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北朝鮮砲撃への対応 与野党の協力が不可欠 '10/11/25

 北朝鮮の韓国・延坪島(ヨンビョンド)砲撃による死者は民間人2人を含む4人に増えた。北朝鮮を強く非難し、さらなる挑発行為を許さないという国際社会の声が高まっている。

 菅直人首相もきのう「許し難い蛮行」と非難。再発を防ぐためにとりわけ中国が北朝鮮を抑えるよう求めることを明らかにした。

 全野党に呼びかけた党首会談では、事態の変化に伴い情報を提供する方針を示した。国会対策の面もあるだろうが、進んで野党の協力を得ようという姿勢は一定に評価できよう。

 国会は北朝鮮問題で衆参の集中審議をきょう行う。閣僚の相次ぐ失言に野党が反発するなど荒れ模様だったが、この問題では与野党の足並みがそろった。

 野党は柳田稔前法相を失言で辞任に追い込んだ。次は中国漁船衝突事件のビデオ映像流出をめぐり仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案の参院提出を準備している。問責ドミノで菅政権を追い込もうというもくろみだが、国民の目には党利党略の政局ごっこに映るのではなかろうか。

 仙谷長官は内閣の危機管理の責任者だ。民主党の要請を受け、自民、公明党などは決議案提出を補正予算の採決後に先送りする方向という。混乱を避けるのは当然の措置である。

 今、政府や国会がなすべきは、挑発行為は自らの首を絞めるだけという明確なメッセージを北朝鮮に発することだ。

 政府は追加制裁の検討を始めた。高校無償化の対象に朝鮮学校を含めるとした方針をいったん停止する措置も浮上している。北朝鮮の動向を注視しながら当面、無償化を保留するのは現段階ではやむを得ないだろう。

 北朝鮮は3度目の核実験を準備中とも伝えられる。「瀬戸際外交」を繰り返してきただけに一筋縄ではいくまい。次の暴発を阻止するためには韓国や米国と連携するのはもちろん、中国、ロシアも巻き込んでいく必要がある。

 韓国が国連安全保障理事会でこの問題を提起すれば政府は全面的に支持する方針だが、やはり中ロ両国の対応が鍵を握る。今年3月の韓国哨戒艦沈没事件では当初、中国が非難に難色を示したため、議長声明まで約4カ月も要した。

 菅政権は、中国漁船衝突事件やロシアのメドべージェフ大統領の北方領土訪問など外交問題で失点を重ねてきた。そのたびに野党から厳しい批判を浴び、相手国に足元を見透かされる一因にもなったことは否定できまい。

 外交で一定の成果を挙げるには国内での安定した基盤が要る。与野党が足を引っ張り合ってばかりいては首脳の発言も重みを欠く。首相が今回、野党の党首に協力を求めたのも、そのことに気付いたからかもしれない。

 内閣の支持率は急落している。政権浮揚のために、今回の問題を利用するのは慎むべきだ。ただ、緊急に対応すべき外交案件には、与野党が議論を尽くしながら協力して臨むのは当然である。




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