2010.11.23 05:00
昨年の衆院選で民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)は修正の可能性も。菅直人首相には国民への十分な説明が求められる【拡大】
政治家にとって「公約」とは何か。守らなければならない一線なのか、単なる努力目標なのか。この疑問を抱いていたら、8年近く前の国会質疑を思いだした。
「これから何を聞いても、首相が言うことは『この程度だ』というふうに皆さん聞くでしょうね」
2003年1月23日の衆院予算委員会で、小泉純一郎首相(当時)を舌鋒(ぜっぽう)鋭く追及したのは、いまや首相を務める菅直人民主党代表だった。「財政健全化の第一歩として国債発行を30兆円以下に抑える。首相は国民に対して約束したんじゃないですか!」と迫った菅氏に対して、小泉氏は「大きな問題を処理するためには、この程度の約束を守れなかったというのは大したことではない」と言い放ったのだ。当時の小泉政権は高い支持率を維持していたこともあって、この答弁はそれほど大問題とならなかった。政権が不安定なときの首相発言であれば、野党の退陣要求が強まっていたかもしれない。
無駄削減による財源捻出(ねんしゅつ)、子ども手当増額、高速道路無料化…。政権交代を果たした昨年の衆院選で民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)に対しては、すでに与党内から財源に見合った現実的修正を求める声が出ている。税収の伸び悩み、社会保障給付増などを理由に民主党の「国民との約束」は修正を余儀なくされる可能性が出ている。だが、その場合には十分な説明が必要だ。
「これだけのことをやるんだ、手を挙げて髪を振り乱して言ったことが現在どうなっているのか、国民の前にちゃんと説明し、謝るべきところは謝る、この率直な態度、言動が(小泉)首相の持ち味であったはずだ」
菅氏の直後に質問した仙谷由人氏はこう指摘した。首相や官房長官に上り詰めた今、当時の言葉を思いだしてもらいたい。言葉はブーメランのように現政権のもとへと返ってきているのだ。(尾崎良樹)