをメインとしたStS再構成ものです。
参考資料:Nanoha Wiki



[24855] Prologue~出会いは偶然に
Name: MacTec◆8f28006f ID:0e220d18
Date: 2010/12/11 13:55


「フェイト、少し時間あるか?」

時空管理局本局を所用で訪れていたフェイトを義兄であるクロノが呼び止めたのは全くの偶然だった。
たまたま通路で義妹を見かけ、たまたま連れていた知人を彼女に紹介したかっただけだったのだが、それが彼女の運命を左右する事になるとは夢にも思わなかったのだ。

「はじめまして、アレックス・ハミルトン執務官です」
「フェイト・T・ハラオウン執務官です」

自分と同じ執務官だと名乗った、薄茶色の髪に真紅と濃緑のオッドアイを持つ男。
アレックス・ハミルトンとフェイト・T・ハラオウン、二人の出会いは全くの偶然から始まった――。



Prologue~出会いは偶然に



「以前からクロノ提督から君の事は聞いていました、とても優秀な執務官だと。それで一度お会いしたいと思っていたんです」
「優秀だなんてそんな、恐縮です。それに私もハミルトン執務官の事は存じ上げていますよ。若手の中ではNo.1だとか」


アレックス・ハミルトン執務官、19歳。入局10年。所属部隊は本局特務四課。超難関と言われる執務官試験をストレートで合格し、その後も様々な任務をこなし着々と昇進を重ねてきた。現在は一等空佐扱いである。


互いに自己紹介を済ませ、食堂に場所を移した。クロノは仕事がある、と既に自室へと戻っている。
丁寧な口調で穏やかに話すアレックスにフェイトは好感を抱いたが、同時に『何故クロノは私にこの人を紹介したかったの?』という疑問を感じ、念話で聞いてみた。

『いや、特に深い意味はないんだが。たまたま見かけたからとりあえず紹介しておこうかな、と』
『そっか…うん、わかった』

実際に意味はないのだ。偶然に偶然が重なっただけである。フェイトとしてもこれ以上追求する必要はないし、何より彼がいるこの場の空気を好ましく感じているのは確かなのだから。

その後、今までお互いが関わった事件から趣味の話までいろいろな事を話した。同じ役職の経験を聞くのはもちろん為になったが、それ以上に彼と過ごす時間に心地好さを感じていた。その理由はこの時にはまだ分からなかったのだが。

「ところで、君は今度八神二佐の新部隊に行くらしいですね」
「はい、『機動六課』ですね。一応、出向という形になりますが。それと、私の事はフェイトで構いませんよ。同期なんですから」

機動六課はフェイトの親友である八神はやて二等陸佐が部隊長を務める新部隊である。古代遺物管理部に属し、ロストロギアの保守管理が主な任務になる。

「そうか、じゃあお互いに。実は堅苦しいのはどうも苦手で……」
「あら、じゃあ丁寧な話し方はお芝居なのかな?」

フェイトも口調を改めてフランクに話す。

「…印象が変わったかな?」

少し表情を曇らせるアレックス。フェイトはそんな彼を不謹慎にも『可愛い』と思った。

「そんな事ないよ、私もあんまりお堅いのはちょっと……」
「そうか、それは何よりだ。あはは……」

鼻の頭を掻いて照れるアレックスは年齢よりも幼く見え、執務官という激務の中で実績を挙げるような人物とは思えなかった。だが、彼の現場での姿を見ればフェイトの印象は大きく変わるはずだ。

「話を戻すけど、実は八神二佐とは顔見知りでね。ある事件の法務関係を担当した時に彼女と一緒になったんだ」
「そうだったんだ…。あれ?なんか聞いた事あるような……」

フェイトは以前、はやてから聞いたある人物の事を思い返してみた。次元犯罪集団のアジトを襲撃した際の担当執務官の話だった。
多数の違法魔導師が関わったこの事件は、担当部隊だけでは対応仕切れず、危うく犯人を取り逃がす寸前まで追い込まれた。
その窮地を救ったのが担当執務官の『活躍』だった。空から援護していたはやてはその時の様子をこう語った。

『雷神や。私は雷神をみたんやフェイトちゃんっ!』

三十人以上にもなる犯人達を、正に雷神の如き電撃系の攻撃で次々と叩き伏せる彼は普段の穏やかな姿からは想像できないような凄まじさだった。あれで死者が出なかったのは奇跡と言えるかもしれない。
全ての犯人を沈黙させ、武装を解いた彼は普段の心穏やかな青年に戻っていたのがはやてを安心させた。

「はやてが言ってた『電撃執務官』って、もしかして……」
「……多分、僕の事だと思うよ」

「電撃執務官って何?」という顔のアレックスを見て、フェイトははやての話がかなり脚色されていると思った。ちょっとしたギャップによってはやても混乱したのだろう、と。

後にそれがフェイトの勘違いである事が思い知らされたのだが―。

「名前までは聞いてなかったんだけど、凄い魔導師がいるって事だけは彼女から」
「彼女らしいね。まぁ、そんな訳もあって彼女とは時々連絡を取ったりするんだけどちょっと気になる事があって……」

そう言ってモニターを展開して機動六課の部隊編成表を出す。フェイトはアレックスの隣に席を移してモニターを覗き込む。その時、流れた髪からした香りにアレックスはドキッとしたが気にしないふりをして話を続ける。

「新人の中にストライクアーツを使う子がいるよね。ええと……」

パネルを操作して『スターズ分隊』のメンバーを表示する。その中から青い髪に明るそうな瞳が印象的な少女をピックアップする。

「スバル・ナカジマ、この子がどうかしたの?」

フェイトは小首を傾げてアレックスの表情を窺った。眉間を顰めてゆっくりと話し始める彼は少し辛そうに見えた。

「この子の母親……クイントさんは僕の昔の先輩でね。ギンガやスバルとは小さい頃からの顔見知りなんだよ」
「そう、だったんだ……」

スバルとギンガ。二人と初めて会ったのは四年前の空港火災の折、救助活動を行った時だった。もっとも、この時フェイトが助け出したのは姉のギンガの方で、スバルを救出したのは友人の高町なのはであったのだが。
スバルとはその後、彼女と同じく六課に配属されるティアナ・ランスターのランク昇級試験の時に初めて顔を合わせたが、確かにギンガとよく似ていると感じた。

「あれ?あの子達を小さい頃から知ってるって事は、もしかして……」
「ああ、もちろん『あの事』も知ってるよ。あの子達を保護した現場には僕もいたからね」
「……そっか」

二人とも視線を落として黙り込む。スバルとギンガ、この姉妹が背負う辛い過去を思うと胸が苦しくなる。
重苦しい空気が流れる中、アレックスが雰囲気を変えようと動いた。

「あー、それでだ。実は僕、暫くは主立った任務も無くてだね。もし良かったらスバル達の教導を手伝わせて貰えたらなあ、とか思って」

そう言ってIDカードを見せた。そこに記されている『戦技教官資格』を確認したフェイトは少し考える。

「でも貴方、特務隊所属でしょ?勝手に動いていいの?」
「それは今月いっぱいまで。来月からはフリーで、何か事件が起こるまでは割と自由に動けるのさ」

ちっちっちっ、と人差し指を振ってみせる。そういう事ならばフェイトとしては別に異存は無いし、何よりアレックスと過ごす時間が増えるのは都合が良かった。

(私、何を喜んでるんだろ?)

不思議な感覚を感じながらも、断る気など微塵もないフェイトだった。だが、アレックスが何か大掛かりなサプライズを仕掛けようと企んでいる事などこの時は知る由もなかった――。











[24855] Episode 0.5~インターミッション
Name: MacTec◆8f28006f ID:0e220d18
Date: 2010/12/13 12:05



「で、どうだった?うちの妹は」

フェイトと別れた後、クロノの執務室を訪れたアレックスは開口一番の彼の問いに暫し考え、答えた。

「いいですね。物腰とか感覚とか、僕の好きな雰囲気を持ってるというか」
「…惚れたか?」

クロノは冗談めいた口調で、事実冗談で言ったのだが、アレックスは―

「そうですね、一目惚れしてしまったかもしれません」

と、極めて真面目にこう答えた。
意外な返事に狼狽えたのは冗談のつもりで聞いたクロノの方で。

「そ、そうか。それはまた、良かったというか、悪かっ……あ、いや……」

バカ兄貴丸出しの青年には次元航行部隊のエリート提督の威厳など、微塵も感じられなかった。
当のアレックス本人も、フェイトと会って過ごした時間に大変な心地好さを感じていたし、彼女自身に興味を持ったのは紛れも無い事実だった。

(彼女とまた会う口実は出来た。だけど、更にその先が必要だな……)

アレックスがクロノの部屋を訪ねたのはフェイトと会った感想を報告する事などではなく、ちょっとした『頼み事』をする為だった。機動六課部隊長・八神はやての上司で六課の後見人である彼に。




「……なるほど。どうやら本気みたいだな」
「私事でこんなお願いをするのはいけない事だとは思うんですが……」

一通り話した後、アレックスは恐縮して頭を下げる。クロノにした『頼み事』はある意味筋は通っているが、その裏には極めて個人的な理由が含まれていた。それを実現する為にクロノの地位を必要とする辺り、かなり我が儘な事を言っているな、とアレックス自身は自覚している。

「…まあいいだろう、六課にとっても利はあるしな。だが、僕だけでは足りないからカリムとの連名で申請しておこう」
「お願いします。騎士カリムには僕からもお願いしておきます」
「ああ、そうしておけ……『騎士アレクサンデル』」

アレックスは苦笑して再び頭を下げる。

(騎士アレクサンデル、か。久しぶりに聞いたな)

聖王教会騎士、アレクサンデル・ハミルトン。それが彼の正式な肩書きである。
この事はフェイトにはまだ話していないが、これから先、いくらでも話す機会はあるだろう。

何はともあれ、アレックス・ハミルトンの機動六課への『異動』が決定した――。








[24855] Episode 1~再会は最悪に(修正版)
Name: MacTec◆8f28006f ID:0e220d18
Date: 2010/12/15 11:34


此処はいったい何処なんだろう―。
上も下も、右も左もはっきりしない。
体が宙に浮いていてどうにもおかしな感覚だ。
だけど、そんな事よりもっとはっきりしない事がある。

―『僕』はいったい、『誰』なんだ?

自分が誰なのかわからないなんて、こんなおかしな事もない。
ゆっくりと思い出してみよう。

そう、段々と思い出してきた。
僕はアレックス・ハミルトン。
管理局の魔導師で執務官。
同時に聖王教会の騎士でもある。
本名はアレクサンデル――。

『違う』

――え?

『違う』

違うって、何が?

『君はアレックスでも、アレクサンデルでもない』

何を言ってるんだ?っていうか、君は誰だ?

『僕は君さ』

……言ってる意味が全然わからないな。ちゃんと理解できるように言ってくれよ。

『僕は君であり、君は僕なんだ。そう、僕たちの本当の名前は――』

名前は?

『 』







「……………っ!!」

ベッドから飛び起きるとそこは紛れも無い自分の部屋。アレックスは額の汗を拭うと自嘲めいた笑みを浮かべる。

「……またこの夢か」

ここ何年かの間に頻繁に見るようになった奇妙な夢。内容はいつも変わらず、目覚めが最悪なのも相変わらずだ。
更にこんな夢を見る理由もわかるだけに、余計に質が悪い。

「それにしても、段々と夢を見る間隔が短くなっている気がするな」

最初は何ヶ月かに一度くらいだったのが、ここ最近では一月に一度くらいから数週間に一度と、徐々に短くなって来ている。

「何かが起こる前兆とかじゃないよな」

『まさかな』とは思いつつ、自らに課せられた運命を思うと楽観視出来ないのも確か。だが、一度はその事実を受け入れ運命に立ち向かっていくと決めたはずだ。

「考えても始まらない、管理局に入ったのも次元犯罪を追っていけば必ず奴に近づくと思ったからだ」

そう、その為に自分は此処にいる。

『ジェイル・スカリエッティ』

彼によって決められてしまった自らの運命に決着をつける。それには今回の機動六課への異動はうってつけの機会になるはずだ。

「……まぁ、それだけが理由じゃないんだけど」

アレックスは同僚になる女性執務官の顔を思い浮かべると頬が緩むのを感じていた――。



Episode 1~再会は最悪に



0075年、4月某日
古代遺物管理部・機動六課の部隊発足の日。フェイト・T・ハラオウンは同僚で親友でもある高町なのは一等空尉と共に部隊長である八神はやて二等陸佐の元を訪れた。

「なのはちゃん、フェイトちゃんも来たな。ちょうどいいタイミングやね、ハミルトン一佐」
「そうだね、両隊長が揃ったところで自己紹介といこうか」

そこで再会した人物に驚き、同時に嬉しく感じたのだが、それがやがて疑問へと変わっていった。

「ハミルトン一等空佐、本日付けで機動六課・現場管理官に就任します」
「え?」
「一佐にはスターズ、ライトニング両分隊を現場で纏める役目…要するに戦闘総指揮をお任せする事になるんよ」

はやての説明にリインが補足を加える。

「はやてちゃんに全体の統括に専念して貰う上で、一佐の役割は大変重要なものになりますですよ」
「ちょ、ちょっと待ってはやて。だって彼は上官でしょ?上官が役職上とは言え下に就くなんて」

(いやいや、そうじゃなくって。私が言いたいのは……)

フェイトはとりあえずもっともな疑問を口にする。本当は別に言いたい事があるのだが。

「そうだよね……立場的にははやてちゃんはハミルトン一佐に命令する形になっちゃうんだもん」
「命令なんてせえへんよ」
「うん、命令は聞かないな」
「「え?」」

はやてとアレックスの言葉に二人とも間の抜けた声を出してしまう。したり顔のはやてが苦笑して説明する。

「私が一佐にするんは、『命令』やのうて『お願い』や。部下が上官にお願いするのに別に問題なんかあらへんやん」
「そういう事。僕はそのお願いをちゃんと聞く度量は持ってるつもりだよ」

余りにも有り得ない事を平然と言う、部隊のNo.1とNo.2。こんな指揮系統、常識的に考えればNGだろう。
だが、それこそが試験運用的な部隊の強み。今回限りの『裏技』だ。

「お願いかぁ……そういう事ならいっか」
「なのは、あのね……。アレックス、どういう事?」
「どうって、何がだい?」

フェイトが睨みつけるように言うので、アレックスは少し臆すように尋ねた。

「貴方はスバル達の教導を手伝うだけだったんじゃないの?六課に転属、それも戦闘指揮官だなんて聞いてないよ」
「そりゃそうだよ、今初めて言ったんだから」

少しからかうように言う。アレックスとしては冗談のつもりだったのだが、それがフェイトの気に障ったようだった。

「わかりました、現場の指揮はお任せします。フォワード達とも顔合わせしたいので失礼させていただきます」
「あ、ああ」

無表情のまま敬礼し、吐き捨てるように言って退出する。

「フェ、フェイトちゃん、待ってよ!」

フェイトの突然の怒りようになのはも訳がわからず、ただ彼女の後を追うのみだった。

『ありゃりゃ、フェイトさんどうしちゃったんでしょうね~』
『なんや、険悪な雰囲気やな。なんも起こらんとええんやけど』
『ですねぇ』




「ねえ、アレックス君。なんでフェイトちゃんは怒っているの?」
「そんな事僕に聞かれても。いた……フェイト隊長!」

一度はフェイトを見送ったが、先ほどの彼女の態度にいまひとつ納得がいかず、直ぐさまなのはと一緒に後を追ったアレックスは一人通路を進むフェイトを見つけ、声をかけた。

「ハミルトン一佐……。何か御用ですか?」
「一佐はよしてくれ。以前、同期だからと言ったのは君の方じゃないか」

先日話した時はもっとくだけた感じだったのに、今のぎこち無さに少しばかり不満を感じた。

「今は正式に上官じゃないですか。敬語を使うのは当然でしょう?」
「それはそうだが、なんか刺のある言い方だな。何か僕に不満でもあるのか?」

別にこんな話がしたくて声をかけた訳ではないが、売り言葉に買い言葉というか、どうにも変な方向へと会話が逸れていく。
なのはは黙って二人の様子を見守っている。

「別に不満なんてありません。ちゃんと命令には従います」
「だから、そんな形式ばった事を言いたいんじゃなくてだな」
「じゃあなんなんです?一佐が何を仰りたいのか全然わかりま――」
「お兄ちゃん?」

今にも爆発しそうな二人の間に割って入る声。
水を差された体の二人が声の方向に首を向けると、そこには見慣れた顔があった。

「……スバルか」

アレックスがバツの悪そうな表情で視線を逸らす。何処から聞かれていたのか、なんともまずい場面を見られたものだ。
スバルとは幼い頃からの顔見知りで、自分を兄のように慕ってくれる。ギンガなどは意外にもスバル以上に甘えてくるぐらいだ。そんな事もあり、こんな場面で出くわすのはちょっとというか、かなり情けない。
「フェイトさん、なのはさんも。お兄ちゃんと何かありました?」
「え?う、ううん…別に何でもないよ。ねぇ?、アレックス」
「あ、ああ。何にもないぞ、なあフェイト」

『あはは』とわざとらしい薄笑いを浮かべる二人。スバルはそんな二人を訝しげに見つめていたが、ため息をつくと「そっか」と一言。

「それよりスバル。もうすぐ式が始まるから急いだ方がいいんじゃないかな?」

スバルが間に入った事で険悪な空気に変化が見られた。それを察したなのはが素早くフォローに入る。

「そうですね、そうします。ティアも待ってるし」
「私たちも直ぐに行くからね」

スバルが二人から離れる瞬間、アレックスに念話で話しかけて来た。

『駄目だよ、お兄ちゃん。ケンカなんかしちゃ』
『お前な。別にケンカなんて』
『しっかり聞こえてたんですが?』
『…ぐっ』
『もぉ…。フェイトさんにちゃんと謝ってね』
『僕が悪いの決定かよ……はいはい、わかりました』
『あはは、よろしいっ。じゃあまた後でね』

通路の曲がり角に消えるスバルを見送ると、アレックスはフェイトに向き直った。

「……ごめん」
「べ、別にアレックスが謝る事なんてないよ」
「でもごめん」

しゅんとなって謝るアレックスを見ていると先ほどまでの自分が恥ずかしくなり、彼に対する怒りが段々と薄れてきた。

「フェイトちゃん、よくわからないけどもう許してあげたら?アレックス君、可哀相だよ」
「べ、別に怒ってなんか…」

言いかけたフェイトだったが、なのはの表情が『素直になって』と訴えているように見え、従う事にした。

「…じゃあ、今夜食事に誘って下さい。それで無かった事にするね」
「了解。何でも好きなものをリクエストしてくれ」
「うん、じゃあ遠慮なく」
「私はお邪魔みたいだから遠慮しておこうかなぁ」

ニヤニヤとした顔で突っ込むなのは。端から邪魔する気などないのだが、二人に進展が見られそうで楽しみなのは間違いない。
「な、なのはっ」
「あははっ。じゃあ私は先に行ってるね」
手を振って走り去るなのは。残された二人は恥ずかしそうに俯いたままで、まともにお互いの顔が見られない。
だが、フェイトははっきりと感じていた。自然と頬が緩んでくる。ああ、初めて彼と会った時もこんな感じだったな、とフェイトはアレックスとの出会いを思い返していた。

(うん、私も彼に謝ろう。ちゃんと話して、ちゃんと理解し合おう)

フェイトは気持ちが穏やかになっていくのを感じ、こんな気持ちにさせてくれるアレックスの事を再び意識し始めたのだった――。






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