2010年11月23日
柳田法相辞任/政権引き締め課題に対処せよ
国会軽視と受け取れる発言をした柳田稔法相が辞任した。柳田氏は当初続投に意欲を見せていたが、菅直人首相は国会の混乱回避のため辞任を促した。菅内閣では、仙谷由人官房長官の「暴力装置」発言も問題となっている。菅首相は政権を引き締め、内外の山積する課題に対処する必要がある。
任命責任追及の構え
柳田氏は地元選挙区の会合で法相の国会答弁について「個別の事案については答えを差し控える」「法と証拠に基づいて適切にやっている」の二つを覚えておけばいい、と発言した。真剣に審議に臨んでいないと述べているのと同じで、国会軽視のそしりは免れない。辞任は当然だと言える。
マスコミの世論調査で内閣支持率は30%を切っている。菅内閣は中国漁船の領海侵犯事件やメドベージェフ露大統領の北方領土訪問に有効な対策を打ち出せなかった。中国への腰の引けた対応が漁船衝突のビデオ流出につながった。民主党の小沢一郎元代表の「政治とカネ」の問題も放置されている。景気の先行きも不透明だ。
国民の不満が高まっているところに、柳田氏や仙谷官房長官の問題発言があった。柳田氏もさることながら、自衛隊を「暴力装置」と呼んだ仙谷長官は国の守りをどのように考えているのか。政府の第一義の使命は国民の生命と財産を守ることだ。その意味で、自衛隊を敵視するかのような発言をした仙谷長官には閣僚の資質が欠落していると言わざるを得ない。
参院選の民主党敗北で、現在は衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」だ。菅首相は臨時国会の所信表明演説で「熟議の国会」にしていくよう努めると述べたが、現状は程遠い。政権側の相次ぐ失点で野党は対決姿勢を強めている。柳田氏の辞任に対しては菅首相の任命責任を追及する構えだ。政権は危機的な状況にある。
しかし野党は与党との対決ありきでなく、国家と国民の利益を第一に考える必要がある。自民党内では仙谷長官や馬淵澄夫国土交通相への問責決議案提出の意見が強い。これに対し来春の統一地方選を重視する公明党は、早期の衆院解散を避けたいため補正予算成立前の提出には否定的だ。野党が党利党略に陥れば国民の政治不信はさらに高まろう。
もちろん最初に襟を正すべきは与党・民主党だ。外交が迷走したのは明確な方針がなく、場当たり的な対応に終始したためだと言える。仙谷長官の発言を見ても、民主党には主権意識が乏しいのではないか。その意味で武器輸出三原則見直しの論議は一歩前進と言えるが、政府・与党として国家主権を守る姿勢を強く示すべきだ。
今国会の最大の焦点である補正予算案について与党側は24日の成立を提案していたが、野党の攻勢で見送った。与野党ともに実のある審議と速やかな成立に努めなければならない。
緊張感持って運営を
民主党は一連の問題発言を真摯に反省し緊張感を持って政権運営に当たらなければ、政権担当能力に対する国民の不信を払拭できまい。