菅直人内閣の支持率が下がり続けている。補正予算は成立のめどがついたものの、外交問題などへの対応をめぐり野党は追及の手を緩めていない。
目に見える成果に乏しいままだと、鳩山由紀夫前政権の二の舞いになりかねない。これから来年度の予算編成作業が大詰めを迎える。菅政権の政策の中身がさらに厳しく問われる。
共同通信社の直近の世論調査によると、内閣支持率は「危険水域」とされる30%を割り込み、20%台前半に落ち込んだ。不支持率は前回の調査よりも上がって、60%台になった。改造内閣が発足したときと、支持と不支持の割合が逆転している。
原因の一つは、首相のリーダーシップの弱さだろう。不支持の理由のなかでも、「首相に指導力がない」とする回答がトップを占めている。
課題は山積している。
第一は当面の臨時国会だ。焦点の補正予算案は26日に参院で採決することで与野党が合意した。参院は野党が過半数を占めていることから否決される見通しだが、憲法の規定によって衆院の議決が優先される。
かろうじて成立の運びとなったのは、数少ない成果とみることができる。
だが、自民党は中国漁船事件の対応などをめぐって、採決後に仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案を参院に提出する方針だ。可決された場合、政権運営はさらに難しくなる。
外交課題も重いものばかりである。漁船衝突事件によって日中関係がこじれたところへ、今度は北朝鮮による韓国砲撃事件が起きた。これに北方領土をめぐるロシアとの対立を加えて、菅政権が向き合う国際情勢は不安定の度合いを強めている。
乗り切るには、米韓と連携強化を図りながら中国との関係修復を急ぐ必要がある。東アジアの平和と安定に向けて積極的に働き掛けていくことが肝要だ。
一方、菅政権は環太平洋連携協定(TPP)の協議開始を明確にした。これには際だった外交力と同時に、国内合意のための指導力がなければ前進しない。
求心力を欠いた菅政権には難しい課題ばかりだ。首相は国民に向けて現状や展望を丁寧に語ることから始めることだ。それを怠れば足掛かりすら築けないだろう。
支持率が落ちているのは、政権がどこに向かおうとしているのか伝わってこないからである。