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松田喬和の首相番日誌:実績なくして浮揚なし

 今週のぶら下がり会見で見せた菅直人首相の表情はこわばっており、疲労感が漂っていた。会見場所に登場すると、開口一番「はい、こんばんは」が慣例となっているが、普段のような笑顔も消えていた。

 閣僚の失言が相次ぎ、内閣支持率の低下に歯止めがかからない。国会答弁を軽視するような発言をした柳田稔法相の処遇で、一段と厳しい情勢に追い込まれている。

 「このような状態が続くと、良い意味での民主党らしさが失われてしまうのではありませんか」「かなり(閣内を)引き締めなくてはならない時期では」と、17日のぶら下がりで聞いてみた。「緊張感をより持たなきゃいけないという意味ではその通りです」が、菅首相の答えだった。

 政権交代から1年以上が過ぎた。平時はこなせても、非常時での民主党の政権維持術は思うようには向上していない。菅首相が政権浮揚のテコと考えていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)横浜会議も、国民から納得されるような成果はなかった。

 中曽根康弘元首相は、中国の胡錦濤国家主席との会談で、菅首相が下を向き続けたテレビでのシーンを例に引き、「主導権を発揮し、政治をリードする気迫に欠ける」と、酷評。また、福田康夫元首相は、「官僚を政治家は使いこなさなくては、日本は立ち行かなくなってしまう。危機だ」と警告。「そのためには事務次官会議を復活させ、政府内で情報を共有させるべきだ」と提言する。

 自民党時代、政調会長や運輸、建設相を経験している国民新党の亀井静香代表は仙谷由人官房長官に電話でこう助言した。「国民が求めることは断固やり抜き、中央突破を」と。さらに、「おまえさん一人が悪役を買っても、政権が浮揚するわけではない」と、諭したという。

 これ以上、負のスパイラルに陥らないためには、まず実績の提示が肝要だ。そのためには、トップの指導力プラス強靱(きょうじん)な胆力が強く求められる。(専門編集委員、65歳)

毎日新聞 2010年11月20日 東京朝刊

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