政府、与党は2日、朝鮮半島由来の「朝鮮王室儀軌」などを韓国に引き渡す「日韓図書協定」の今国会中の承認を断念した。仙谷由人官房長官は、来年の通常国会で優先処理したい意向を示した。菅直人首相は今月中旬の李明博大統領の来日を想定し、野党に早期承認への協力を求めてきたが、自民党が3日までの国会会期の延長を求めて調整は難航していた。
首相が11月の日韓首脳会談で表明した今国会承認という「対外公約」は、棚上げに追い込まれた格好。内閣支持率急落など求心力低下が著しい菅政権は、外交案件でも野党の抵抗に直面。政権基盤のもろさがあらためて露呈した。
承認断念は、北朝鮮の韓国砲撃で、大統領の来日自体が見送られる可能性が出てきたことも考慮したとみられる。仙谷氏は記者会見で「継続審議と決まれば、次の国会で優先的に手続きを取ってもらいたい」と強調した。
断念の一因として、首相らの軽率な言動も指摘されている。仙谷氏に対する参院での問責決議可決を受け、自民党は「図書協定は仙谷氏の主導」などと反発。首相は自民党の谷垣禎一総裁に電話で協力を要請したが、自ら会合で「野党は与党の邪魔をするのが常」と発言し、野党の態度を硬化させた。
公明党の山口那津男代表は2日の党中央幹事会あいさつで、首相の発言に関し「野党に責任を覆いかぶせる発言は極めて不見識だ。もっと早く政府、与党が前に進める努力をするべきだった」と批判。「十把ひとからげにして野党のせいにすること自体いかがなものか」と述べた。
自民党の対応についても「政争の具にするような意見が出ており大局観を疑う」とした。
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