[仲井真氏再選]「県外」の公約は重い まず日米合意の見直しを

2010年11月29日 09時24分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 県知事選は、現職の仲井真弘多氏(71)が新人で前宜野湾市長の伊波洋一氏(58)を大差で退け、再選を果たした。

 最大の焦点だった米軍普天間飛行場移設問題で、仲井真氏は、移設先を名護市辺野古とした日米合意を見直し、「県外移設」を訴えた。日米両政府は見直しを迫られることになった。

 仲井真氏は1期目は条件付きで県内移設を容認していたが、今回は選挙直前になって県外移設にスタンスを大転換した。名護市長選・市議選で辺野古反対の民意はすでに示されている。仲井真氏の課題は公約した県外移設をどう実現するかにある。

 仲井真氏が再選されたのは、県外移設を主張することによって支持層を広げたことが挙げられる。政権与党の民主党が候補者を立てることができず、「自主投票」を決めたことも有利に働いた。不況が長引く中で、経済重視の仲井真氏に期待が集まったこともある。

 仲井真氏は当選後、「県内は事実上ない。県外だ」とあらためて語った。真っ先にしなければならないのは、県外移設を菅直人首相に要求し、日米合意の見直しを正式に要請していくことである。

 政府との対話を否定しない仲井真氏が当選したことで、政府内には翻意させる可能性があるといちるの望みを託す向きがある。実際、8月に北沢俊美防衛相が「仲井真氏に勝ってほしい」と本音を漏らしていることからも分かる。

 仲井真氏はことし1月の名護市長選で条件付きで移設を容認していた現職市長を支援、9月の市議選でも条件付き容認派の市議らにてこ入れしていた。

 仲井真氏の姿勢に疑問の声があるのも事実である。仲井真氏はこれらを一掃するためにも、県外移設の先頭に立ってもらいたい。

 県内の政治トレンドは、民主党に政権交代した昨夏の衆院選を境に一変した。

 県内移設を容認した自民党議員が沖縄の全4区で誰もいなくなった。初めてである。1月の名護市長選、9月には名護市議選で市長支持派が圧勝した。

 象徴的なのは7月の参院選沖縄選挙区。当選した自民党候補は日米合意を批判し、県外移設を訴えた。党本部の方針と異なる対応をとらざるを得なかったのである。

 これまで県内移設を容認してきた保守陣営も、沖縄ではもう県内移設を掲げて戦うことはできなくなったということである。

 移設問題では保守、革新の対立の構図は消滅し、県外、国外に収斂(しゅうれん)しつつある。仲井真氏が県外移設にかじを切らざるを得なかったのもその延長線上にある。

 政権党の民主党は参院選に続き、県知事選でも候補者を擁立することさえできず、自主投票にするしかなかった。

 共同通信社の出口調査によると、辺野古移設を「容認できない」と回答したのは68・9%。そのうち60%強は伊波氏に投票したが、40%弱は仲井真氏に流れている。

 政府が説得する相手は仲井真氏ではない。米国に正面から向き合うことこそが求められている。名護市、県いずれからも同意が取れていない辺野古移設を進めようとするならば、民主主義を破壊するものである。

 沖縄振興計画が2012年3月に切れる。仲井真氏の2期目は、ポスト振計を根拠づける「沖縄新法」の制定を県が主体となってつくることができるか沖縄にとって重要な局面を迎える時期に当たる。大規模基地の返還に備えた「駐留軍用地跡地利用推進法」の制定、ひも付きでない「沖縄振興一括交付金」と合わせた3点セットを実現することができるか手腕が問われる。

 投票率は前回の64・54%を下回る60・88%にとどまった。かろうじて60%台は保ったものの、普天間問題の争点がぼやけたことと民主党が自主投票を決めたことで盛り上がりを欠いた。

« 最新のニュースを読む

写真と動画でみるニュース [一覧する]