霞が関の抵抗をかいくぐり、分権の実をどう取っていくのか。
奈良県を除く近畿5府県と鳥取、徳島県からなる関西広域連合が発足し、きのう初会合があった。府県をまたぐ行政課題に取り組むだけでなく、国の出先機関から権限と財源を移す受け皿としての期待を担う。
同じような構想のある九州や関東はもちろん、中国地方にとっても格好のモデルになるだろう。
設立の背景には、都道府県を廃止してより広域的な自治体に再編する道州制への動きが政権交代でトーンダウンしたことがある。
それでなくても県がなくなることには強い抵抗がある。まずは連携組織をつくり、国に権限移譲を迫る。
同時に、広域行政も進める。対象の7分野のうち鳥取県は観光、医療分野での部分参加である。
政府の地域主権戦略会議は国の出先機関をブロック単位で地方に移す方針を決めている。関西広域連合は、河川や道路事業、ハローワーク業務などについて、人員や財源を丸ごと国から引き継ぐ方式を目指す。
霞が関の抵抗は強い。菅直人首相が移譲の検討を指示した8府省の業務のうち府省側が移譲を認めたのは2割どまり。低支持率にあえぐ菅政権の足元を見透かしているかのようだ。広域連合ができれば、受け皿がないとの言い訳はもう通るまい。
実際に国の仕事を移すとなると、国家公務員である職員の処遇など詰めるべき点は多い。ただ、地方の仕事は地方で担う方が合理的であり、二重行政のロスも解消できる。
中国地方ではこれまで、広島、岡山県が道州制への移行に積極的で、それぞれ中国州、中四国州を唱えてきた。ただ、広島県は湯崎英彦知事が就任した1年前から道州制の文言を政策文書で使わなくなり、岡山県も来年度の重点施策から外した。
まだ中国5県には広域連合を視野に入れた動きはない。先月の中国地方知事会でも、複数県にまたがる河川、国道の管理業務を国からどう受け入れるかについて協議することに合意した段階だ。
関西の動きを見守りながら、国から権限を移すための受け皿づくりについての議論を急ぐべきである。
菅首相は、権限移譲に消極的な府省の政務三役らを交代させる可能性も示唆している。関西広域連合の発足を機に、オール地方で首相に強い指導力の発揮を求めたい。
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