西日本新聞

問責決議 「政治の漂流」を憂慮する

2010年11月27日 10:45 カテゴリー:コラム > 社説

 これが、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」の現実だ-と言ってしまえば、それこそ身もふたもない。

 ねじれの現実から出発して、与野党が議論を尽くし、新たな合意形成のあり方を模索する。臨時国会の冒頭でそんな「熟議」を唱えた菅直人首相の所信表明演説を、むなしく想起せざるを得ない。

 今国会最大の焦点だった2010年度補正予算が昨夜、ようやく成立した。野党が過半数を占める参院で否決された後、憲法の規定に基づき両院協議会を経て可決していた衆院の議決が優先した。

 これを受けて自民党は、仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案を参院に提出、可決された。

 尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件やその映像流出をめぐる政府の対応が不適切だった。それが、問責の主な理由である。

 衆院の内閣不信任決議案と違って、参院の問責決議案は可決されても法的な拘束力はない。政府や与党は「それがどうした」と開き直り、無視することも理屈の上では不可能ではない。

 しかし、現実はそう甘くない。問責を受けた過去の例を振り返ってみても、小渕内閣の額賀福志郎防衛庁長官は決議から1カ月後に辞任、福田康夫首相は3カ月後に内閣総辞職に追い込まれ、麻生太郎首相は1週間後に衆院を解散した。

 問責決議の政治的な打撃がいかに大きいか。その威力を熟知しているのは、与野党の勢力が逆転した参院を足場に自民党政権を追い詰め、昨夏の政権交代に結び付けた民主党であるはずだ。

 野党が問責決議を突きつける寸前に、菅首相が柳田稔前法相の更迭に踏み切ったのも、そんな政治判断が経験的に働いたためだろう。

 しかし、問責の対象が内閣の要に位置する仙谷官房長官となれば、首相も身構えざるを得ない。首相はきのうの参院予算委員会で仙谷氏について「更迭は考えていない」と断言した。仙谷氏も記者会見で辞任するつもりはないと発言した。

 これに対して、自民党は問責決議を受けた閣僚との国会審議は拒否すると宣言している。政府・与党は来月3日に会期末を迎える今国会を延長しない方針で、国会は与野党が角を突き合わせたまま、空転する公算が大きくなっている。

 そうなれば、内閣支持率の急落にあえぐ菅政権のさらなる弱体化は避けられまい。民主党内では問責の対象となった閣僚を含む内閣改造論も取りざたされているが、急場しのぎの人事で窮地の政権を立て直せるとは思えない。

 一方、切り札の問責カードを突きつけた野党も、審議拒否の一辺倒では国民の理解は得られないと覚悟すべきだ。

 与野党とも座標軸を見失って政治が漂流してしまう。そんな最悪の事態を防ぐために知恵を絞り、汗をかくべきだ。

 議会制民主主義の危機的な状況を断じて見誤ってはならない。


=2010/11/27付 西日本新聞朝刊=

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