社説
柳田法相辞任 政権の緩みそのものだ(11月23日)
政権の緩みが出たとみるべきだ。菅直人首相の任命責任が厳しく問われる。
辞任した柳田稔法相は地元の会合で「国会答弁は二つ覚えておけばいい」などと言い放ち、野党だけでなく与党内からも責任追及の声が出ていた。
柳田氏の発言は国会を軽視したばかりでなく、法務行政の威信も大きく失墜させた。閣僚として思慮を欠き、軽率そのものである。
法相は検察改革など重要な課題を抱えている。国民の信頼を失った以上、改革は進めようがあるまい。辞任は当然と言わざるを得ない。
柳田氏は記者会見で「補正予算案を速やかに通すため辞めさせていただく」と述べた。国会対策のため身を引いたと言いたいのだろうが、問われたのは閣僚としての資質であり、勘違いも甚だしい。
法務行政に携わったことがない同氏の法相起用については、当初から不安視する見方があった。
にもかかわらず、首相は起用に踏み切った。問題発言が出た後も「法律に詳しいというよりも国民的観点から物事を判断できる。適任だ」と続投させる考えを明言していた。
その揚げ句、野党に追い詰められ事実上の更迭に踏み切らざるを得なかった。任命責任はもとより事態収拾に向けた判断の甘さは否めない。
首相はきのうの参院予算委員会で辞任はあくまで柳田氏の意思であり、自らの任命責任には当たらないとの考えを示した。任命権者の自覚を欠いた発言であり、逃げの姿勢と言われても仕方あるまい。
気になるのは菅政権の閣僚たちの国会答弁の粗雑さである。
仙谷由人官房長官は自衛隊をめぐる不用意な発言で撤回と陳謝を余儀なくされた。蓮舫行政刷新担当相や岡崎トミ子国家公安委員長らも野党から不十分な答弁を指摘され、陳謝に追い込まれている。
国会答弁は国民への説明責任を果たす場である。柳田氏はもとより、各閣僚がそうした意識を欠いていたなら、民主党政権の掲げる「政治主導」は看板倒れになる。
まして菅首相は国会での「熟議」を強調していたではないか。
内閣を挙げて国会に臨む姿勢をいま一度、確認すべきだ。
自民党は法相辞任を受けて問責決議案を連発し、攻勢を強める構えだという。だが補正予算案を人質にとり、審議拒否するといった旧態依然の国会戦術は許されない。
野党は政策の問題点を洗い出し、論戦を通じて追及するのが筋だ。
各種世論調査で菅内閣の支持率が急落している。来年度予算編成をはじめ内外の重要課題は山積している。政権のたがを締め直すときだ。
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