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仙谷氏らの問責可決 問われる与野党の覚悟 '10/11/28

 本年度補正予算の成立と引き換えに、仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案が参院で可決された。

 尖閣諸島周辺での中国漁船衝突事件をめぐる政府対応や衝突ビデオ映像を流出させた不手際などに対するものである。

 問責決議には法的な拘束力はない。だが野党側は問責を受けた閣僚が出席する国会審議には応じない構えをみせる。

 国家戦略室を局に格上げする政治主導確立法案、地域主権改革関連3法案といった重要法案の処理は年明けの通常国会に先送りされそうだ。政権運営がさらに厳しくなるのは間違いない。

 柳田稔前法相は国会軽視発言で問責決議をちらつかされ、事実上の更迭に追い込まれた。自民党政権の時代には、問責決議を受けた閣僚が早期退任を余儀なくされた例もある。

 最大野党の自民党は問責の可決に気勢を上げるが、国民の胸にはむなしさも募っているのではないか。山積みの課題は何ひとつ片付いていないからだ。

 核開発をやめず武力挑発まで始めた北朝鮮への対応など外交は喫緊の難問ばかり。足元をみても社会保障や税制といった改革待ちの懸案がめじろ押しである。

 コップの中の争いを続けている場合なのか。共同通信の世論調査で、仙谷長官について「辞めなくてよい」とする声が過半数を占めたのは国民のそんな疑念の表れにほかなるまい。

 菅直人首相は「更迭は全く考えていない」とあくまで突っぱねる姿勢のようだ。内閣の要に据えた仙谷氏を失えば政権そのものが崩れかねない懸念があるのだろう。

 局面を打開するため、今国会後に内閣を改造する案が民主党内で浮かんでいるという。標的の閣僚を外すことで野党の審議拒否をかわし、人心一新であわよくば内閣支持率のアップをと考えているのかもしれない。

 しかし問責を受けての内閣改造はもろ刃の剣とも言える。

 参院では野党が多数を握っている。その気になれば難なく問責決議案の可決に持ち込める。今回の二人に加え、岡崎トミ子国家公安委員長も非を鳴らされている。警視庁のテロ情報が流出する失態や北朝鮮の韓国砲撃の当日登庁しなかったことが理由である。

 閣僚の言動に統制が利いていない今の菅内閣ならば追及の材料には事欠くまい。とはいえ問責連発といった野党のごり押しに疑問を感じる有権者も少なくなかろう。

 そうした国民不在の政治を一体いつまで繰り返すのだろうか。

 自民、公明両党は今国会で党首討論を開くよう求めた。菅首相は内外の情勢判断や展望を率直に語ってもらいたい。野党側も積極的に対案や修正案を示すべきだ。本来の論戦に戻す必要がある。

 与野党が党利党略にこだわり続けるなら、来年度予算案が焦点となる通常国会も実のある審議にはなるまい。公党としての識見と覚悟が問われている。




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