臨時国会での補正予算成立を受け、2011年度予算の編成作業が大詰めを迎える。
菅直人政権にとって初めての当初予算である。厳しい財政事情のなかで、子ども手当など目玉の公約を充実させるのは容易ではないだろう。
支持率低迷に加え、難しい外交課題も山積している。予算案を通じて暮らしの展望を示すことができるかどうか、政権の存亡をかけた作業となる。
補正予算で政府は、雇用促進や地域支援などを柱にした総額約5兆900億円の追加経済対策を実施する。景気を下支えし、45万人から50万人の雇用創出を目指すとしている。効果を疑問視する声もあるものの、年内にも実行する運びとなったのは一歩前進だ。
焦点は11年度予算案に移る。補正予算などのてこ入れ策を踏まえ、菅内閣がデフレ脱却の決定打と位置付ける予算案である。12月中旬に基本方針と税制改正大綱を固め、年内に閣議決定する。
最大の課題は何と言っても財源確保だ。子ども手当や農業の戸別所得補償といった政策には巨額の財源が必要となる。
例えば、子ども手当は11年度の満額支給を断念し、3歳未満に限って現行の月1万3000円から2万円に引き上げる方向で検討が進んでいる。上積みには約2450億円の財源が見込まれるが、具体的な工面はこれからだ。
高額所得者を支給から外すかどうか、国と地方の負担をどうするか。各方面で思惑の違いが見られる。子ども手当一つをとっても調整は難航しそうだ。
民主党政権は昨年から一連の「事業仕分け」を行い、国民に公開する形で無駄の削減に取り組んできた。独立行政法人など目が届きにくかった組織や事業に切り込んだ意味は大きい。
だが、十分な財源をひねり出すには至っていない。これからは「出」を制するだけでなく、「入り」についてもメスを入れるほかないだろう。税制見直し論議は避けて通れない課題である。
日本は少子高齢化が進むなかで、景気低迷に陥っている。景気拡大に伴う増収はすぐには期待できそうにない。だれがどんな形で負担するのか、真剣に考えなければならないときである。
負担について、菅政権が国民の合意を取り付けることができるかどうか。政府・与党内がばらばらなまま見直しを急ぐようなことになれば、政権はますます求心力を失いかねない。