女優の渚まゆみさんは一年の半分はロンドン暮らしだ

●渚まゆみ

　深作欣二監督の「仁義なき戦い」など、６０〜７０年代の映画で活躍した渚まゆみさん。パッチリした大きな目とハスキーな声が色っぽかった。７３年には２７歳上の作曲家・浜口庫之助さん（９０年死去）と結婚、世間をアッといわせた。渚さん、今どうしているのか。

　会ったのは地下鉄銀座駅そばの喫茶店。アレレ、想像していたより小柄だ。

「よくいわれます。身長１５４センチで、体重は４６キロ。最近、少し痩せたかな。病気をしたわけじゃなく、お酒を控えるようにしたら、自然に体重が落ちたの。あ、でも、ちょっと前、倒れて救急車に乗っちゃった。血圧が急に上がって。日本とロンドンを行ったり来たりしてるから、体調がおかしくなったのかもしれないわ」

　日本―ロンドンを往復？

「３６歳になる一人娘がロンドンにいるの。ロンドン大学に留学して大学院に進み、抗がん剤と遺伝子の研究で博士号を取ったのよ。その後、ケンブリッジ大学の研究所で働いて。今は４０代のイギリス人のグラフィックデザイナーと結婚して、２歳の孫娘がいるもんだから、年の半分はロンドンに行ってるわけ。朝５時半くらいに起き、ゴールデンレトリバーとキャバリアを連れて近くの公園を１時間くらい散歩した後、朝食を作る。だけど、そうやって朝早くから動いていたら、娘が“落ち着かない！”と怒っちゃって、この前は予定を変更して早く帰ってきちゃったわ」

　アリャリャ。

「娘や孫がかわいいだけじゃなくて、ロンドンって音楽とか芸術面で刺激を与えてくれる、素晴らしい街なのよね。アメリカ人歌手のトニー・ベネットやニール・セダカが、ロイヤル・アルバート・ホールって大きな劇場をいっぱいにして歌ったりしてる。トニー・ベネットは８４歳、ニール・セダカは７１歳よ！　お客さんの雰囲気も日本とは違ってノッてるの。そんなシーンを目の当たりにすると、私も何かやりたいなって思うわ。とくにナレーションとか声優とか、声のお仕事をしたいな」

●「いろんな思い出がいっぱいある」

　ハマクラさんの印税がガッポリ！

当然、何もしなくても暮らしていけるだろうに。

「ホント、感謝、感謝よ。主人のことは今もよく、家でワインを飲みながら映画を見たりすると、しみじみ思い出すわ。“この映画の主人公みたいに、あのときの主人のあの言葉、しゃれてたな。なのに、私、わかってあげられなかったな”とかってね。１７年の結婚生活のうち、１０年は検査だ、入院だって感じだったけど、いろんな思い出がいっぱいあるのよね。再婚？　一度も考えたことがありません。でも、男友達はいっぱいいますよ、フフフ」

　さて、渚さんは頌栄女子学院高校１年のとき、大映の１４期ニューフェースになり、６１年、「夕やけ小やけの赤とんぼ」で主演デビュー。大映映画のほか、深作欣二監督作品でセクシーな魅力を発揮した。

「主人にはセクシーじゃない、って言われたのよ。“明るいのが取りえだ”って。飲みに連れて行ってもらっても、遅い時間になると、“ハイ、もう君は帰りなさい”って子供扱いだったし」

　ハマクラさんとの思い出が詰まった六本木のマンションに暮らす。

（日刊ゲンダイ2010年12月13日掲載）